"ビールが飲みたい"
と思った日に飲むビールの
なんて美味しいこと。



外で飲むビールも美味しいし
家で飲むビールも美味しい。



家族でおうち焼肉をしながら
昼間から飲むビールも良いし
娘(3歳)が寝た後に
夫婦水入らずで飲むビールもまた良い。










そんな素敵なビールだけど
特別に好きなわけではないので
外で飲むなら中ジョッキ1杯で充分だし
家で飲むなら350ml缶1本で満足。



お酒が弱い夫はもっと少なくて
外ならグラス1杯、
家なら缶半分が適量らしい。



"とりあえず" のビール。



あわよくばそのあとに
母が作ってくれるサングリアか
おばあちゃんが作ってくれる梅酒があれば
私はもうあっという間に幸せな心地になる。










夫のことをどう表現するのが適切なのか
出会って十数年なのに未だわからないけど
彼は私にはない特性をもっている。



夫はどうやら
「なんでも一緒にしたい人」のようだ。



私が起きると言ったら起きるし
私が寝ると言ったら寝る。



私が食べれば夫も食べるし
私がお風呂に入ろうと服を脱げば
夫も次の瞬間裸になっている。



私はひとり時間がかかせない人なので
お風呂にひとりで入りたい時もあり
過去に何度かお断りしたこともある。



最近はせめてもの想いで
「今日はひとりでゆっくり入るね」と
事前に宣言することで
夫が脱いだ服を再び着る手間を
省いてあげられるように工夫している。











どうやら、"大好きだから" とか
"寂しいから" とかいう理由ではないらしい。



夫がよく使う言葉は "せっかくだから"。



"せっかくだから一緒に"
というのが夫の基本スタンスなのだ。











少し前に、ふたりで
スパに行ったことがあった。



スパには3つの岩盤浴の他に
熱った身体を冷やす部屋と
漫画が読めるコーナーがあった。



岩盤浴のはしごにはじまり
一度身体をクールダウンし
マッサージをしてもらい
ダラダラと漫画を読んだあとに
レストランでごはんを食べて
再び岩盤浴をはしごして
クールダウンをはさみ
もう一度満喫コーナーに行く間も
夫は私の身体の一部かのごとく
ぴったりと付いてきた。



何度か「お互いのペースでいいんだよ」と
伝えたのだが、夫は「せっかくだから」と
私の隣を離れなかった。



ちょっといじわるしたくなって
わざと隣が空いていないところで
漫画を読んでみたら
残念そうに別のところに移動していて
本当に面白い人だなあと思った。










そんな夫なので
私が「ビール飲も〜っと」と呟くと
「俺も飲む」と必ず言ってくる。



1本の缶ビールをはんぶんこ。



夫が「ビール飲もうかな」
と言う時もあるけど
私は自分が飲みたくない時は
「私はいらない」と言う。



夫「じゃあ俺もいいや」

私「ひとりで飲めばいいじゃん」

夫「せっかくだから一緒に飲める時に飲む」



よくある会話のいつもの流れ。



優しくないなと思うけど
私は飲みたくないので仕方がない。



昔は、好きなようにしたらいいのにと
よーく思っていたけど
夫のことを見ているうちに
夫は夫なりに
好きにしているのだとわかった。











「一緒」に価値を見出す夫は
「ひとり時間」が欠かせない私からすると
とても不思議な存在であるのと同時に
とっても羨ましく感じることがある。



私が先に死んだら、
夫はもちろん悲しむだろうけど
後悔は少ないだろうと思う。



私はどうか?



考えたくもないけれど
もし先に夫がいなくなり
本当のひとり時間が訪れた時に
「せっかくだからもっと一緒に
○○○しとけば良かった」
と沢山後悔するのではないだろうか。



ビールを1本飲める日が来た時に
「半分でちょうどいいな」とか
感じるのかもしれない。











夫の「せっかくだから一緒に」を
私は面倒くさがりながらも
実はちゃっかり救われてもいるのだ。



"ひとり時間が欠かせない" 私が
"せっかくだから一緒に" の夫と
出会えたのは偶然じゃないんだと思う。



ここまで考えられるのに
なかなか人は変わらないもので
私は相変わらず隙あらば
ひとり時間を捻出しようとしている。



それでも有難いことに
なかなか人は変わらないもので
夫も相変わらずだ。



私の分も夫が「せっかくだから一緒に」
のスタンスを貫き通しているので
しばらくはそれに甘えて暮らすつもりだ。



絶対に自分が先にぽっくり逝きたいけど
こればっかりは選べないので
未来に本当のひとり時間が
あってしまうパターンも想定して
今はそこそこにしておきたいとも思う。