昨日書いたように、複数の革靴をローテーションで履くことによる革靴延命効果には懐疑的になってきた私ですが、もし延命効果がないとしても、複数の革靴を履き回す意味というのは何かしらあるように思います。

 

 「革靴を1足だけ所有して、その靴を毎日履き、履き潰したら買い替える」という1足体制では実現できない、複数の革靴を履き回す多足体制ならではのメリットとは何なのか考えてみました。

 

1.様々なデザインの靴が履ける

 私がもし1足体制で使う靴を選ぶとしたら、絶対にストレートチップにします。冠婚葬祭で履く可能性を考えると、他の選択肢が考えられません。ということは、1足体制だと黒ストチ以外の革靴は履けないということになります。

 多足体制の場合、TPOに合わせてより相応しい靴を選択する余地も生じることになります。「おしゃれには全く興味が無いから別のデザインなんて別に履きたくならない」という方もいらっしゃると思いますが、例えば冬の寒い日にブーツを履くというように実用性を考慮した選択も可能になります。

 

2.勝負靴をつくれる

 1足体制だと、買い替える寸前の靴はきっとかなり傷んだ状態になっていると思います。そんな時期に仕事で大事なイベントが生じた場合でも、その靴を履くことになります。

 一方、多足体制では、ここぞというときにだけ履く一足を決めておくことができます。その一足は使用頻度を下がておくことができるので、汚れたり傷んだりするリスクが下がり、比較的キレイな状態を保ちやすくなります。そういう靴を履くことで他者に与える印象が良くなることも(ほんの少しは)期待してよいと思いますし、今日は気合を入れるぞーと自分自身に知らしめることによって気分がアガるという効用もあると思います。

 

3.週末にまとめて磨ける

 革靴を1日履いて帰ってくると、思いのほか泥などで汚れていたり、どこかに擦れたような跡がついていたりすることがあります。1足体制の場合、明日もキレイな状態で履きたいならその夜のうちに靴磨きをしないといけません。

 でも、1日働いて帰ってきたあとに靴をしっかり磨くのはなかなかしんどい、という人もいると思います。何を隠そう、私がそうです。下駄箱にしまう前にブラッシングくらいはするのですが、靴紐を外して取り掛かるような本気のメンテナンスは週末にまとめてやるようにしています。じゃあ翌日はとりあえず何を履くかといえば、別の靴を履くわけですね。これができるのは多足体制ならでは。

 

4.修理に出しやすい

 革靴をどんなに大事に履いていても、いつかはダメージが許容量を超える部分というのは出てきます。特に靴底回り、つま先とかカカトとかがそうですね。そんなときはハーフラバーを貼ったりトップリフトを交換したりすることで引き続き快適に履くことができますが、この作業は一般人の手には余るというのが通常で、靴修理店に修理を依頼することになると思います。店によってはその日のうちに作業を完了してくれることもあると思いますが、場合によっては1週間ぐらい預けておかないといけないと思います。

 さて、1足体制だったら、是非とも短期間で(できれば即日で)修理してくれる店を探さないといけません。でないと、明日履く靴が無いという状況になってしまうので(土曜に預けて日曜に受け取るくらいはアリかも知れませんが)。多足体制なら、1週間ぐらい預けても大丈夫なので、お願いできる修理店に幅が出てきますし、多少込み入った作業をお願いすることもできるようになります。

 

 …こんなところでしょうか。

 

 こう考えると、「3.」とか「4.」とかは、間接的に靴の延命に寄与していると言える気もしますね。「靴磨きが必要なら夜でも磨くし、その日のうちに作業してくれる修理店が行動圏内にある」という人にとっては関係ない話ですけど。

 

 ただ、靴好きの諸先輩方の多くは、何らかのメリットを欲して多足体制に至ったわけではないように思います。仮に最初のきっかけがそうだったとしても、それは入り口に過ぎなかったというか。むしろ「あの靴も欲しいし、この靴も欲しい」とか考えているうちに気づいたら超多足体制になったのではないかと思います。そして、それでいいのだと思います。