愛知県豊明市からこんばんは。
自家焙煎珈琲豆散人アルジです。
「真打ち競演」というNHKのラジオ番組を聴き逃しで聴いたら、最後に三遊亭歌武蔵(うたむさし)という異色の落語家が出て来ました。元力士なんです。
やはりよほど相撲が好きなようで、枕は相撲から入ります。
なんとなく正当派ではないように思われがちで、先入観を持たれて損するタイプかもしれませんが、なかなか上手いです。
「甲府い」という噺でした。
とあるお豆腐屋さんで、おからを盗み喰いした若い男、聞けば甲府から一旗揚げようと江戸へ出て来てすぐに、叔父さんからもらったお金を財布ごと全部すられてしまってすっからかん。
江戸で出世するまでは帰りません、と身延山で願掛けをしているので、今さら帰るわけにもいきません。
真面目そうな男ですから、主人は店で奉公させることにします。
最初は豆腐の売り歩きです。普通は、
「豆腐ぅ~い、生揚げぇ~がんもどき~」
という売り声なのですが、このお店では、がんもどきに工夫があって、ゴマが多いのです。
それで、
「豆腐ぅ~い、ゴマ入り~がんもどき~」
卯之吉という男です。
この行商から初めて、豆腐作りの腕もどんどん上達し、働き者で親切ですから、3年たつと立派な商人になりました。主人夫婦は一人娘のお花とめあわせ、婿養子に入れます。卯之吉はますます商売に励み、2年経った頃、老夫婦は若夫婦に任せて隠居します。
そんな中、卯之吉は甲府へ一度帰って叔父さんに挨拶したい、身延山で願ほどきもしたい、と主人に言います。
主人も諸手を挙げて賛成し、卯之吉とお花は連れ立って家を出ます。
近所の人たちは、仕事一筋で出かけたことのない卯之吉の旅装束を見て驚きます。
「どこへ行くんだい?」
「甲府ぃ~ お参り~ 願ほどき~」
というオチ。
中途半端な人情噺で、あまり人気はありません。
でも、歌武蔵は途中に仕込みをしておくのですね。それはこんなです。
ある時、主人が卯之吉を働き者だと褒めたうえで、
「お前は真面目すぎる。もっと世辞愛嬌が出るようでないといけない。お前、お客さんに、何時(なんどき)だい? と聞かれて、分かりません、と答えたそうじゃないか。そういう時は、がんもどきです、と答えてみろ。頓知が効いて相手も喜ぶ」
と説諭します。
卯之吉は素直ですから、頓知を効かせ、洒落を分かるようにと心がけます。
このひとくだりがあって、最後のダジャレ落ちにつなげるのです。
他にもいろいろと盛り込み過ぎなキライはありますが、とてもよく考え、工夫しているな、と思いました。
土曜日までしか聴けませんが、興味のある方はどうぞ。
二人目「ぴろき」のウクレレ漫談もアルジは好きです。
https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=0632_01