前回、「任意後見制度を利用しないとどうなるか?」についてお話しました。
では、任意後見制度を利用するとどうなるでしょう?
具体例を見てみましょう。
A子さんは、民間企業に定年まで勤め、退職しました。
A子さんには、夫や子供はいません。両親はすでに他界しており、兄弟もいません。
普段お付き合いのある親族はいません。
それでも、A子さんは、自分の老後について不安は感じていませんでした。
A子さんには退職金がありますし、厚生年金が1月あたり15万円あります。
マンションのローンも払い終えています。
A子さん1人で生活する分には困りません。
A子さんは、趣味の絵でも描いたり、友達と旅行したり、悠々自適な生活を送る楽しい老後を思い描いていました。
そして、最後まで自宅のマンションで過ごしたいと思っていました。
ここまでは、前回とまったく同じです。
A子さんは、自分が「思い描いている老後」を実現するために、認知症になった場合に備えて、任意後見制度を利用することにしました。
A子さんは、司法書士と一緒にライフプランをたて、司法書士と任意後見契約を締結しました。
また、あわせて見守り契約も締結して、司法書士に継続的に見守りをお願いしました。
そんなA子さんが70歳のときに認知症になりました。
司法書士は、月1回、A子さんと面談をしてA子さんを見守っていましたので、すぐに異常に気が付きました。
そして、司法書士は家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをし、任意後見人になりました。
司法書士は、A子さんを継続的に見守ってきましたから、A子さんがどういう人なのか、A子さんがどういう老後を過ごしたいと思っていたのか、よくわかっています。
司法書士は、任意後見人として、A子さんのライフプランにしたがって、財産を管理し、在宅の介護サービスを受けられるように手配し、適切な治療を受けられるようにしました。
A子さんは自分が思い描いていたとおりに、最後まで自宅でおだやかに過ごすことができました。
A子さんが亡くなったとき、司法書士から連絡を受けた親しい友人お葬式に列席して、A子さんを見送りました。
いかがでしょうか?
同じA子さんでも、任意後見制度を使う場合と、使わない場合とで、全く違った老後を過ごすことになりましたね。
それでは、任意後見制度を利用するにはどうすればいいのでしょうか?
次回は、実際に任意後見制度を利用するやり方について見ていきましょう。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
★お問い合わせ先★
★過去の後見日記★
「成年後見相談室」
http://www.tokyoj-seinenkouken.jp
★twitterアカウント★
https://twitter.com/mami_nomura