superpanda『独立電影人/独立电影人』「(仮)インディペンデント映画人」
出格文化有限公司2022年(全3巻)
dúlì diànyǐng rén
ジャンル 映画界、90年代 HE
中国語難解度 ★★☆☆☆
虐文度 ★☆☆☆☆
肉文度 ★★★☆☆
萌度 ★☆☆☆☆
中華風味度 ★★★★☆
総合おすすめ度 ★★★☆☆
映画に生涯を捧げた謝蘭生と莘野の1990年から始まる約30年間の奮闘を描きます。
番外編まで含めるとふたりの一生――約100年を描いた一代記になります。
ざっくりあらすじ ![]()
3歳から映画に魅せられた謝蘭生 xiè lán shēng は1990年に北京電影学院の監督科を卒業して湖南省の映画会社へ就職。
彼は自ら執筆した脚本で映画を製作することを夢見ている。
しかし中国の映画会社はすべて国営。
国のお墨付きがないと自由に映画は撮れない。
そこで謝蘭生はすべて自力で映画を撮ることを計画するが資金もキャリアもなく容易ではない。
そんな折り、会社の研修でロサンゼルスへ行くチャンスを得る。
そこのカジノでイチかバチかで賭けた全財産の200ドルが大当たりして1万ドルに。
早速会社をやめて映画の製作にとりかかる。
低予算で役者を探すのも一苦労だが、思い切って世界的な映画賞を受賞している中国系アメリカ人俳優
――莘野 shēnyě に出演のオファーをする。
たまたま始めた俳優業にとくに執着もない莘野は謝蘭生から送られてきた資料と写真をみて映画の出演を承諾する。
実は莘野は次回作の役作りのためにロサンゼルスのカジノでディーラーをしており、1万ドルを当て狂喜乱舞する謝蘭生を偶然目撃していた。
そんな若者が自力で映画を製作し、自分を指名するという無謀な挑戦に興味を抱いてオファーを受け入れたのだった。
こうして無名の新人監督と主演俳優として向き合うことになった二人。
その後も多くの困難を乗り越えながらともに一生を歩むことになる。
“這是一個很幸福的人。他這一生從未離開他的摯愛,與夢想”
――本文より
謝蘭生が自分の墓碑に書きたいと言ったひとこと。
まさに言葉のとおり、謝蘭生は最愛の人と映画という夢から決して離れることのない幸せな一生を送ります。
朝ドラと大河ドラマが一緒になったような作品です。
謝蘭生は朝ドラの主人公のように明るく前向きで夢に向かってまっしぐらの愛される人物。
そして彼のとなりにはいつも温かく見守る夫――莘野がいます。
謝蘭生が無名で無謀な映画監督としてスタートしてから世界的巨匠になるまでの長い道のりはまるで大河ドラマです。
ストーリーは王道で主役二人もクセのない良い人なので、本作は必ずしも高評価とはなっていないようです。
ただ誰もが評価する点は、作者がよく時代考察をしており、当時の中国の映画界や映画事情を理解するのに役に立つという点です。
日本映画に関する話もけっこう出てきます。
厳しい検閲や海賊版との戦い、世界市場への売り込み等いろいろと興味深いです。
耽美小説ファンでなくても映画好きなら楽しく読めると思います。
最大の見どころは前半で、謝蘭生が第一作を世に出すまでの部分は珠玉です。
謝蘭生はまさに血の吐くような思いをし、身を削って映画を生み出します。
低予算での過酷な農村ロケでは俳優たちが蚊にさされないように自分が代わりになったり、病気になった俳優の薬を手に入れるために自転車で傷だらけになりながらとなりの町まで行ったりと奔走します。
スタッフとのあつれきにも苦しみます。
それでも前向きに映画を作り上げようとするエネルギッシュな姿にかたわらで見ていた莘野が魅かれていくのは当然でしょう。
アメリカ出身の莘野は初めの頃は謝蘭生をパンダのように希少価値のある興味深い人物として見ていたようですが…。
ちょこっと気になる ![]()
北京電影学院 / 北电 běijīng diànyǐng xuéyuàn
物語は1990年の北京から始まります。
北京電影学院といえば数々の著名な映画人を輩出した言わずと知れた映画を専門とする中国の超有名大学。
チャン・イーモウやチェン・カイコー監督は1982年卒業なので、謝蘭生は彼らより10年近く後の話になります。
当時二人の巨匠が世界で大活躍していたので中国映画界は多少は開放的になっていたのかと思っていましたが違うようです。
謝蘭生は国営の映画会社のもとで映画を製作せずに自主製作で直接海外へ売り込んだために罰として8年間映画人としての活動停止を余儀なくされます。
科學/科普 kēpǔ … 科学普及の略。
小説を読みながら当時の中国の映画事情等を学べるこの作品は
一般向けに分かりやすく書かれた科学の読み物
ーー“科普 讀物” とも言われます。 多少説明的な部分が多いかな。
でも “科普耽美” もいいですよね。
“これも勉強勉強!”
と言い訳しながら楽しく読めます。
二人の作品。
莘野は早々に俳優を退いてふたりは監督とプロデューサーという関係になります。
ちょこっと中国語 ![]()
莘野說過:“天堂的人會做夢 天堂里有電影院 我們還能在一起。”
――本文より
天国でも人は夢を見るし、天国には映画館もある。
僕たちはまた一緒になれるよ…。
莘野が謝蘭生とこの世でお別れする時に言うセリフです。
ふたりとも映画人ですから恥ずかしくなるくらいロマンチストです。
セリフもしかり。
番外では二人の大往生まで描いているので、
すべて読み終わると大変疲れますが、
ふたりとともに一生を生き抜いたような気分になって感慨深いです。
次回は私にとっては中国語耽美小説のバイブル的一冊。
非天夜翔『北城天街』。
重慶を舞台にした切なくも温かい作品です。
