右京区嵯峨鳥居本。『鳥居本』というのは一の鳥居のことを指し、こちらは『火廼要慎』の御札でも有名な、火の神様を祀る神社『愛宕神社』の一の鳥居にあたります。ここを起点に五十丁の山道を登り霊峰にたどり着く、そんなスタート地点。

 

この日は京都市内をぐるっと一周する登山コース『京都一周トレイル』を利用し、直前に保津峡と京都市街地を結ぶ峠道『六丁峠』を踏破し、クタクタ状態でここまでたどり着きました(笑)

 

そんな鳥居本のランドマーク、創業400年以上を誇る茶屋『鮎茶屋平野屋』があります。歴史を感じる茅葺屋根や店構えが絵になり、まるで時代劇のセットそのもののような(笑)この時も近くでお店の風景を写生されたり、撮影されたりする人がいたり。紅葉シーズンには特にそういう方をたくさん見かける、ここだけ時空間が違うような場所。

じつはテレビや雑誌でよく紹介される有名店で、さらに愛宕山へ行く途中によくよく前を通りかかるお店ですが、利用するのは初めて。地元民あるあるな話ですが(笑)今回は峠越えで疲れ果てていて、せっかくなので休憩がてらお茶でも飲もうとやってきました。

 

この時お店には私たちを除き、ほとんど外国人観光客が利用されていました。日本人の私たちですら、この店の雰囲気はアメイジングなわけですが、特に外国人の方からすると必訪的存在のお店だろうな、と思えたり。茅葺屋根の母屋には古い座敷間とおくどさんのある土間が横並びに続いています。古い京町家の台所らしく、おくどさんにはいぶされて黒くなった布袋さん人形。順々に大きいもの7体が置かれています。そして、もちろん火廼要慎の御札も。

お店は元々400年前から保津川水系の鮎を扱う鮎問屋。それと並行して、峠越えをする旅人にお茶やお団子、鮎料理を提供する茶店を営んでこられ、現在の女将で15代目とか。
 
お店にはいくつか奥の座敷部屋があるようで、今回は暖簾のかかった離れに。

 

こちらは母屋に比べ新しい内装の建物で、落ち着いた雰囲気の座敷の間。縁側からは青もみじの清涼感もあり、気持ちのいい空間。

 

お部屋の装飾品にも歴史が感じられ、まるでお祖母ちゃんの家に来たような懐かしさもある調度品の数々。

 

この時はちょうど昼時に差し掛かったような時間帯で、ちょっと小腹が空いたときの食事(むしやしない)の『鮎茶漬』なるものが。これを食べてもよかったのですが。

 

ま、今回はまだこの後登山が続くため、控えめにお菓子と抹茶にとどめておこう、とこちらに。
 
お菓子には、こちらの名物団子『志んこ』と季節のさくらもちがあり、それぞれ各880円を注文。
 
寒い季節なら桜湯を提供されているところ、この日はかなり暑かったので氷を浮かべた桜水をお茶代わりに。すでに名残りの桜ですが、この時期に配慮した美味しい桜水で、ゴクゴクと頂きました。

 

しばらくして、名物志んことお薄のお抹茶が登場。

 

青もみじのお抹茶茶碗が清涼感を与え、お薄によく映えます。

 

で、こちらではお菓子用の楊枝がリアル枝になっていて、なんとも面白い趣向。それに志んこ団子を刺し、添えられたきな粉をつけていただく、なんともシンプルで素朴なつくりのお菓子。志んこは作り立てでほの温かく、ニッキの風味際立つ染み入る美味しさ。

 

緑は茶味、白はプレーン。ねじってあるのがその特徴。いくらでもペロリと食べらえる美味しさ。同じような古い和菓子の例で、今宮神社のあぶり餅もそうですが、そのシンプルな素材の味が実に美味しいというか。

 

もう一方は桜餅。小ぶりながら2個。

 

餡はそれぞれ違い、通常の小豆餡とこちらは白味噌ベースの白餡。これもお餅の柔らかさ、桜の葉のほのかな桜味。そして甘い白味噌が一体となり、ちょうど疲れた身体を癒してくれるような、そんな心地よさ。昔も今も変わらない峠の茶店の効用を身をもって体験したような、そんな美味しいお茶とお菓子に出会え、大満足。

 

今回は茶店として利用しましたが、お店では四季折々の懐石料理が楽しめます。

 

 
この後嵐山・渡月橋方面へ向かいましたが、安定のオーバーツーリズム(汗)それに比べ、この鳥居本周辺は休日ながら比較的空いていて、9割近くが外国人観光客。本来の静かな京都を堪能したい方にオススメですね。ご参考に。
 
 
名称:鮎茶屋平野屋
場所:京都市右京区嵯峨鳥居本仙翁町16
電話:075‐861‐0359
営業時間:11:30~17:00(土日~21:00)
定休日:不定休
公式サイト:https://ayuchaya-hiranoya.com/access/