もうすぐ2才の時に誘拐され、5人の「父」に育てられた少年の物語。

とにかく屈折してますが、途中からその屈折具合が増せば増すほど没入します。

 

2013年 韓国映画

監督:チャイ・ジュンファン

出演:ヨ・ジング(ファイ) キム・ユンソク(ソクテ) チョ・ジヌン(ギテ)

   チャン・ヒョンソン(ジンソン) キム・ソンギュン(ドンボム)

   パク・ヘジュン(ボムス) キム・ヨンミン(ジョンミン)

   パク・ヨンウ(チャンホ) ナム・ジヒョン(ヨンギュ)

   イム・ジウン(ヨンジュ) ※太字は父たち※

 

*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*

 

暗闇の中で男の子がママに助けを求めて怯えて泣いている

彼には見えるのだ 

  自分を襲う恐ろしい怪物が・・・

 

 

ーー1998年 春ーー

 

ー電車の中ー

網棚にはジュラルミンケースがひとつ

 

その車輛内ではナイフの宣伝販売をする販売員の男が切れ味を宣伝してる。

(日本じゃ考えられない光景)

座席には緊張感のある乗客たちが座ってる。

 

その電車と並走してる1台のワゴン車の中では、助手席のジンソンが警察の内通者のチャンホ刑事と携帯でやりとり。

電車に乗ってるのは私服警察官たちとの情報だ。

それを荷台のソクテに伝えると

「子どもの命を粗末にするとは」

ライフルを手にする。

 

車輛内では仲間のボムスが予定通りにジュラルミンケースを取り、ドアの前に移動する。

が、ポケベルに暗号がきて警察に張られてることを知る。

 

ボムスに焦りの色はなく、床にジュラルミンケースを置くと、宣伝販売の男に

「見せてください」

近付くや、すぐさま宣伝用のナイフを奪い、腕を回し首を取り人質にする。

瞬間、乗客のフリをしてた私服警察官たちが一斉に拳銃を構えるが、人質が盾にされてるので撃つことは出来ない・・・

ボムスは左腕は販売員の男の首をしっかり押さえ、右手で隠し持ってた拳銃を警官たちに突きつけ、床のジュラルミンケースに一発撃ち込むと鍵が破壊され札束が舞う。

プロだと分かる手慣れた動作だ。

 

駅に着き扉が開くと人質ごと後ろ歩きで降り、閉まり出す扉から降りようとした警官を躊躇なく撃ち殺すボムス。

が、別の車輛から降りたジョンミン刑事に威嚇発砲され「人質を離せ!」と要求され、なぜか素直に解放する。

 

販売員はボムスを警戒しながら慎重にジョンミン刑事の元に逃げる。

そして、隠し持ってたナイフでジョンミンの腹を刺し顔を切る!

ふたりはグルだったのだ。

 

半死半生でホームに転落し、意識が遠のくジョンミンに大笑いする販売員を装ったドンボム。

 

ワゴン車の仲間と合流し「アジト」に辿り着いた5人は車に積んでた大きな[植木]を降ろす。

アジトにしてるのは「ソクファ園」という植物農家で、表の顔は植物の栽培・販売をしてる農家で、古いが家は大きい。

 

降ろした植木の土台は二重になってて、植木をどかすとそこには幼い男の子が横たわっていた・・・

両手を縛られ、頭から袋を被せられ、そこから嘔吐物が溢れ意識が無い・・・

子どもを誘拐したが、警察に通報され身代金の受け渡しに失敗したのだ。

「死んだか?」「まだ生きてる」「殺そう」「止めよう」「生かしておけない」

ボムスがライフルで子どもを撃つが、リーダーのソクテがライフルを払いのけ、なぜか生かすことを決める。

反論は出たが、

「俺が決めたことだ」

ソクテが絶対的な立場なのが分かる。

 

「義姉さん来て!」

台所から足に鎖をされてる女・ヨンジュが現れる。

ソクテが女にしてるのでしょうが、顔も首も虐待の痕がある。

「義姉さん」と呼ばれているが扱いは奴隷でしょう。

 

ーー数年後ーー

白昼堂々と誘拐や現金強奪を繰り返す「白昼鬼」のニュースがテレビで流れている

 

とある大邸宅で主人の男がリビングでマッサージを受けている。

指圧師の男は生まれつき盲目だが、至近距離だと多少見えるなど会話をしてる。

「お客さんですか?誰か来た」

耳の聴こえは発達してるらしい

ーー誰もいないよーー

「いいえ、いますよ、そこに・・・」

 

リビングのドアをぶち壊し、覆面の男たちが押し入り主人を蹴り上げ手錠をかける。

 

この邸宅には監視カメラがいくつもあるが、侵入の際に画像の切り替えが行われたのだ。

 

金庫の金を狙ってだが、指紋センサーになっていて、主人は「左手の親指だ」と言う。

「嘘を吐いたら後悔するぞ」

脅かすが、主人は左手で押し、非常ボタンを発動させる。

※違う指だと非常ボタンが発動する仕組みっぽい※

 

そして、金庫のそばのステッキで応戦し

「顔は見てないから失せろ!」

この主人も悪どい金なので面倒にはしたくないのだが、強盗のひとりが覆面を取る。

ソクテだ。

「顔を見たな」

あっけなく射殺され、死体の指を使って金庫を開けた。

世間を騒がす「白昼鬼」の正体はソクテたちのことでした。

 

あとひとり、指圧師の男が目撃者だ。

ソクテが近付くと指圧師の十字架のネックレスに気付き、手に取り裏を見ると、

そこには「ソンジ園」の文字が彫ってある。

「見えないのか?」

ソクテがテーブルの燭台の先端で指圧師の目を突くが、眼球の前で寸止めする。

瞼を閉じなかった(多分閉じれない)ので殺されずに済んだものの、ソクテの顔は至近距離だったので、本当は顔を認識してしまったのだ・・・

 

そして金を強奪し、車に乗り込み逃走するが、非常ボタンの発動でパトカーが向かってくるのが見える。

パトカーは不審な車を追うが、二股に分かれる道でどちらに進んだか分からなくなる。

左の道には転倒してる自転車と制服の少年、道路にはオレンジが散乱してる。

「左だ!」

パトカーは左へ進むが、この少年こそがあの誘拐された男の子だ。

高校生の制服を着て、逃走に協力したのです。

「白昼鬼」と呼ばれる5人の父親にここまで育てられたのです。

 

自転車は窃盗でしょうか、散乱したオレンジを拾い集めバスで帰宅します。

果樹園前のバス停で降りると、同じ年頃の女子高生のヨギュンが自転車のチェーンが外れたのか必死に直してます。

声を掛けようか迷ってると女の子が振り向き、それにビックリして逃げようとしますが

「手伝ってよ!」

 

自転車を直し、ヨギュンは自転車を押してふたりで歩きますが、

「あなたのこと何度か見たことあるわ」「どこの高校?」

話しかけても何も答えない少年。

「私と話したくないのね・・・」

 

話したくないのではなく、慣れていないのだ。

 

左右に分かれる道で、ヨギュンにオレンジをひとつあげる少年。

「なんて名前なの?」

ーーファイーー

「ファイ!?」「変な名前w」

 

 

ファイが自宅の玄関まで着くと、獣のように低く唸る声が聞こえる・・・

地下室の小窓を横目で見ると、うごめく怪物の影が映っている・・・

 

急いで玄関の鍵を開けトイレに入る。

男性用便器でおしっこをしてるとボムスが入ってきて、なぜがひとつの便器で連れションをする。

「一緒に銭湯行こう」

ーーやだよーー

「照れるなよ」

用を足すと、ボムスに体当たりして逃げるファイ。

体勢を崩して自分のおしっこがかかるボムスに吹き出すふたりw

 

そしてリビングで奪った金を紙幣カウンター機で勘定をしてる男たちに「ただいまパパ」の挨拶。

吃音のギテは窓からファイの帰りをずっと見てたので

「気付かなかった」「どの道で帰ってきた?」

ーー果樹園の道だよーー

「なぜ連絡しない?」「迎えに行ったのに」

ママみたいなパパだ。。。

 

誘拐の時に販売員を装ったドンボムは

「よくやった息子よ!」

ファイに札束を渡します。

ファイはそこから2枚だけ貰う。

 

「お父さんただいま・・・」

ソクテにだけは「お父さん」と呼び緊張する様子のファイ。

 

そして台所のヨンジュにオレンジをあげると笑顔を見せるヨンジュ。

足の鎖は無くなっていたが、代わりに右足の親指が失われていた。

逃げないようにソクテに切り落とされたのだろう・・・

 

*****

 

山でバーベキューをしながらライフルの練習のファイ。

遠くの枝に吊るされた猪の首が的だが、百発百中のファイに感心するパパたち。

ソクテがファイの頭を撫でると誇らしげな表情になる。

いつも緊張してしまうソクテに褒められると嬉しいようだ。

 

*****

 

5人の中の絶対的なリーダーはソクテだが参謀はジンソンで、5人の頭脳で的確な作戦を練る役割だ。

自分の部屋は書斎になってて、小さな図書館のように沢山の本に囲まれている。

 

デスクに座って悪徳刑事のチャンホから仕事の依頼の電話中、ファイが部屋に入って来る。

ジンソン宛ての郵便物を渡し、借りてた本を棚に戻し次に借りる本を模索する。

 

郵便物を開けながら依頼内容を聞くジンソン。

地上げに絡んだ殺人の依頼で、殺して欲しい相手はーーイム・ヒョンテク夫妻ーー

「イム・ヒョンテクだと!?」

思わず大声を出し、ファイを見るジンソン。

ーーソンジセメントのイムだ!ーー

「あとで話そう」

と唐突に電話を切る。

 

そして、ファイに笑顔で届いた郵便物の書類を見せる。

それは芸術大学の入学案内だった。

「偽造パスポートは出来てる」

と、パスポートと身分証を出し「誕生日や名前はしっかり覚えろよ」

ファイは日本人としてシンガポールに3ヶ月の語学留学が決まったのだ。

「生活の準備はするが、暮らすのはひとりだ」

 

そこにソクテが携帯で話しながら入ってくる。

※この家にはノックの習慣はないようだ※

※ファイのトイレの時もボムスはノックせず入ってたっけ※

さっきジンソンに電話を切られたチャンホが今度はソクテに掛けなおしたのだ。

 

仕事の話に書斎を出るファイ。

そして制服に着替えて街に遊びに行く。

 

書斎では入学案内の書類に目を通すソクテ。「行くって?」

ーー行かせることにしたろ?ファイは俺らとは違う!ーー

「違う・・・か。おまえも以前は違ってたろ・・・」

「イムが居座る理由は?」

黙り込むジンソン・・・

 

不動産ブローカーのチョン・スンギ会長から、地上げしたい土地を買い占めたが、

1軒だけどんなに嫌がらせしても立ち退かない家がある。

それがイム・ヒョンテク夫妻の家だ。

夫婦揃って始末したら言い値を払うという好条件の仕事である。

※イムが居座る理由をこのふたりは知ってそうですね※

 

*****

 

街に着いて、街の人々の様子をスケッチするファイ。

奇異な環境で育ったとは思えない温かみのあるタッチです。

街の人たちがイキイキと描かれています。

 

すると、車道を挟んだ向こうの歩道を自転車の女の子、ヨギュンがクラスメイトたちとじゃれ合いながら下校中。

わちゃわちゃとはしゃぐヨギュンの姿に釣られて笑ってしまうファイ。

思わずヨギュンの方に行こうと道路に飛び出してしまうと、激しい急ブレーキの音と運転手の怒鳴り声が・・・

ファイも驚き尻もちを着いたので、交通事故だと思われ周りの注目を一斉に浴びてしまい、正気に戻り慌てて去ろうとしますがヨギュンにも当然バレます。

 

そして、ふたりでベンチに座り、ファイのスケッチブックを見ながら「美大にいくの?」

頷くファイ。

やはり緊張して話せません。

でも幸い?にも、ヨギュンは明るくひとりで話をしてくれます。

ヨギュンはカメラマンの道に進みたいそうですが経済的に諦めないといけないそうです。

ヨギュンの閃きで、次の土曜日にヨギュンの自画像を書く約束を交わすのですが、

「ねぇ、アレ見て!」

ヨギュンが指す方向を見ると、まだ明るいのにすっかり酔っぱらったおじさんがスナックから出てきて、見送りのホステスの胸を触りまくってるではありませんか!

「みっともないおじさんねぇ~w」

面白がるヨギュンですがファイはうつむきます・・・

 

おじさんはヨギュンたちに気付きます。

「ファイ!」「ファーイ!」「おーい!ファーイ♪」

 

・・・あれ、僕のパパなんだ・・・

 

ーー帰り道ーー

ギテパパは軽トラで飲みに来てたのでファイが運転です。

ファイが女の子と一緒だったのでとても下品な【女の口説き方】を伝授しますが

ファイは呆れるだけです。。。

「あっ!?・・・どうしよう・・・」

なんと!道の先で検問をやってます。

慌ててシートベルトを着けて「運転してたらヤバかった」とホッとするギテパパですが、もっと大事なこと忘れてませんか?

ファイは無免許の上

「僕・・・制服だ・・・」

制服なのです!

「学校も行ってないくせに制服なんか着やがって!」

いや、その前に無免許・・・

「誤魔化せ!」「下を向いてろ!」

下を向きますが、様子のおかしさに警官が車を止めろと合図を出し近付いて来ました。

「突破だ!!!」

この指示で検問突破をするファイ!

カーチェイスの始まりです!

パトカーに追われますが、ギテパパの指示でなんとか撒けました・・・

運転技術を教えたのはギテなので、ファイの成長に大喜びです。

 

*****

 

ーー警察署内ーー

「また話が違うぞ!」

 

尋問されてるのは盲目の指圧師です。

コロコロと証言を変えるので、別部屋からマジックミラーで見てるチャンホ刑事が「自宅に返す」決断をしますが、

「俺が変わる」

と言うひとりの刑事。

顔に大きな刀傷があります。

それは、かつてドンボムに腹を刺され顔を切られホームに転落した、あのチェ・ジョンミン刑事でした!

 

あの時は人質を助けようとしたので正義感のある刑事かと思いましたが、指圧師相手に「実は目が見える。犯人の顔を見てると公表する」「あんたを殺しにくるところを捕まえる」と中々悪どいことを言います。

震える指圧師に

「さぁ、早く帰れ!」

この追い打ちで指圧師は話だします。

ーー香木の匂いがしたことーー

ーー彼らは殺して笑ってたことーー

ーーあの目は・・・人間の目じゃないことーーー

 

この内容はすぐにチャンホからソクテの耳に入ります。

 

「ほころびは放置すると厄介だ」

 

ファイも連れて武器庫にしてるビルに向かい、ライフルを取り、警察署の出入り口が

良く見えるビルの非常階段で指圧師の命を狙いに行きます。

ファイにライフルを渡すソクテ・・・

 

署から白杖の指圧師が警官ふたりに誘導され出てきます。

ひとりはチャンホです。

 

「猪だと思え」

 

猪の首では百発百中のファイですが殺人の経験はありません。

青ざめて震えるファイ・・・

怪物が少しずつ姿を現し始めます・・・

双眼鏡のソクテが「今だ!」「撃て!」と指示を出すと、

ファイが見つめるスコープに向かって怪物が襲ってきました!

撃てずに恐怖で固まるファイですが、絶好の機会を逃したことにキレたソクテがファイのライフルを奪い取り、ファイに向かって引き金を引きます!

ボムスが止めようとしましたが間に合いませんでした。

でも、弾は入っていませんでした・・・

 

ソクテは自分の言う通りにファイが撃つか試したのでした。

 

一方、警察が用意した車の後部座席に座ってる指圧師は震えています。

運転手から漂う香木の匂いに気付いたからです。

ドアの鍵は壊されてて開きません・・・

チャンホがこの車に乗るように手引きしてたのです。

運転してるのはギテでした。

 

ある程度走ったところでドンボムが乗り込んできました。

指圧師は恐怖に慄きます・・・

 

*****

 

ファイはソクテに首根っこを掴まれ帰宅します。

泣きながら許しを乞うファイを助けようと、包丁を持ってヨンジュが立ち向かいますが、ソクテの張り手で一発でのされます。

 

地下室に連れて行かれると、そこには指圧師の血まみれの死体が転がっています。

 

「撃てなかった理由を答えろ」

ファイは怪獣が見えたこと、人殺しはできないことややりたくないことを泣きながら訴えます。

「おまえは父親と違って真人間なのか?」「俺が汚いか?」「恥ずかしいか?」

「だから逃げるのか?」

 

もうこれ以上ソクテに逆らうようなことをファイは言えません・・・

そう教育されてきてるのです。

「ごめんなさいお父さん・・・僕が間違ってました・・・」

 

「お仕置きだ」

「悪いことをしたんだ」

「大丈夫だ」

「怪物は消してやる」

そう言って優しくファイを抱きしめるソクテ・・・

 

ーー地下室ーー

ファイは幼い頃を回想する・・・

ソクテの足にしがみついて泣いてすがる

「お父さん行かないで!」「怪物にたべられちゃう!」

体中に折檻された痕がある。

「怪物でも幽霊でも正面から見据えろ!」

ドアの鍵がかけられると暗闇になり、怪物が姿を現し絶叫する幼いファイ・・・

「お父さん!」「お父さん!」

「許してくださいお父さん!」

「僕が間違ってました!」

絶叫する17才のファイ・・・

※この、時の流れの表現の仕方は巧みです※

 

 

ジンソンが、掘った穴に指圧師の死体を埋めてます。

※植物の栽培農家なのでこんな時は便利ですね※

ソクテはイム夫妻殺害の依頼を受けることを伝えます。

複雑な表情のジンソンですが、ソクテの決めたことは絶対なのです・・・

 

*****

 

ーーヨギュンと約束の土曜日ーー

ファイは離れた木陰からヨギュンを見つめています。

住む世界が違うのです。

お別れです。

ヨギュンが諦めて立ち去るまで、ファイはヨギュンを見つめてました・・・

そして、木に止まってたカブトムシを指で押し潰しながら、自分の中に得体の知れない感情が芽生えるのです。

 

*****

 

イム・ヒョンテク夫妻の殺害は翌日の日曜日に決まりました。

敬虔なクリスチャンのイム夫妻は日曜礼拝は欠かしません。

教会に行ってる間に室内に侵入し、帰宅後に殺す作戦です。

 

ーーそのイム家の夕飯ではーー

病弱なイム夫人が咳込んでます。

受診を勧める夫のヒョンテク。

マナーモードにしてても嫌がらせの電話は鳴り続いています。

「もう(居座るのは)止めましょうか?」

無言でリビングから出ていくヒョンテクの寂しげな後ろ姿を見つめながら、また咳込む夫人。

ヒョンテクは片足が不自由で引きずって歩いています。

 

 

ーー翌日曜日ーー

土砂降りの雨ですが作戦は決行です。

この辺はイム家を除き全住人が立ち退いてるので、イム家が見易いビルからソクテたちが双眼鏡で見張ってます。

予定通りイム家から教会へ行く車が出ると無線でギテに知らせます。

 

ギテの車が動きます。

「いいか、鍵だけ開けたらすぐに戻ってこい」

助手席のファイが頷きます・・・

 

イム家の前でファイが降りようとすると、ギテが後部座席から傘を出してファイに渡します。

今回も制服姿のファイ。

ファイを降ろすと一旦走り去るギテ。

 

傘を差しながら、まず家の門の鍵をピン2本使って開けます。

これは簡単に開きました。開いたらベルトに隠してたクリップを使って施錠しないようにします。

次に玄関の鍵です。

傘をポーチにある傘立てに入れて、同じくピン2本でピッキングしますが、こちらは中々開きません。

その最中に通りがかりのパトカーが止まります。

イム家に高校生の子どもはいないのを知ってるので声をかける警官。

 

見張りのジンソンたちに緊張が走る・・・

 

「学生さん!」

焦るファイ。必死に穴を探る・・・

聞こえないフリをしてるファイにパトカーから降りて門に向かう警官

「君だよ!」

 

発砲の準備でライフルの照準を警官に合わせるボムス。

 

焦るファイだがようやく鍵は開いて

「ただいまー」

と中へ入るが、ドアを閉めると爆発しそうな程のドキドキで、はぁはぁと息を吐いて

呼吸を整える。

 

同様に、パトカーが去って安堵するジンソンたち。

「早く家からファイを出すんだ!」とジンソン。

イム家へ向かう3人。ジンソンは引き続き見張りだ。

 

小さな物音がして、慎重に室内にあがるファイ。

リビングのテーブルには飲みかけのカップと、床にはハンカチとアルバムが落ちてる・・・

指紋が付かないように、そのハンカチでアルバムを拾い上げるとアルバムから1枚の写真が落ちた。

その写真には可愛いらしい大きな瞳の幼い男の子が写ってる。

 

突然静かな室内にマナーモードの音と振動が響き、咄嗟に写真をポケットにしまうファイ。

写真は素手で触ってしまったからだろう。

※これも教育の賜物ですね※

アルバムを置き、ハンカチを手に音の出所を探るとクローゼットの中から聞こえてくる・・・

ハンカチで扉を開けるとそこにはイム夫人が隠れてた!

 

ファイの「ただいま」を聞いてすぐに隠れて、夫のヒョンテクに誰かが侵入したメールを送ったのだ。

心配したヒョンテクからの折り返しの電話がマナーモードの音だったのです。

 

そこにソクテたちが玄関から入ってきたので、そっと扉を閉めるファイ・・・

 

ドンボムは手慣れた手付きでタオルでファイの足跡を消す。

「よくやった息子よ♪」

「よその家にあがる時はこれを履くんだ」

と靴カバーを渡し、「せっかくだ、見物していけ」

ドンボムたちは靴カバーも手袋もちゃんと装備してる。

今回は殺しに来てるので覆面は必要ない。

 

ソクテは様子がおかしいファイに

「どうした?」と聞く。

誰よりもファイには鋭いソクテ。

ファイはハンカチもポケットにしまって黙り込む。

 

見張りのジンソンはいつまでも出てこないファイに苛立っている。

無線で、「早く!」「早くファイを出せ・・・待て!!!」

ヒョンテクが戻ってきた!!!

 

万事休す。ファイを安全に出すことが不可能となりました。

 

ヒョンテクが家の中にあがると妻の姿はありません。

体調が悪いので自宅で静養してたのです。

いないはずがない・・・

警察に電話をかけた時に、家具に映ったファイの姿に気付きます!

「誰だ!!!」

その瞬間、一斉にソクテたちが現れて、ボムスが木材でヒョンテクの頭を思い切りぶちのめします。

吹っ飛ばされた勢いで義足が飛びます。

ヒョンテクの左足は義足でした。

頭から血を流し、ぐったりと壁にもたれてるヒョンテクに

「今日の祈祷は?」

「祈祷は好きだろ?」

ソクテが訊きます。

※やはりヒョンテクとソクテたちとは繋がりがありそうですね※

 

見張りから駆け付けたジンソンがイム夫人の居所を聞きますが

「無駄なことだ」

と返され引っ叩きます。

警察にも電話されたので、早く片付けてファイを逃がさないといけないので焦っているのです。

 

そんな中、大きな悲鳴と共に外に逃げ出すイム夫人!

すぐにボムスが追います。

クローゼットの前ではファイが床にヘタレ込んでます。

ファイが逃がしてしまったのです・・・

殴りつけるソクテ。

 

イム夫人の方は、もう少しというところで通りがかりの車に助けられてしまいます。

すぐに隠れたボムスでしたが、同乗の男が不審に思い、ボムスの後を付けてました。

ヒョンテクの家の前でボムスに事情を求めてきたので、首の骨を折って殺してしまいます。

余計な死体が出てしまいました。

 

大幅な番狂わせにジンソンは「すぐに殺せ!」と指示します。

これ以上の長居は危険しかありません。

ドンボムがナイフで刺そうとするとソクテが止めます。

「急がないと!!!」

ジンソンは焦ります。

 

ソクテはファイに拳銃を渡し「撃て」と命令します。

凍り付くジンソン・・・

サイコパスなドンボムも驚きを隠せません・・・

 

イム夫人を逃がした責任をファイ自身に取らせるのです。

「殺せ!」

「早く!」

急かされて撃ちますが外れます。

ソクテに引っ叩かれるファイ・・・

「やれ」

「撃て!」

「撃てーーーーーー!!!」

最初の一発で心臓を射止め即死のヒョンテクですが、ファイは雄叫びをあげながら弾切れするまで撃ち込んでしまいます・・・

 

初めて人を殺してしまいました・・・

なのに口元は笑うのです・・・

父やパパたちと同じになったから?

自分の皮肉な人生に?

 

*****

 

イム家には警察が集まってますが、指揮官はチャンホなのでどう揉み消すか必死です。

目撃証言は通りがかりのパトカーのふたりの警官による「制服姿の高校生」ですが、

これが子どもの仕業かと怒鳴るわ小突くわです。

しかも顔は見てません。

そこに入院したイム夫人の証言で「制服姿の高校生」の情報が入ります。

 

ーーーマジか!?ーーー

 

病院に行ってイム夫人の話を聞くが、「奥さんは正気じゃない」と決めつける。

一番怪しい不動産ブローカーのチョン会長のアリバイを調べた部下からは

「社員全員で社員旅行中という完璧なアリバイがありました!」の報告。

ーー当然だーー

 

「これは怨恨だ!」

強引に怨恨にして捜査のかく乱を狙うが、こんな杜撰な殺しで捜査をかく乱させたら、自分が無能に見られてしまうことに内心は頭にきてるチャンホです。

 

*****

 

ーーチョン会長室ーー

イム夫人が死なずに入院したと聞いたチョンは、室長のパクを呼んで

「人が一番多く死ぬところは?」

うつむくパクに

「面会に行った方がいいでしょうね」

何を指しているか?

パクにも視聴者にも分かりますね。

 

*****

 

イム・ヒョンテクの殺人現場では顔に刀傷のジョンミン刑事が現場検証をしてる。

不可解な点がいくつもある。

「白昼鬼」のやり方ではない・・・。

検証を終えて家を出ると雨が降っていた。

傘立てから1本拝借すると、柄には香木を使ってて

【第14回 パジュ園芸営農組合】

の焼きごてが。

行方不明になった指圧師が言ってた「香木」とリンクする。

 

*****

 

アジトの方ではジンソンにチャンホから大クレームだ。

「お粗末過ぎるな!」

「ガキ同伴で強盗か!?」

ーー怒りは当然だーー

だが、文句がいつまでも止まらないので携帯を投げ付けるジンソン。

 

「どうする?ファイだけは守らないと」

ジンソンの質問を無視して「明日発送の植木にリボンをかけろ」と言うソクテ。

ボムスが植木の枝を折って苛立ちを露わにする。

 

ファイの方は無気力でベッドに横になったままだ。

起きる気にも食べる気にもなれない。

 

心配するヨンジュがファイの部屋のカーテンを開けて優しく声掛けする。

洗濯物を持っていこうと脱いである服を手に取るとポケットから写真が落ちる。

イム家で拾った写真だ。

 

「この写真どこにあったの?」

「あなたは小さい時はとても可愛かったのよ」

微笑みながら話すヨンジュ。

「でも、段々顔付きが変わってしまった・・・」

ーーその写真は僕じゃないよーー

「いいえ、これはあなたよ」

 

*****

 

ジョンミン刑事は傘の柄に焼きごてされてた営農組合に来た。

傘はここで作ったもので200本配ったという。

その農園リストを半ば強引に奪う。

 

*****

 

アジトではヨンジュが泣いている。

ファイが出て行ってしまったのだ・・・

ヨンジュの頭を乱暴に鷲掴みし、どこに行ったか確認するソクテ。

ギテの運転でイム家に向かう。

 

ソクテたちと入れ違いでジョンミンがソクファ園に着く。

リストを1軒1軒回って香木を扱ってる農園を探してるのだ。

 

ジンソンが笑顔で対応し、植木を案内する。

「珍しい木が欲しいんだ」「あ、これ見たことある」

ーーそれは済州島産のファイの木ですーー

 

 

ファイの方はイム家に着き、立ち入り禁止のテープは貼ってあるが警察はいないので室内に入る。

ジョンミンが離れてしまったからだ。

 

緊張と戸惑いで震えながら殺人現場に立ちすくむファイ・・・

 

玄関が開く音に慌てて2階にあがると、誰かが室内に入ってきた。

2階の一室に隠れるとそこは子ども部屋だった。

 

壁にかかった服、おもちゃ、ベビーベッド、ベッドメリー・・・

そして、古いビラの山・・・

ビラに書かれているのは

 

【子どもを探しています】

名前 イム・グニョン

1996年5月8日生まれ 

1998年3月17日 18:00 失踪

 

他にも【グニョンを探しています】のビラや、誘拐事件の切り抜き、

そして電車の車輛内で沢山の私服警察官たちに顔を見られたボムスとドンボムの

似顔絵・・・

 

それらを見ながらファイは震える・・・

グニョンが自分だということ・・・

自分が殺した相手が実の父親だということ・・・

そんな恐ろしい考えに辿り着きそうになると、小さな音でベッドメリーが回転しだす。

銀色に光るクジラやイルカやクマのぬいぐるみをじっと見つめるファイ・・・

何か大切なことを思い出しそうになる・・・

 

が、突然階下で大きな物音がして我に返るファイ。

恐る恐る降りると、リビングでイム夫人が首を吊っている!!!

 

*****

 

イム家に向かってるソクテにチャンホから電話が入る。

制服姿の高校生がイム夫人を助けたと。

「ソクテ兄貴の息子か?」

「イム夫人に顔を見られた以上、ガキは始末しろ」

と言うチャンホだが

「顔を見た女の方を始末すべきだ」と真っ向から反論するソクテ。

 

*****

 

風呂あがりのジンソン。

携帯の着信に気付きすぐ出る。ソクテだ。

ファイが帰宅したか確認の電話だったが、帰ってないばかりか刑事が来たことを報告する。

ジョンミンの正体に気付いてたのだ。

「ファイが見つかり次第、すぐ出国させよう!」

「嫌がったら俺が連れて行く!」

 

風呂あがりでランニング姿のジンソンの左半身には大きなヤケドの痕があり、一指し指と中指がくっ付いている。

日頃から左手には妙な形の手袋をしてたのはこれが原因だったのです。

 

「僕と一緒に行くの?」

ーーファイ!?ーー

書棚の陰に隠れてるファイを見てホッとするジンソン。ーーどこへ行ってた?ーー

「家に行ってた」

「僕が殺した人の」

「写真の子どもは知ってる?」

 

デスクの上にはあの写真。

別にジンソンと幼いファイがギターを弾いてる写真が飾ってある。

笑顔のジンソンとファイ、幸せそうな写真だ。

ジンソンはいつだってファイを愛していた。

一番まともにファイの将来を考えていた。

 

それでもヨンジュの勘違い、明日話そうと言葉を濁す。

 

ファイがジンソンに銃を向ける

「真実を教えて」

「その子が誰か知りたいんだ!」

 

ーー育てたのは俺たち!それが真実だ!ーー

 

「あの夫婦が居座ってた理由は?」

「待ってたんだ・・・子どもの帰りを!!!」

「パパは全部知ってたんだろ?」

「なのに止めなかった・・・」

「なぜ!?」

「なぜ!?」

 

ジンソンは自分に向けられた銃を両手で包み込むと自分の胸に押しつける

 

ーーーそして発砲音が外にまで響き渡るーーー

 

ソクテが帰宅し、ジンソンの書斎へ入るとジンソンは絶命していた。

 

*****

 

泣きながらイム夫人の入院してる病院に軽トラで向かうファイ。

 

その病院ではイム夫人を警護してるチャンホ刑事に、チョン会長室室長のパクが夫人暗殺の協力を依頼するが、チャンホは警護してる自分の立場はどうなるんだと汚い言葉でパクを罵る。

止まらない罵りに、パクはチャンホの内ポケットから拳銃を奪い、一瞬で弾を数発抜き、銃口をチャンホの口にぶち込みロシアン・ルーレット。

「勘違いするな」

「指示するのはおまえじゃない」

そして撃つ!

チャンホが恐怖で目を閉じる。

二発目でチャンホは降参するが、更に三発目を撃つパク。

そして銃から弾を取り出すが、弾は一発入っていた。

※このシーンのチャンホ役のパク・ヨンウさんの緊迫した演技は圧巻です※

 

話は付いたので、車椅子に乗って病人のフリをした刺客がイム夫人の病室に向かうエレベーターに乗ります。

そこにはファイも乗ってますが、刺客はファイを知りません。

 

刺客が夫人の病室に入り、点滴に毒を注入しようとしますが背後からファイに襲われます。

激しい格闘が始まり、刺客は車椅子に隠してたナイフでファイの腹を刺しますが、

イム夫人が自分の実母だと知ったファイは、母を守るため必死で闘います。

格闘はボムスパパからの伝授で、ナイフ捌きはドンボムパパから伝授されています。

奪い取ったナイフで刺客にトドメを刺し、死体は窓から投げ捨てました。

 

死体が落ちた衝撃音に驚く外のチャンホと警官たちですが、死体を見てザマ―ミロな顔になるチャンホ。

イム夫人の警護だというのに、夫人の見張りは誰もなく、本当に夫人が死んだら進退問題は必須な事態でした。

チャンホはすぐに病院の監視カメラをチェックします。

そこには制服の少年が夫人らしき女性を車椅子に乗せて病院を出ていく様子が映ってました。

 

ファイはイム夫人を福祉施設に預け、呼び出したヨギュンに入院の手続きと付添いを頼みます。

ベッドに横たわる母の頬に触れ、「ママ」「ママ」と泣きながら何度も呼びます。

そして、イム家で拾ったハンカチを母の手に握らせファイは施設を後にします。

 

*****

 

ボムスが武器庫のビルの前に到着します。武器庫の明かりが点いてるのでファイが来てることを確信してソクテに知らせます。

 

室内に入るとファイがボムスに銃を突きつけます。

すぐに応戦し、ファイを撃ちますが弾は逸れます。

そして互いに銃を持ち向かい合います。

 

「俺を殺すのか?」

「急所を外すなよ」

「(でないと)おまえが死ぬぞ」

 

そして格闘が始まります。

ボムスの強さはやはり別格ですが必死に応戦するファイ。

でも、ファイは太ももを刺され、うずくまるファイの頭にボムスが銃口をあてます。

 

「女は生かして兄貴(ジンソン)は殺したな」

「なぜだ?」

「親は俺たちだろ?」

「どうせあの女は死ぬ」

ーー手を出さないで!ーー

ーー僕が殺すよ・・・ーー

ーーチョン・スンギと手下たちも僕が皆殺しにするから!ーー

「おまえが?」

「いいか、よく聞け」

「女が死ねばおまえは助かるんだ」

 

そこに急ブレーキの音がする。

ソクテたちが到着したのだろう。

それに気を取られた一瞬の隙に、太ももに刺さったアイスピックを抜きボムスの肩辺りを刺そうとし再び格闘。

 

ソクテとギテが入ってきたが、ボムスの手を刺してライフルを盗み、窓を突き破り逃走を図る。

窓からはギテがファイを呼ぶ声に振り返りギテを見るが、軽トラに乗り込み走り出す

ファイ・・・

今度は軽トラを追う4人だが、運転テクニックはギテの方が上だ。

 

後部座席のボムスが窓から上半身をだして軽トラのタイヤを狙って発砲するが、

「撃つなーーー!」

とジグザク走行して発砲を妨害するギテ。

「俺が・・・捕まえるから・・・」

 

ギテは軽トラと並走するとファイに叫びます。

「パパが話を聞くから止まるんだ!」

 

物凄いカーバトルの末、以前ギテパパから教わった方法でファイは逃げ切ることに成功しました。

大破した車から降りたギテは呟きます。

「俺が教えたんだ・・・」

車は大破しましたが4人は無事でした。

 

*****

 

ーー警察署ーー

ジョンミン刑事が古い白昼鬼の事件記録を探しています。

「バカだった!今頃気付くなんて!」

探し物は見つかりました。

それは、イム家に送られた白昼鬼からのビデオテープです。

映像を見直します。

 

2才前の幼いグニョンが両手を縛られ、頭から麻袋を被せられ植木の土台に入れられ、その上に植木が乗せられます。

最後に書かれた

【100万ドル 3月24日 ヤンジェ駅 コインロッカー】

のスケッチブックが映る。

その植木こそが「ファイの木」だった!

 

土台の中でグニョンはママとパパを求め激しく泣き叫んでいる・・・

 

ジョンミンは、ソクファ園で「見たことある」と言ったファイの木を、どこで見たのか突然思い出したのでした。

白昼鬼の正体はソクファ園の連中ではないかと疑いを持つ。

 

*****

 

ファイはある場所に着きました。

腹も太ももも刺されてますが元気です。

ここでソクテに電話します。

「教えてください」

「なぜ僕を育てたの?」

ーー父親に何を言うんだーー

ーーどこにいるんだ?ーー

「お父さん、迎えに来てくれますか?」

ーー勿論だーー

「最初に僕を迎えに来たところへ10時までに来て」

「待ってます」

 

電話を切るとファイの目前に巨大な怪物が現れます。

銀色に輝く怪物の首や体には木の根ががんじがらめに巻き付いています。

顔色ひとつ変えずに怪物と向き合うファイ。

怪物はドンドン消えていきました。

 

ファイがいるのはソンジセメントの廃墟となった倉庫です。

実父のヒョンテクが経営してた会社で、ファイが幼いグニョンの頃に誘拐された場所でした。

 

*****

 

ーーチョン会長室ーー

昨夜の失態を謝罪するパク室長に、警備から届いたメモを渡すチョン会長。

そのメモには

【女と引き換えだ。残金の5倍渡せ】

取引場所と時間と携番が書かれていた。

 

*****

 

そして、約束通りにソクテたちがソンジセメントの倉庫に着くと既に数台の車が止まっていた。

先客がいるなと笑うドンボム。

 

そそくさと中に入ろうとするギテに、外での見張りを指示するボムスとソクテ。

ギテは絶対にファイを殺さないように釘を刺す。

 

ソクテ・ボムス・ドンボムの3人で倉庫の中に入るとすぐに拳銃を持った男たちに囲まれる。

「こちらへどうぞ」

パクが指示する。「こんなところに呼び出すとはね」

 

怪訝な顔になるボムス。

自分たちも呼ばれてきたからだ。

 

「お金は用意したから夫人を渡せ」

「何のために呼び出したんですか?」

黙ってるソクテたちに、メモを見せ

「ではこの番号にかけてみましょうか?」

パクがかけると、外から着信音が聞こえる

「外にいるじゃないですかw」

「呼んでください」

 

部下にスマホを渡し、部下がスマホをソクテに渡そうと腕を伸ばした瞬間、

銃声と共に部下の腕が床に落ちる。

悲鳴をあげながら、無意識に落ちた自分の腕を拾おうと屈むと、今度は首を撃たれ絶命する。

倉庫の壁の高い窓から撃たれたのを察するソクテ。

 

外で見張りのギテは銃声に動揺し周りを見渡す。

遠くの鉄塔の上にいるファイを見付け、ファイに向かって走り出す。

ファイはそこから更にチョン会長の配下を次々と狙い撃ちする。

 

倉庫の中は銃撃戦に発展する。

プロの殺し屋のソクテたちは死体を盾にしながら攻撃するが相手は10人以上だ。

刺されて撃たれる3人・・・

それでもパクを含め全員殺し、

ボムスは倉庫から外に出て、鉄塔の上のファイに向かって何発も銃を撃ち、その内の一発が僅かに首をかすめた。

そしてボムスは膝をつき、崩れ落ちて絶命する・・・

ボムスの死に顔をこわばらせて震えるファイ・・・

 

倉庫の中ではもう歩けないドンボムが、ファイがいるであろう方向の窓を見つめながら笑って絶命した・・・

 

ただひとり生き残ったソクテ。

最初に撃たれて落ちた腕が持ってるパクのスマホが鳴る。

チャンホからの着信だ。

出ると、「イムの女房を見付けたから始末しろ!」

ーー場所は?ーー

「・・・ソクテ兄貴!?」

 

倉庫から出ると、ファイがソクテを狙ってる。

だが、緊張と震えで撃つことができない・・・

 

「ファイ!やめるんだ!!!」

鉄塔の頂上に辿り着いたギテの声に、慌てて撃つが的外れだ。

ファイのライフルを取り上げようと揉み合うふたり。

「もう十分だろ?」

ーーパパも僕を騙してた!!!ーー

「よしよし、パパが抱きしめてあげる」

ファイの頭を撫でながら落ち着かせようと必死のギテ。

ーーパパも同じだ!あっちに行け!ーー

 

古い鉄塔は朽ち果てていて、柵と一緒に落下するギテだが、揉み合いで持ってたライフルのヒモにしがみつき空中でぶら下がるギテ・・・

落ちたら死んでしまう・・・

片手はライフル、片手は柵で、極めて体勢は悪いがギテを助けようと必死のファイ。

 

だが、柵が壊れ始めてるのが見えるギテ・・・

「どうしたらいいんだファイ・・・」

ーーパパ!ーー

「ごめん・・・ごめんな・・・」

「パパが悪かった・・・ファイ」

ーーパパ!ダメだ!ーー

「ごめん・・・許してくれ・・・」

 

そして、自ら手を離し落下するギテ・・・

パパーーーーーーー!!!!!

 

剥き出しの鉄筋に串刺しになり絶命するギテ・・・

それを目の当たりにするソクテ。

鉄塔の上ではライフルを地面に投げ捨て泣き崩れるファイの姿を見る。

 

ソクテは乗ってきた自分たちの車以外の全ての車のタイヤに銃をぶっ放しパンクさせてどこかへ走り去る。

 

ファイにヨギュンから電話が入る。

「男の人がお母さんを探しに来た!」と。

ソクテは母のところへ行ったと直感する。

 

母が殺される・・・

 

道路に飛び出し車を止めて、拳銃で脅かし運転手を降ろし、車を奪って施設に向かって猛スピードで走り出す。

 

*****

 

施設のイム夫人の病室にはチャンホが来て関係者から事情を訊いている。

イム夫人は「娘」を名乗る女の子が連れてきたと言う。

「さっきまでいたのに・・・」

 

飲物を買って病室に戻るヨギュンだが、チャンホの姿にトイレに隠れてファイに電話するが、直後にチャンホに見つかり拉致されてしまう。

 

*****

 

ソクファ園にはジョンミン刑事の姿が。

「警察です。中に入れてください」

 

ヨンジュにリビングに通され、飾ってある写真を指し

「この子は誰ですか?」

ーー息子です・・・ーー

 

「あなたの名前はチャン・ヨンジュ。

 1971年生まれですね。

 この家の所有者で、夫はユン・ソクテ。

 同居人は成人男性2人。

 息子はいないですね」

 

日本でいう住民票や戸籍抄本を見て言うジョンミン。

 

ーー2年前に・・・死にましたーー

 

「そうですか。

 俺は白昼鬼を追ってます。

 奴らはイム・ヒョンテクを殺しました」

殺害現場の写真を見せる

「いつもは冷静沈着なのに今回は撃ちまくりました。

 ためらった跡まで。

 面識のある相手には感情が入ります。

 イムを知ってますね?」

 

1枚の写真記事を見せるジョンミン。

その写真には若いソクテとギテとヨンジュ、そしてイム・ヒョンテクの姿があった。

児童施設【ソンジ園】の集合写真で、ヒョンテクの父親はソンジ財団の理事長だった。

「ようく考えてください、知ってますよね?」

涙を流すヨンジュ。

 

*****

 

施設の駐車場に止まる1台の車の中にはチャンホと、後部座席にはヨギュンがいる。

逃げられないように車の手すりに手錠をかけられている。

 

チャンホは拳銃に弾を詰めながらずっとブツブツ文句を言っている。

事態が大きくなってしまい、刑事としての仕事に影響が出てどん詰まりになってしまったからだ。

 

そこにソクテが現れたのでビックリ!!!

「ガキは始末したか?」

「女は4階にいるからさっさとやってくれ」

チャンホはソクテにあっさりと額を撃たれ即死する。

目の前で行われた殺人に恐怖で震えるヨギュンをじっと見るソクテ。

顔を見られたのに何故かヨギュンは殺さなかった。

 

*****

 

猛スピードで車を走らせるファイ。

腹からの出血が止まらない。(今更!?)

だが、スピードの出し過ぎで車はスピンして横転してしまう!

うわぁーーーーー!!!

 

*****

 

ハッ!!!

息子の異変を感じたように突然目覚めるイム夫人。

手にはハンカチが・・・

そして、ソクテの姿も・・・

 

*****

 

「こいつらが白昼鬼だな?」

部屋に飾ってある5人の写真。

「あの高校生も一味だな?」

ーーファイはいい子よーー

ーー何も悪くないーー

「ファイ?

 まさか・・・

 おまえらが育てたのか!?」

 

*****

 

横転した車から這い出るファイ。

よろけながらも走り出す。

母を助けるために・・・

 

*****

 

ソクテはベッドの横の椅子に腰かけファイの話を始める。

「成長する姿を見てないだろ?

 小さかったのに今は・・・ふっ

 会ったよな?」

イム夫人はガクガク震えている・・・

「聞き分けが良くて頭もいい。

 覚えが早いよ。

 絵もうまい。

 感心するほどよくできた子だが病気がある。

 何かが見えるらしい・・・

 発作も起こす。

 辛そうだ・・・

 俺に似たんだな、俺もそうだった・・・」

ソクテが何を話しているのか、理解が進むにつれ絶望の表情になるイム夫人。

我が子を誘拐した犯人が我が子を育てた話をしてるのだから・・・

「ヒョンテク兄貴はまるでイエス様だったな。

 心底優しかった。

 兄貴は言ってた、

 俺は恐怖と怒りで心が汚れていると。

 祈れば怪物は消えると・・・

 だから必死で祈ったのに期待外れさ。

 うんざりだった、何もかも・・・

 だから兄貴の好きな子を喰ってやったよ。

 俺も好きだったのに、彼女は俺を嫌ってた・・・

 だから犯したw」

 

ーー回想ーー

物置小屋でヨンジュを犯したソクテ。

「ヨンジュ!!!」

ヨンジュを助けに小屋の扉を開けたヒョンテクだが、すでに犯された後だと分かり号泣する・・・

そこにナタで襲うソクテ。

ヒョンテクの左足を切り落とす。

ーー回想終わりーー

 

「完全に汚れたら怪物は消えた。

 分かるか?

 怪物になれば怪物は消えるんだ。

 だがファイは酷すぎた・・・

 そうだろ?

 大丈夫だ、ファイも乗り越えられる」

 

*****

 

施設に着き、エレベーターが待てずに階段を昇るファイ。

 

*****

 

「クソ!誰も出ない!白昼鬼を見付けたのに!!!」

玄関で靴を履きながら署に電話するジョンミン刑事。

その後ろを鈍器を持って立つヨンジュ・・・

「ファイは悪くない・・・」「ファイはいい子よ・・・」

鈍器でジョンミンの頭を殴りつける。

 

*****

 

4階の廊下を走るファイ!

母の病室に入ると血まみれの母の姿が・・・

間に合わなかったのだ・・・

ベッドから垂れてる手にはハンカチが握られていた。

血まみれになってるハンカチからはポタポタと血が流れ落ちてる・・・

殺されて間もないのだろう。

 

ヘナヘナと崩れ落ち、泣きながら笑い出すファイ・・・

そしてそれは叫びに変わる・・・

 

*****

 

ソクテが帰宅すると、ヨンジュが床に広がった血液を必死で拭いている。

血痕を辿り地下室のドアを開けるとジョンミンの死体が・・・

「偉いぞ」

「簡単だったろ?」

 

そしてソファに座ると深く息を吐く。

ソクテも2発撃たれてる上に刺されてるのだ。

顔色は血の気がなく、限界は近そうだ。

「みんなで暑い国に行こう」

「暑すぎて何も考えられない国へ」

「ひとまず飯だ。ファイが来る」

 

床の血を拭いてるヨンジュがそれを断り、ソクテを「汚い男」と吐き捨てる。

ソクテはヨンジュの髪を鷲掴みにして台所に引きずるとシンクに頭を叩きつけて

顔の前に包丁を刺します。

 

ソクテの恐ろしさは誰よりも知ってるヨンジュです。

これまでされてきた様々な暴行に、心を閉ざして奴隷として従ってきました。

でも、ファイのためとはいえ自分も人殺しになってしまい、このままソクテに殺されてももう構わないのです。

暴行されてもソクテを責めるのを止めません。

「あなたは怖かったのよ!」

「ファイやヒョンテクさんがあなたと違うことが」

「あなたはふたりが怖かったのよ」

「もう・・・ファイを自由にしてあげて・・・」

ーーファイと逃げる気だったんだな?ーー

ーー足の指だけじゃなく首も切ろうか?ーー

 

そして、ヨンジュの首を刺さった包丁に押し付けると、首から血が流れます。

ーーーそこに銃声がーーー

振り返るとファイが銃を構えてます。

 

「ほら、俺の言った通り来たろ?」

ヨンジュから手を離すと、そのままヨンジュは倒れ込みます。

 

「なぜ母を殺した?」

「なぜ僕を苦しめる?」

ーー怪物を消すためだーー

ーーおまえも父親たちと同じ怪物になるべきだーー

ーーずっと一緒にいようーー

ーーまだ俺が汚いか?ーー

ーー考えてみろ、どれだけおまえが汚れたかーー

ーー楽になったろ?ーー

 

「全員動くな!!!」

死んだと思ってたジョンミン刑事が意識を取り戻しました。

銃を構えてます。

「観念するんだ!」

「じっとしてろ!」

「俺は警察だ!!!」

ファイに「銃を捨てろ!」と言います。

 

ソクテはファイに訊きます。

「誰を撃つ?」

「俺か?あいつか?」

 

ーーブスッーー

鈍い音と共にソクテの顔が歪む。

後ろを見ると背中に包丁が刺さってる。

ファイを人殺しにしたくないヨンジュが刺したのだ。

ヨンジュはファイの殺しを知らないのです。

 

「このクソアマ!!!」

ヨンジュへの激しい暴行が始まる。

「やめろ!!!」

ファイが叫んでも暴行は止まらない。

ソクテの足に一発撃つと、今度はジョンミンに肩を撃たれ倒れるファイ。

 

ソクテの怒りがジョンミンに向けられる。

腰に隠してた拳銃でジョンミンを撃つと、

「虫けらのくせに!!!」

「息子を撃つな!!!」

更に撃ち込みジョンミンは今度こそ絶命しました。

ソクテはファイに言います。

「まだ不満か?」

「親が気に入らないならひとりで暮らせ」

そしてヨンジュの頭に銃を突き付けます。

 

再び立ち上がり、ソクテに銃を向けるファイですが、

ソクテが「撃て!」と言っても「(俺を)殺せ!」と言っても引き金が引けずに

震えているファイに業を煮やし、遂にはヨンジュの足を撃つ抜くソクテ。

ぎゃあぁーーー!!!

ヨンジュの激しい悲鳴があがるが、それでも撃てないファイ・・・

銃を捨て跪き、

「ごめんなさい・・・」

「僕が間違ってました・・・」

 

ソクテはファイに近付き、

「そうか、辛かったろう・・・」

ファイを抱きしめます。

「もう大丈夫だ」

「俺が解決してやる」

「父さんがな」

「おまえだけいればいい・・・おまえだけ」

 

そして、ヨンジュを撃ち殺そうとするソクテを、隠し持ってた拳銃で撃つのです。

続けてもう一発撃ちますが、ソクテは撃ち返しません。

ファイは涙が止まりません・・・

とめどなく溢れる涙ですが、ファイはソクテに向かって微笑みます・・・

ソクテも微笑み、何も言わずに息を引き取りました・・・

 

*****

 

ーーある日ーー

放課後の教室にいるヨギュンの元にクラスメイトがやってきます。

たった今、イケメンの男の子からヨギュンにと渡されたと大きな袋が届きます。

開けてみると、ヨギュンの自画像のスケッチと高価なカメラが入ってます。

すぐに窓から校庭を見ますが、そこにもうファイの姿はありませんでした。

 

*****

 

ーー同じ日ーー

チョン会長が屋外で土地開発の盛大なセレモニーを行っています。

イム夫妻が亡くなり、いよいよ地上げが絡んだ巨額な土地開発が始まるのです。

壇上にはチョン会長始め、有力者たちが並びます。

カメラマンやテレビクルーも集まる中、一発の銃弾に頭を撃ち抜かれ即死するチョン会長。

 

ライフルをギターケースにしまい、

それを背負って、ヘッドホンで音楽を聴きながら人混みを歩く、今時の少年の後ろ姿が雑踏の中に消えていく。

 

*****

 

ーー病院ーー

中庭のベンチでくつろぐ様子のヨンジュ。

松葉杖ですが、足は順調に回復してそうです。

そこにオレンジを持った少年の後ろ姿が。

少年に気付き笑顔になるヨンジュ。

 

そして、笑顔から不思議そうな顔になります・・・

 

 

ーーーーーーーーーー完ーーーーーーーーーーー

 

最後の顔は何でしょうか!?

こちらが不思議になる終わり方です。

この映画も捉え方は色々ありそうですが、私なりの考察を含めた感想もどうぞ♪

 

【ファイ 悪魔に育てられた少年】感想と考察~ネタバレありあり~