「もうわかったよ!!」
泣きながらそう言って家出をした。













その日は調子が悪かった。











職場でも家でも
空回りしている感覚。











その日の出来事は
普段ならなんでもないことだった。



職場でAさんに頼み事をされて
それを時間に追われながら
なんとかこなしていたら
Bさんに否定的な意見をもらい
たったそれだけのことで
その日の私は気持ちが落ち込んでしまった。




Aさんの求めていることと
Bさんの求めていること
それに対する私の選択した行為、
それらの価値観がただ噛み合わなかった。




今落ち着いて振り返ると
ほんとに、たった、これだけなのだ。















家に帰ると
ママの帰りを待ちに待った
甘えん坊モードの娘がいた。





「ママ、隣に来て」
「ママ、一緒に○○しよ?」
「ママとお風呂入りたい」
「ママに歯磨いてほしい」
「ママとがいい」
「ママじゃなきゃやだ」













娘がこの調子になると
旦那さんは全てを諦めたように
その場を離れてしまう。


うんざりしたように
「ママがいいんだって」と言って。



旦那さんも辛いんだと思う。



逆の立場だったらきっと
私だって悲しくなる。



それでも、
たったふたりしかいない保護者が
ひとり離脱すると
残された方は別の辛さがある。














 

いつもの台詞といつもの光景。




私が娘を愛しているように
娘も私のことが大好きで
私が仕事で1日いない日は
娘なりに頑張って過ごす1日。




5歳、まだまだ赤ちゃんだ。
まだまだ愛されることが必要な年齢。





赤ちゃんの頃
感情のままに泣いていたように
欲求のままにおっぱいに
くっついていたように
5歳の娘は行動と言葉で
ママの意識を自分に向けようと必死だ。













わかってる、わかってる。
本当にわかってるよ。



私だってそれに応えたい。


「今日1日ありがとね」
って気持ちを添えて
たっぷり甘えさせてあげたい。











 

だけど、
その日の私は調子が悪かった。


娘の甘えるために選んだ方法も
その日の私と相性が良くなかった。




「えーんえーん、
ママが○○してくれなくて
ひとりぼっちだ〜🥲」
娘が嘘泣きを始めた時に
ぷつんと何かが切れた。












「もうわかったよ!!」
泣きながらそう言って
私はもっていたスマホを投げ捨てて
家出をした。




全部がキャパオーバーだった。
その日は「いつも」がとても辛かった。













目的地も決めず車に乗り込み
車を走らせた途端に冷静になった。



娘を不安にさせてしまった。
旦那さんに全部を放り投げてしまった。














7分ほどかけて大きくUターンして
すぐに帰路に着くと
家の一番近くの大通りに
旦那さんと娘が手を繋いで立っていた。



パジャマを着ていたはずの娘は
洋服に着替えていた。











駐車場に車を停めて
ふたりと合流して
「ごめんね」って謝った。



「ママがいなくなっちゃったから
お洋服に着替えて探しに行ったんだよ」
と、足にしがみつきながら
不安そうに娘が言った。



もう一度「不安にさせてごめんね」。











今抱えているこの気持ちを
娘にどう説明してあげたらいいのか
よくわからなかった。



自分でもよくわかってない。



何かが辛くて、
何かが苦しくて、
今は静かにひとりでいたい気分。



どんな言葉で伝えても
無意味に娘を傷つけそうで
それは本意ではなくて
「大人も頑張れない時があるんだ」
とだけ伝えた。











家に帰ると
娘がせっせとソファを整えて
「ママ、ここに寝っ転がって」と。



コロンと横になると
布団をかけてトントンしてくれた。



娘が具合の悪い時に
いつも私がしていること。



その横では
旦那さんが身体を
マッサージしてくれている。












家族って不自由だ。



私は今、本当はひとりになりたい。



ソファに家族3人
ぎゅうぎゅうになって
暑苦しい。



だけど、私は泣きそうだった。




そこには愛があって
私は確かに満たされていた。




不自由の中にも幸福はある。













寝る時間になって
3人で寝室に行き電気を消した。




寝際に娘が
「ママがいなくなっちゃった時
ばあばの家に行ったのかと思ったから
ラクラクスクーターで
お迎えに行こうとしたんだよ!」




ラクラクスクーターってこれ(笑)




うちからばあばがいる実家までは
車でも15〜20分ほどかかる。



旦那さんがすかさず
「ラクラクスクーターって
楽なの乗ってる人だけだからね!」
ってツッコミをいれていた。



ばあばの家まで行かずに
すぐに帰ってきて本当によかった(笑)











後日、
職場のAさんから電話がかかってきた。



「すごく助かった!本当にありがとう!」














人の心って不思議だ。



月の満ち欠けのように
絶えず変化し続けている。



それが自然なんだと思った。
それでいいと思った🌷