上京区の御所西エリア。今出川通から室町通を下がり、さらに武者小路通を下がった住宅街。

 

そこに、家屋や集合住宅に挟まれたスペースながら、石垣が組まれた神社『福長神社』があります。

 

スペースこそ小さいですが、松の木があったり、こんな幟や駒札があったり。ただならぬ雰囲気があったので、立ち寄ってみました。

 

調べてみると、かなり歴史の古い神社。
創建は平安時代にさかのぼり、当時の御所の5柱の神が祀られていました。そのうち、福井(さくい)と綱長井(つながい)の2柱は水や井戸の守護神。
 
天正年間(1573~1592年)の豊臣秀吉造営の聚楽第の廃城の際に現在地に遷座。当時神社がこの地にあったことは、狩野永徳(1543~1590年)の描いた屏風絵『洛中洛外図』でも確認されています。
 
境内には、今では貴重な手漕ぎポンプ式井戸の手水舎があり、このあたりが名水処であった歴史を感じさせます。

 

わりと簡素で殺風景な空間に小さな祠があります。
 
もともとは広い敷地に建っていた神社ですが、1788年の大火で都の大半が焼け落ちた後、現在の規模に縮小されたと伝わります。かつては朝廷貴族の安寧を願う神社としてその役割を果たしてきましたが、現在ではひっそりと近隣の井戸を見守る水の守護神、そしてのちに合祀された稲荷神とともに、別名『福長稲荷』として信仰されています。
 
この界隈には茶道家元三千家があり、井戸や名水ゆかりの地。その時代に思いを馳せる神社ですね。
 
名称:福長神社
場所:京都市上京区室町通武者小路下ル福長町538