2023年12月25日(月)18時開演
シアタードラマシティ


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口上
桂文珍 桂南光 笑福亭鶴瓶

開口一番 
桂天吾(南光さんの孫弟子さん)「時うどん」

桂文珍 「落語記念日」

桂南光 「素人浄瑠璃」

中入り

笑福亭鶴瓶 「芝浜」
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昨年に続き、今年も来ました。
今日はそこそこ良いお席でしたが、もう手ぬぐいは投げてくださらなくて残念です。

口上では三人お揃いで、いっときずいぶん老いた感じがぬぐえなかった文珍さんがなぜかとても「盛り返して」らっしゃって、なんだか嬉しくなりました。
今日は鶴瓶さんがトリを務めるめぐりあわせとのこと、昨年に続き南光さんからのリクエストで「芝浜」を披露してくださいました。

開口一番の桂天吾さんはとてもお若い。南光さんの孫弟子とのこと。
なかなかイケメンで、関学の落研出身とのことです。
後に控える面々が大物のため、結構上手な方でもなんだか物足りなく感じる開口一番ではありますが、天吾さんはなかなか聴かせてくださいました。馴染みのある噺だったのも聞きやすい理由のひとつかもしれませんが、だからこそ難しいところもあるように思います。テンポや声の張り、間などもソツなくいい感じでした。

文珍さんは一番手でとってもリラックスされていて、とても楽しそうに演じられていました。
お馴染みの創作落語、相変わらずの時事ネタ満載で、それ大丈夫ですか?の発言も多々。
引き笑いも含め、ホントに面白い。
舞台は近未来、ついに「落語」は絶滅している。「落語」を知らない若者に学芸員を定年退職した感じの年配者が落語の何たるかを語る。扇子一つであらゆるモノを表し、いろんな動作を感じさせ、観客の想像力をかきたてる素晴らしい芸である落語、きっと絶滅しないよね~って思える噺でした。
文珍さんの創作力、マジ凄いと思う。

南光さんの素人浄瑠璃は知ってる噺。
どなたの高座で聞いたかは覚えていないけど…。
ちょっと本題から逸れますが、似た噺の「軒付け」の米朝さんバージョンが大好きです。
レコードで何回も繰り返し聞いたのですが、ナマで聞きたかったなぁ。
さてあらすじですが、どこぞの商家の主は無類の義太夫好きだが、その腕前はなかなか聞くに堪え難い。
機嫌よく、大家をしている長屋の連中を集めて義太夫会を企画する。
しかし、その日に限って何かと都合が悪い長屋の面々は皆断ってくる。
誰も来ないことに怒った主、長屋から追い出すと息巻く。
追い出されては困ると嫌々集まる店子たち、たらふく酒を飲んで義太夫を聞かずに寝る作戦。
皆が感動して静かに聞いていると喜んだのも束の間、御簾の隙間から除くと起きているのは子供の定吉のみで彼はしくしく泣いている。
子供が感動して泣いていると喜ぶ主、どの辺に涙したか定吉に尋ねると…。
なかなか状況を思い浮かべるには当時の文化に通じていないと難しいところですが、こういう噺のオチってどの時代にも通じる、わかりやすいものが多くて、だからこそ落語は廃れない文化なのかもしれません。

中入の後はいよいよの「芝浜」
鶴瓶さんはずいぶん緊張されているような面持ち。
「芝浜」は三遊亭圓朝の作とされるが不確かで3代目桂三木助の改作が有名らしい。
魚の行商が生業の勝は無類の酒好きがたたって、なかなか商売が軌道に乗らない。
今日も女房に急き立てられて、しぶしぶ芝浜の魚市場に出向くものの、時間が早すぎてまだ市場が閉まっていた。
仕方なく浜辺で顔を洗い煙草をのんでいると足元に沈んだ財布に気づく。
中身を見ると50両もの大金が!
喜び勇んで仕事もせずに家に帰り、仲間と大酒を飲み寝入ってしまう。
翌日二日酔いでぼんやりしつつ女房に財布のことを尋ねると、そんなことは知らないと言い、夢でも見たんでしょ、といなされてしまう。
夢にしたらずいぶんハッキリしていたなぁと思いつつ、今日も市場に向かう。
それにしても財布(大金)を拾う夢を見るなんて、と自らに危機を感じた勝はきっぱり酒をやめて死に物狂いに働き出し、三年後にはついに表通りに魚屋を構えることができた。
その大晦日、改めて女房を労う勝に女房は件の夢の件の真相を語る。
あれは夢じゃなかったと。泥棒で死刑になるようなことは避けなければと、大家に相談した女房は財布は拾得物としてお上に届け、勝には夢だと言いくるめたのだという。
やがて持ち主が現れなかったため、50両は女房に戻され、手元にその財布があると聞かされた勝、転落しそうだった自分をまっとうな人間に立ち直らさせてくれた女房に深く感謝する。
酒を飲めばと女房に勧められる勝だが、飲んだら夢になりそうだからとその手を止める。
夫婦愛が見事に描かれたいい噺です。
鶴瓶さんの女房はとても人情味に溢れて、色気があって、とても素敵。
ほっこりしながら聴かせていただきました。

最後は恒例の大阪締め、鐘や太鼓は若手が担います。
毎回、期待を裏切らない、楽しい落語会です。
また来年、是非聞きたいと思います。