東山区今熊野、近くには陶芸の窯元が集中し、さらにはかつての平安京の葬送地・鳥辺野(鳥戸野)にもスグの場所にある神社『剣神社』。以前にも参拝したことのある神社ですが、この日は京都市内をぐるっと1周する登山コース『京都一周トレイル』の途中に立ち寄りました。

 

創建の詳細は不明ですが、794年平安京遷都の頃、王城鎮護のために都の東南の方角に宝剣を埋め、 この地に神殿を造営したと伝えられています。

また、平安時代末期、加賀白山の僧徒が3基の神輿を担いで宮中に強訴しようとし、聞き入れられず未遂に終わり、神輿を放棄して帰山。その際の神輿を祀ったことも始まりとされます。

 

 

室町時代、兵火で焼失。その後、現在地の南東にある泉涌寺の鎮守社だった時代も。さらに江戸時代前期、幕府により修理が施されつつ大火が続き、現在ではこの今熊野一帯の産土神として信仰され、特に子供の疳の虫封じ祈願で知られ、『剣さん』の愛称で知られています。

 

境内はこじんまりとした風情ですが、本殿には御祭神に伊邪那岐命、伊邪那美命、邇邇藝命、白山姫命の四柱神が祀られています。

 

鳥居口手前には創建当初からある霊石『撫で石』。石を撫でた手で身体の弱い箇所を撫でると治癒すると伝わっています。

 

さらに、こちらではちょっと珍しい絵柄の絵馬が。

 

 

 
なんとも色鮮やかに描かれたトビウオの絵馬。絵柄としてもトビウオをモチーフにした絵馬は全国的にみても珍しいと思います。
 
トビウオは御祭神の神使とも言われ、「剣(つるぎ)」が「太刀(たち)」、さらに「太刀魚(たちうお)」から「魚(飛魚)」に転じて、トビウオ絵馬になったとか。さらに御祭神の大好物でもあったトビウオ。願い事を叶えるために絶っていたと伝わり、それに倣い宮司さんもトビウオを食べるのを絶たれているんだとか。
 
このトビウオ絵馬、絵柄や版押しなど、全て神社で手づくりされたものなんだとか。従来、絵馬は杉板で作られるものなんだそうですが、最近の杉板はほぼ外国産。しかもインフレによる価格高騰のため、不本意ながらベニヤ板を使用されているんだとか。
 
京都一周トレイルの途中、おびただしい数の杉の倒木を見かけましたが、それらをSDGsにリサイクルできないものなのかな?と。なんとも皮肉な今の産業構造。そんな話を神社の方から伺いました。いつまでも後々まで継承されたいトビウオ絵馬ですね。
 
名称:剣神社
場所:京都市東山区今熊野剣宮町13
電話番号:075-561-3738
参拝時間:6:00~17:00※季節により変動あり