お迎えの日は、生後2週間ほど経った頃だった。
指定された時間に産科の病棟まで児相職員2名と向かう。
コロナ対策のため、それまで面会も出来なかった。
面会の部屋に通される前に、病棟の助産師さんに
「〇〇先生の患者さんだってね。これまでよく頑張ったね」
と声を掛けてもらった。
担当医が他の病棟の人に伝えてくれていたことも嬉しかったし、
その言葉で不妊治療が完璧に終わって、また新しいスタートを切ったんだな
と思った。ちょっと泣きそうになってしまった。
やっと会えるドキドキ感。
面会室に通されてしばらくしてベビーベッドに寝かされた赤ちゃんが運ばれてきた。
なんだろう。
神聖すぎてすぐには触れなかった。
外が寒すぎて手が冷たすぎたのもあったけど、
尊すぎた。
児相職員が
「抱っこしてあげていいのよ?」
と言ってくれてやっと身体が動いた感じだった。
面会室には次々に看護師さんや助産師さん、とりあげてくれた医師が代わる代わる来てくれた。
病棟のアイドルだったんだよ。
僕の夜勤のときに生まれてくれてー。
ミルクの時間は取り合いだったのよー?
など、色んな人にこれまでの様子を聞かせてもらい、
「最後に抱っこさせてもらってもいい?」
と聞かれる度に
あぁ、この子はもうすでに色んな人に愛されてるんだなぁ、と嬉しくなった。
大きくなったらこんなにたくさんの人が大事にしてくれたことを話したくて、みなさんと写真を撮ってもらった。
あぁ、こんなすごい子のお母さんになれるんだ。
すごく嬉しかったし、この子だったんだな
と思えた。
帰り、病棟の出口まで、みなさんが見送ってくれて
「分からないことがあったらいつでも聞いてね」
と言ってもらった。
本当にありがたくてお礼を言い病棟を出た。
出て数歩歩いたところで抱いていたこどもが急に振り返るように身体を反らせたので、何か察知したのかなと思い、もう一度振り返って頭を下げた。
数か月前に流産手術を受けた隣の部屋で
こどもと出会って
数か月後にこどもを抱いて病棟を出るなんて
誰が予想できただろうか。