4年ぶりにブログを書くことになるとは思ってもみませんでしたが、


この度妹に勧められてとても面白い本を読んだので、書かずにはいられませんでした。





主人公は成瀬あかり。中学生〜高校生。


しゃべり方も、やることなすことも、一風も二風も変わった女の子。


自分がやろう!と思ったことは必ず行動に移し、


周りの目は一切気にしない。


ゴーイングマイウェイの極地のような子です。


その成瀬が住むのが滋賀県。私の故郷。


あまりパッとしない県なのに、今回小説の舞台になったことが驚きです。


著者の宮島さんは現在は滋賀県在住だそうですが、静岡出身。


もともと県外の方なのに、こんなに滋賀県愛あふれるお話を書いてくれるなんて感激です。


県庁所在地の大津市にかつてあった、西武百貨店。


そのデパートの閉店にまつわる物語です。


西武大津店と言えば、何を隠そう私の青春時代を語る上で欠かせない存在。


私は成瀬と同じ高校出身なので、高校時代は特に西武に思い出が多いです。


読んでいるうちに自分の高校時代がバーッとよみがえってきて、


切ないような、懐かしいような、甘酸っぱい思いがこみ上げました。


結婚して高知に来るまでは、なんだかんだとお世話になったデパート。


夫へ初めての誕生日プレゼントの腕時計を買ったのもここでした。


でも滋賀を離れてからは足が遠のき、閉店のことすら知りませんでした。


この物語を読んで、実際は経験していないのに、閉店していく西武に自分もいたかのような錯覚を覚えました。


何だか嬉しかったです。


平和堂やミシガン、江州音頭など、滋賀県民なら誰でも知っていることがたくさん出てきて、


これ、映画化されないかなぁ〜


と、密かに願っています😊
















アスペルガー症候群のフランス人の女性が、自らの経験をもとに原作を書いた、漫画形式の物語です。
絵が独特でかわいいです。





主人公のマルグリットは27歳の会社員。恋人のフロリアンと暮らしている。

彼女はガヤガヤ騒々しい場所が苦手。大勢の人が集まるパーティーも苦手。

いつも同じ時間に同じ道順で歩き同じ店で同じパンを買う…習慣的行動(ルーティン)をこなすことが、彼女の安心感につながる。

周りの人達からは、会話が続かない、無愛想、つきあいが悪い、つまらない、ちょっと変わってる…と、評判がよくない。

そんな周囲の言動に困惑し、傷つくマルグリット。

「私だってありのままに受け入れてもらう価値があるのに…」(本文より)

この言葉は胸に突き刺さりました。

私自身もそんな切実な願いを持っている。

と同時に、

それがあらゆる人にとっての共通の願いなんだ、と気づかされたから。




私にはマルグリットと似ている所があります。

まず、大きな音や騒がしい場所が苦手で、家の中にいる時はほとんど静寂です。夫はすぐにテレビをつけるけど、私は見る気のないテレビがついているのは本当に苦痛…💦

たくさんの人の中にいると疲れるのも同じ。仕事場ではさほどでもないけど。長時間のおしゃべりもつらいです。

1人の時間が好きで、落ち着く。

いつもと違うことをするのも苦手だし、突発的な事柄に対処するのもイヤだな。やるけどね。

ずっと若い頃、卵の殻の中で泣いている自分の絵を描いたことがあります。

誰にも理解してもらえないと思っていた。

なんとこの本の中に、それに似た絵があったのです。

「アスペルガー症候群のためのサバイバルキット」と題して、遮光マスクや耳栓などと共に、自分の殻(越えてはいけない境界)が描かれていました。

マルグリットほど生きづらさを感じてはいないから、このままでいいし、自分がどういう人がわかってるから、避けて通れるものは避けるし。

ただ、すごく共感できるので、何だかホッとしました。




そして、自分の狭い見地で人を判断することが、なんと浅はかなことかと思った。

「あなたの話って誰にも当てはまるんじゃない?」と言われたマルグリット。

「喘息の人にこんなこと言える?

"私も走ったあとは息切れするのよね"

あなたがしてるのはそういうことよ!」と反論。

これにも目が覚める思いがしました。

現につらい思いをしている人を目の前にして、自分の価値観を持ち出すことの無意味さを知りました。




診断が下りた時のマルグリットの言葉が大好きです。

「自分の限界に耳を傾け…

私自身に敬意を払うの

その権利があるんだもの!」

世の中のみんながみんな、

自分自身に敬意を払う

ことができれば…

そして他人にも同じく敬意を払う

そんな世の中になれば…

と、祈ります。














実在のラジオ番組や有名人の名前がばんばん出てきて、ノンフィクションのようなリアリティがあります。
架空の登場人物まで、なんか実在しそうに思えてくる。

佐藤多佳子さんの作品初めて読んだけど、私より年上なのに、この若者のキャラ作りや心理描写の圧倒的な現実味はなんなんでしょう。すごすぎる!





先ごろ読んだ「線は、僕を描く」同様、挫折して社会の枠組みから外れてしまった若者が、周囲の人々との関わりの中で、少しずつ再生していく物語。

結局人間って、何らかの「所属」から外れると弱い生き物なんだな。

自分は、何者?

この物語の主人公は、あるコミュニティから否定され、締め出され、何者でもなくなった。

だけど、「コンビニ店員」であり「ラジオのリスナー」であることだけはやめなかったから、

たとえ薄いつながりでも、その「所属」が彼を救っていった。

そこに、彼に対する「共感的な眼差し」があったから…





人間て、誰一人例外なく不完全な存在だから、そこも含めてまるごと受け止めて、その中でお互い主張したり歩み寄ったりしながら、何とかベターな道を探ってやっていきましょう。

というのが近頃の私のスタンス。

そこに不可欠なのは「共感的な眼差し」ではないかと思うんです。

共感て、何でもかんでも「いいね!」じゃなく、違いも反対意見も認めた上で、それでも相手の気持ちや価値観に尊敬を寄せ、理解しようとすること。





この物語の登場人物たち(若者)の世代って、自分に当てはめて思い出しても、ホントに「青くて痛くて脆い」!視野が狭くて、傷つきやすくて、自分が世界の中心にいると思ってた。

その頃の自分の気持ちを表す言葉なんて持っていなかったな…

何かあった時ついつい、どうしてそうなったか「理由」を追及してしまいがちだけど、今の私も含めて、本当の気持ちを正確に伝えられる人って、そういないと思うから。

大切なのは、理由ではなく、これからどうするか、何ができるか。

そこを、「共感的な眼差し」でもって、相手と一緒に考えていきたい。

主人公の青年の仲間たちのように…