アスペルガー症候群のフランス人の女性が、自らの経験をもとに原作を書いた、漫画形式の物語です。
絵が独特でかわいいです。
主人公のマルグリットは27歳の会社員。恋人のフロリアンと暮らしている。
彼女はガヤガヤ騒々しい場所が苦手。大勢の人が集まるパーティーも苦手。
いつも同じ時間に同じ道順で歩き同じ店で同じパンを買う…習慣的行動(ルーティン)をこなすことが、彼女の安心感につながる。
周りの人達からは、会話が続かない、無愛想、つきあいが悪い、つまらない、ちょっと変わってる…と、評判がよくない。
そんな周囲の言動に困惑し、傷つくマルグリット。
「私だってありのままに受け入れてもらう価値があるのに…」(本文より)
この言葉は胸に突き刺さりました。
私自身もそんな切実な願いを持っている。
と同時に、
それがあらゆる人にとっての共通の願いなんだ、と気づかされたから。
私にはマルグリットと似ている所があります。
まず、大きな音や騒がしい場所が苦手で、家の中にいる時はほとんど静寂です。夫はすぐにテレビをつけるけど、私は見る気のないテレビがついているのは本当に苦痛…💦
たくさんの人の中にいると疲れるのも同じ。仕事場ではさほどでもないけど。長時間のおしゃべりもつらいです。
1人の時間が好きで、落ち着く。
いつもと違うことをするのも苦手だし、突発的な事柄に対処するのもイヤだな。やるけどね。
ずっと若い頃、卵の殻の中で泣いている自分の絵を描いたことがあります。
誰にも理解してもらえないと思っていた。
なんとこの本の中に、それに似た絵があったのです。
「アスペルガー症候群のためのサバイバルキット」と題して、遮光マスクや耳栓などと共に、自分の殻(越えてはいけない境界)が描かれていました。
マルグリットほど生きづらさを感じてはいないから、このままでいいし、自分がどういう人がわかってるから、避けて通れるものは避けるし。
ただ、すごく共感できるので、何だかホッとしました。
そして、自分の狭い見地で人を判断することが、なんと浅はかなことかと思った。
「あなたの話って誰にも当てはまるんじゃない?」と言われたマルグリット。
「喘息の人にこんなこと言える?
"私も走ったあとは息切れするのよね"
あなたがしてるのはそういうことよ!」と反論。
これにも目が覚める思いがしました。
現につらい思いをしている人を目の前にして、自分の価値観を持ち出すことの無意味さを知りました。
診断が下りた時のマルグリットの言葉が大好きです。
「自分の限界に耳を傾け…
私自身に敬意を払うの
その権利があるんだもの!」
世の中のみんながみんな、
自分自身に敬意を払う
ことができれば…
そして他人にも同じく敬意を払う
そんな世の中になれば…
と、祈ります。