「アナログ」
キャスト:二宮和也、波留、桐谷健太、浜野謙太、藤原丈一郎、坂井真紀、筒井真理子、佐津川愛美、宮川大輔、鈴木浩介、板谷由夏、高橋惠子、リリー・フランキーほか
監督:タカハタ秀太
原作:ビートたけし

原作は読んでいません。
いろいろとツッコミどころの多い作品ではありますが、空気感はとてもいいと思います。

唯一の家族である母が入院してしまったため、悟は古い一軒家で図らずも一人暮らしを余儀なくされている。
レストランやビルの内装デザイナーの仕事はとても好きで、やり甲斐も感じている。
旧い友人、高木、山下との日々の付き合いも楽しく、充実している。
彼らとの待ち合わせは悟がこだわりの仕事をした喫茶店「ピアノ」で、マスターとも気心が知れており居心地が良い。
ある日、ピアノで悟はひとりの女性と出会う。
悟のこだわりのデザインを難なく見つけて笑顔で褒める彼女は使い込んだ母の形見のバッグを大切そうに抱えていた。
二人は静かに話が弾み、悟は思い切って連絡先を尋ねるが、彼女は携帯電話は持っていないという。
彼女の提案で木曜日にピアノで会う約束をする。
彼女(みゆき)と悟は毎木曜日、ピアノでの時間を重ねていく。みゆきがクラシック音楽を好むこと、意外にも落語に精通していること、悟には何もかもが新鮮でとても楽しい。
思い切ってクラシックコンサートにみゆきを誘い、二人で出かけるもみゆきは突然中座し、涙を見せてその後、ピアノには現れなくなる。失意の悟を襲うのは、折に触れ悟の背中を優しく押してくれた母の急逝だった。
一週間後ピアノで再会を果たした二人は海に出かける。悟はみゆきにプロポーズをするために指輪を購入、ピアノで待つも、その後みゆきはピアノには現れなかった。
みゆきに会えないまま荒れた生活を送る悟を会社の同僚、上司、そして親友の高木、山下が根気よく支えてくれる。
大阪常駐を命じられ、大阪で仕事に打ち込む悟のもとを高木と山下が訪れ、思わぬ事実を教えてくれた。
1年後東京に戻り、久しぶりに顔を出したピアノで、悟はみゆきの姉と会う。そこで知らされた真実は思いがけないものだった。

もはやあらすじではありませんね。ついつい書いてしまったストーリーですが、思いがけない真実を知った悟の行動と、その後の展開は、本当のところあり得へんやろ~と心のどこかでは思いつつも、理想的なもので、おおいに泣きました。
やっぱり物語は明るい未来を感じられる、ハッピーエンドが嬉しいな。
たけしさんはどんな思いでこの作品を執筆されたんでしょうね。
昭和半ばの「君の名は」ほどにはアナログではありませんが、みゆきがアナログの道を選んだ理由、ピアノに来られなかった事情、ある側面からしか見えなかった「事実」はきちんと説明がついて、ホッとする。
何より諦めない悟さんが素敵でカッコいい。
そして高木さんと山下さんの友情が温かくて泣ける。

波留ちゃん、ホントに可愛くて、みゆきの葛藤の表現がとても自然で良かったと思います。
ニノの演技はちょっと「わざとらしい」気がするのですが、世間的な評価は自然体が素晴らしいらしい。
二人の距離感がいい感じでそれは上手いと思いました。

リリーフランキーさんとか、高橋惠子さんとか、キーになる役柄の役者さんたちが、ますますこの映画の質を高めていると感じました。言葉も大切ですが、表情での演技が光る、プロですね。
幾田りらちゃんの曲にもグッとくるものがあり、どの要素も素敵な作品だと思います。





「北極百貨店のコンシェルジュさん」
キャスト(声の出演):川井田夏海、大塚剛央、飛田展男、潘めぐみ、藤原夏海、吉富英治、福山潤、花乃まりあ、花澤香菜ほか
監督:板津匡覧
原作:西村ツチカ

原作は読んでいません。
何となく鑑賞しました。可愛い絵柄だなぁと思ったので。

ストーリーはアニメーションらしいファンタジーだと思いました。
舞台はお客様は動物ばかりのデパート「北極百貨店」で、主人公は新人コンシェルジュの秋乃。
このデパート、お客様は動物だけど、スタッフは人間が多い。
秋乃は幼い頃のデパートでの思い出を胸に、お客様のお役に立てる一人前のコンシェルジュを目指して研修に励むも、思いも寄らない数々の出来事に振り回される日々を送っている。
絶滅種である”V.I.A.”(Verry Important Animal)のお客様のご要望に応えるのは、コンシェルジュの必須スキルなので、具体的なお悩みを解決するべく奮闘するも、空回ることも…。
上司、先輩、同僚、時にはお客様方に助けられつつ、妻や父や恋人へのプレゼントやサプライズのお手伝いをする秋乃。
失敗を重ねつつも、ひとりではできない仕事、仲間やお客様とのかかわりの中で作り上げるサービスを実感と共に習得していく。

もっと、ふわふわした内容かと勝手に思っていたけれど、お客様や同僚、スタッフのひとりひとりと真摯に向き合う秋乃ちゃんの頑張りと、サービス業のイロハが詰め込まれた内容とに、ぐいぐい引き込まれました。
感情移入、半端ないわ(笑)
それぞれの想いが伝わってきて、ほのぼのしたり、泣けてきたり、ドキドキしたり、盛沢山でした。
絶滅種の動物が温かいタッチで描かれていて、こんな百貨店があると素敵、とも思いました。
この中で、人間の立ち位置ってどんな感じなんだろうなぁ。

一生懸命やればいいってものではないのかもしれないけど、少なくとも誠意はひしひしと伝わる、秋乃さんの働きぶりはとてもカッコいいと思いました。
きっともっと成長してくれることでしょう。
鑑賞後感、とても温かい気持ちになれました。



「おまえの罪を自白しろ」
キャスト:中島健人、堤真一、池田エライザ、山崎育三郎、尾野真千子、金田明夫、角野卓造、美波、浅利陽介、尾美としのり、橋本じゅん、升毅、平泉成ほか
監督:水田伸生
原作:神保裕一

原作は読んでいません。
好きな作家さんの作品なので、読んでみよう、と思いました。
先に映画を観ちゃったので、原作を読んでも俳優さんのお顔がちらつくんだろうな…。
イケメンさんばかり・・・、なんてことは、現実にはないハズなんですけどね。
読むのが楽しみだわ(笑)

ケンティは、何となく軽く調子の良い役柄が似合うように勝手に思っていましたが、某ドラマでの執行官室付事務員とか、この作品の政治家秘書とか、堅いというか、重いというか、そんな役も見事にこなすんだなぁと感心しました。伊達なイケメンじゃないわ。

主人公はその中島健人演じる宇田晄司で、政治家一族の宇田家の次男。政治家にならずに建築会社を立ち上げたものの倒産の憂き目に遭って、国会議員である父・宇田清治郎の秘書を務める。
本当にやりたいことは別にある、という想いを胸にそれでも政治スキャンダル渦中の父のサポートに全力で奔走する。
ある日、宇田家長女の幼い娘が誘拐される。犯人からの要求は身代金ではなく、祖父・清治郎に対するもので、翌日の17時までに会見を開き罪を自白しろという指示だった。
清治郎の罪とは何か、タイムリミットまでに会見を開くことができるのか。幼女は無事に戻るのか…。

緊迫したシーンが続き、ホッとする暇のない、スピード感のあるサスペンスでした。
政治の世界の舞台裏が赤裸々に描かれているようにも見え、駆け引きとか、立ち回りとか、心理的なものも含め、緻密に描かれている印象です。
伏線もうまく張り巡らされ、政治ドラマとしてもミステリーとしても、質の高い作品だと思いました。

堤真一さんと中島健人さんは実年齢でも親子でおかしくない関係ですが、堤さんが若いお父さんな感じに見えて・・・、頑張って貫禄を出されている感じがしました。
番宣インタビューで堤さんは、1ミリも共感できない役だったとおっしゃっていましたが、彼は人間として筋が通っているというか、理があると思いました。
好きか嫌いかはまた別の問題ですが。
そして、中島健人さんの役は本当にカッコいい、と思います。
誠実とか正義とか、プラス要素満載の人という印象、家族を思いやる気持ちも花丸です。

脇を固める役者さんたちは錚々たる顔ぶれで、上手いし自然だし、流石なお芝居でした。
上質な作品だと思います。
やっぱり原作を読もう!