The SEAFARER
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
2024年1月28日(日)13時開演
サンケイホールブリーゼ

キャスト:小日向文世、高橋克実、浅野和之、大谷亮介、平田満
作:コナー・マクファーソン
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也

第1幕「ホース岬の悪魔」クリスマス・イヴの朝と夕方
第2幕「太陽の音楽」クリスマス・イヴの夜


ザ・新劇なストレートプレイ。
見事な5人芝居、正直、重い感じ。
外国の脚本らしく、台詞がストンと入ってこない、人間関係を把握するのに時間がかかる、展開がわかりづらい。
彼らを巡る人生の背景も見えづらく、いろいろ理解して作品に入り込むのに相当な時間がかかり、正直なところ咀嚼しきれなかった感じです。
海をゆく者、は船員のようですが、それが現実的なものなのか、観念的なものなのか、結局よくわかりませんでした。

このとっつきにくさを補って余りある、豪勢なキャスト。
5人しかいないけど、それぞれが圧倒的存在感で、観客をぐいぐい引っ張ります。
それも、とても静かに。

のっけから、高橋克実さんがすごい。
その登場の仕方にもなかなか意表を突かれましたし、その後の台詞、立ち居振る舞いで、状況を伝えてくださいます。
なかなか理解は大変でしたが、気持ちより先に目が釘づけられる、そんな印象でした。
舞台は転換なく、登場人物の兄弟が住む海に近い家の中がしつらえてあり、全体的に暗い雰囲気。
潮の香りがしそうなセットです。

物語の舞台はアイルランドはダブリン北部の郊外にある海沿いの街、バルドイル。(実際にある都市名のようです。)
街に住む兄弟、リチャードとシャーキー。
二人はそこそこ年齢を重ねていて、兄は目が不自由になってきた。
兄の世話のために街に戻ってきたシャーキーは実は酒癖が悪く、今は禁酒している。
時はクリスマス・イヴ、昨夜遅くまで飲んだくれて勝手に泊まった二人の友人のアイヴァン、イヴの挨拶に訪れた友人のニッキーと彼の連れの裕福そうな紳士・ロックハート。
ずいぶん寂れてしまった街からは、小高いホース岬が見える。
この岬には数々の神話や伝説があるらしい。
クリスマス・イヴの夜にはカードがかかせない。
さぁ、カードを始めるぞ…。そして5人は…。

この作品のタイトルは124行からなる古い英詩に由来するとのこと。
八世紀頃書かれて作者不詳とのことですが、暴風が吹き凍てつく寒い海をゆく船乗りの苦悩に満ちた航海と、陸上で幸せに暮らし浮世を楽しむ人々の様子を対比しているそうです。
作者の目指すところはどこなんでしょうね。
たとえ陸で暮らしていても、誰もが温かくて幸せな生活を送っているわけでもなく、陸に居ながら海をゆく者である、という示唆なのかしら。
などなど、パンフレットもなかなかに読み応えのある素敵な仕上がりです。

実のところ、会話が示すものが理解しきれませんでした。
それは宗教観とか、文化とか、そういうものがわかっていないことも大きな原因のひとつだとは思いますが。
細かい表現は理解しきれなくても、その雰囲気とか空気とかでおおまかな流れを汲み取っていた感じ。
ということで、何かと解釈は違いそうな気がしますが…。
役者さんたちの演技力は申し分なく、伝わってくるものは多々ありました。
ある意味、とても疲れましたが、いいものを見た、という鑑賞後感が大きかったかな。