- 子どもたちは夜と遊ぶ 下 (3) (講談社文庫 つ 28-4)/辻村 深月
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上巻を読み終えて・・・
すぐに下巻を買いに行きました。
下巻のほうは、ストーリー的にはもちろん結末へ近づいていくのですが、
上巻よりも、”あったかさ” を感じます。
そして上巻に比べて恋愛色が濃くなってきました。
帯にあった「一方通行の片思い」の意味がわかってきます。
というかこの作家さんすごいです。
文章が巧過ぎます。でもまだ20代の作家さん・・・。
本当にすごいですね。
そしてストーリー。
「θ」は絶対に許されない過ちを犯したけれど、
それに耐えられなくなってくる。
でもそのきっかけは、思っても見なかった・・・
”周りのあったかい手” なのです。
この作品はイメージ的に黒なのですが、
黒もたくさんたくさん他の色を混ぜれば・・・
いつかは違う色になるということなのかもしれません。
いい意味で。
ストーリー全体的には、
ミステリー(サスペンス)っぽい展開が強くなってきます。
そして核心へ近づいていきます。
そういう中で、
登場人物たちがどう関ってくるのか。
それぞれどんな想いを抱いて結末を迎えるのか。
そんな気持ちでどんどん読み進めていきました。
けれどやっぱりこの作品はただのハッピーエンドで終わりません。
終わらせられません。
「θ」はあったかい手を見つけた。
初めて自分で触れたいと思う人を見つけた。
けれど「θ」がやったことは消えない。
戻れない。
それを誰よりも知っている「θ」はどんどん、
深みに落ちていきます。
せっかくあったかい手を見つけて幸せを捜し求められる道を・・・
見つけたけれど、
その道へ行きたかったけれど、
できない。
この作品の中では、
”ただいい人、やさしい人”なんていません。
ありのままの1人の人間が描かれています。
醜い部分も、エゴも、そしてあったかい部分も全て。
そして人間の描写がまたすごくうまい。です。
それぞれの一方通行な片思いに引き込まれていきました。
”片思い”なんていう表現は簡単すぎるかもしれないけれど、
本当はそういう簡単なものなのかもしれません。
この作品を”恋愛もの”というジャンルでくくることなんてできませんが、
下巻に入って・・・
この作品にこんなにも巧く、それぞれの恋愛感情が入ってくるとは思いませんでした。
でもそれは余計にこのお話に引き込まれる要因となります。
「好き」「愛してる」そんな会話も、言葉もほとんどでてこないけれど・・・
それぞれの人物の想いが強く伝わってきました。
これはこの作家さんの魅力だと思います。
そして結末。。。
犯人は・・・こんなことってありえるのかな。
とは思いましたが、
すごく優しい結末だったと思います。
みんなそれぞれ救われたから。
けれど失った4人の命は戻ってこない。
そこはとても寂しいです。
あとθがもう戻ってこないことも。
「θ」の周りには、
たくさんのやさしさがあった。
けれどそれに気づいて、手を伸ばそうとしたときには・・・
もう遅かった。
もっと早く気づいていれば。
もっと早く話していれば。
そう思わずにはいられません。
でもそれがこの・・・お話なのです。
けれど、結末は本当に・・・
想像していたよりもすごく優しく、あったかいものでした。
でもこれは続編を出してほしいです。
今度は殺人とかじゃなくて、
ただ純粋な恋愛物語として。
月子の恋愛。狐塚の恋愛。の行方がみてみたいです。
この辻村深月さんの描く恋愛一色の小説。
それも、とてもよさそうだなぁと思いました。
最後に・・・
なんだかリアルでありえそうな雰囲気もするストーリーでしたが、
作品中の中の会話で、
「絶対に泣かせたくない。笑っていてほしい。
そう思える人が必要だ」
というような会話。
とても心に染みました。
ありきたりで、単純かもしれないけれど、
”大切な人”がいる人はブレたりしないのです。
負けそうになっても、押しつぶされそうになっても・・・
どうにかなるのです。
私も大切な人がいます。
人だけに関らず、失いたくないものがあります。
それがときに、悩みの種になることもある。
けれどやっぱり大切なものは大切で。
失いたくないものは、失いたくない。
そういうことも感じました。
それに”殺人ゲーム”をする「θ」と「i」を許すことなんてできないけれど、
「θ」の気持ちが痛いほど伝わってきて、
そして一人ひとりの感情も交差して・・・
とても切なさを感じました。
こんなに切ない気持ちになったミステリーは初めてです。
この作家さんの作品、読んで損はないです。
これは断言できますね☆
上巻の半分ぐらいをまず読んでみて下さい。
もう途中で止めることはできなくなると思います。
とてもおもしろい作品です。
(もちろん、笑うの意味ではなく)