mamingtan-13  まいにち耽美で中国語

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中国語耽美小説を中心につぶやきます

 

レスリーチャン『追憶の上海』1998年 中国

 

  レスリーファンはもちろん、この時代の歴史やオールド上海の雰囲気が好きな人は見て損のない作品だと思います。

特に評価が高いわけでもなく、代表作と言える作品ではないのかもしれませんが、私にとっては「さらばわが愛ーー覇王別姫」とならんで印象深い作品です。

 

  

 1930年代の上海――国共内戦中の共産党員の物語です。

政治色が濃い映画と見られて、

なぜ香港人のレスリーチャンが主演したのか? 

と言われることも多いようです。

 

  中国では、レスリーチャン没後20年の2023年、彼の誕生日である9月12日に大々的に再上映されました。

政府の宣伝的な扱いもかいま見えて、正直ため息が出てしまいましたが…。

  日本では、同じ年に「さらば、わが愛――覇王別姫」が全国で再上映されているのがとても対照的です。

  このように中国でも人気の高いレスリーチャンが革命家の役を演じたことは、いろいろな意味で大きかったと思われます。

レスリーチャンの人気が続く限り、共産党の革命家を演じたこの作品は今後も折に触れて取り上げられることでしょう。

 

 しかし、ひとまず政治的なことは置いといて、中華民国期のオールド上海を題材にしたロマンチックなメロドラマとしてみてもよいのかと思います。

もちろん香港映画ほど娯楽性の高い作品とは言えませんが、上映当時は中国国内でも軟弱過ぎると批判されていたくらいですから、そんなに政治的にシリアスにとらえることもないかなと。

  とにかくレスリーチャンがすてきですから。

 

  レスリーチャンの出番は決して多くはないのですが、その存在感は絶大です。

苦悩する中年革命家を演じきっています。民国期の知識人の衣装を身にまとった静かなたたずまいは、ため息が出るほど魅力的です。

 

  下記では、彼の役作りの様子が見られます。

 

https://www.bilibili.com/video/BV1uK4y1c7GQ/?spm_id_from=333.788.recommend_more_video.1

 

 

  見どころは多いです。何と言ってもレスリーチャンの美しい英語が堪能できること。

この映画はほとんどが英語で、レスリーチャンのセリフもわずかの北京語と英語のみです。

 

 監督は『レッドチェリー』で有名な大陸出身の監督、葉櫻(イエ・イン)です。

『レッドチェリー』は世界的にも話題になった映画で、この映画がレスリーチャンが出演を決めた理由の一つになったそうです。

 

 監督がレスリーチャンを選んだ理由については、

「成熟した大人の魅力があり、裕福な家の出身で、英語が流暢である」ことが主役の革命家、ジンの役にピッタリだったそうです。

 重要な役どころであるアメリカ人医師を演じた俳優さんも初めてレスリーチャンに会った時、彼の高貴な英国紳士のような振る舞いと流暢な英語が印象に残っていると言っています。

 

 私は英語についてはよく分かりませんが、映画の中ではどうみても北京語より、英語のほうが流暢です。

北京語になると、どうしても中国の俳優さんとの違いが出てしまいます。

当時中国の映画館で見た時に、レスリーが北京語を話すと中国人の観客から失笑する声が聞こえてきて憤慨した記憶があります。

でもその北京語が逆に味があります。

当時の革命家や政治家の話す中国語がきれいな北京語であるほうがおかしいのであって、レスリーの北京語は当時のリアリティがあってよい気がします。

 とくに演説のシーンは大変見ごたえがあります。発音には苦労したようですが、

撮影時の映像↓を見ても熱量がすごくて、素晴らしいなと見入ってしまいます。

 

 https://www.bilibili.com/video/BV1dF411S7UE/

 

  

 

 

  撮影は上海を中心にして冬の江南地域を中心に行われています。

処刑シーンは真冬の上海郊外で行われ、極寒の中、実際の重い足かせをつけてレスリーチャンの足は傷だらけになったようです。

 また屋敷に火を放つシーンは、実際に無錫郊外に残っていた古い屋敷一棟をレスリー自身が火をつけて燃やしたそうで、もちろん一発OKでした。

 

  

  レスリーの相手役の演じたのは、当時新人女優だった梅婷(メイ・ティン)。

彼女の熱演はいつまでも心に残ります。

今でも映画にドラマに大活躍で、息の長い女優さんになっています。

  私は当時、この映画を南京の映画館でみました。梅婷が南京出身ということで舞台挨拶もありました。

留学生の間では、

「もしかすると、レスリーチャンも来るかも。」

「いやいやこんなところまで来るものか。」

と盛り上がりました。案の定、レスリーは来ませんでした。残念…。

  梅婷はもちろんやってきましたが、印象としてはおかっぱ頭をしていてどこにでもいる女子大学生のようでした。

写真も撮ったんですけど、ちょっと見つかりませんでした…。

 でも勝手に親しみをもっているので、今の活躍は嬉しいです。

彼女も折に触れて尊敬を込めてレスリーチャンのことを語っているようです。

  

 

 

  ちょこっとタイトルについて

 

  原題は『紅色恋人』です。

赤い恋人は、革命家の恋人たちを意味しますが、英語タイトルの「a time to remenber」には反映されていません。

実はこの英語タイトルは、“映画の撮影を美しい思い出として”と、レスリーチャンが自ら名付けたようです。

すてきな名前ですよね。

邦題の『追憶の上海』も、この英語タイトルから取られたのでしょうか。

“赤い恋人たち”や“レッド~”ではちょっと露骨ですから、レスリーもその点を考慮したのでしょうか。

 

 

  ちなみに作品の最後でいかにも実話のようなクレジットが出ますが、物語は、いろいろな実話を組み合わせたフィクションのようです。

こういう手法結構多いですよね。私もコロッと騙されて?という言い方は悪いですが、実話だと思ってよけい感動したりしてしまいます。

映画というものは、最後まであくまでもフィクションとして見ないといけませんね。

 

 

  「さらばわが愛――覇王別姫」と「追憶の上海――紅色恋人」は同じ時代を舞台にした北京語作品ですが、レスリーチャンは全く違う対照的な役を見事にこなしています。

本当にあらためて素晴らしい俳優さんだと思います。

 

 

今回は『張国栄的電影世界3』電影双週刊出版社2007年、

的灰『与他共度六十一世:張国栄的電影生命』上海書店出版社2023年を参照しました。

 

 

英語の教材として発売された映画のカセットテープ。

レスリーの英語を何度も聞きました。