以前、靴雑誌「LAST」のバックナンバーから、リーガルが2000年代に製造していたジョンストン&マーフィーに関する情報を探る試みをして、こんな記事こんな記事を書きました。

 

 その後、同じ目的でLASTの別の号を入手しました。

 

 2007年11月発行のVol.10です。

 

 この号では、日本の靴ブランドをアレコレと紹介する記事の中で、ジョンストン&マーフィーについても紙面が割かれていました。

 

 ページ中段に掲載された説明文は、ブランドの説明から始まっています。

歴代アメリカ大統領が履いていた靴として1970年代から本格的に輸入が始まった、通称「ジョンマー」。'80年代中盤から高品質な国内ライセンス生産に切り替わり、以後日本人の足型に合わせながらも、アメリカンクラシックを体現する存在として、独自の地位を築いてきた。

 

 ほうほう。さらに説明文はこう続きます。

日本のマーケットにおける男性の体格や服飾嗜好の変化を受け、ここ数年のモデルではアメリカというよりイタリア・フランスの靴を多分に意識した、かなりスマートなフォルムのものが主体となっている。今季はその集大成として、ボロネーゼウェルト製法を採用した「シグネチャー・コレクション」がデビュー。

 

 確かにLASTのVol.6に掲載された2005年秋発売のモデル(おそらくLE83)はかなりロングノーズでしたし、型番からしておそらくそれと同時期かもっと後にリリースされたであろうシリーズの一足であるLE96は、これまたロングノーズなスワールトゥでした。「スマートなフォルムのもの」というのはこういった靴のことなのでしょう。

 

 そして、その集大成だという「シグネチャー・コレクション」。その代表例がページ下段に掲載されています。

 いやー、変わったデザインですね。こんな説明が添えられています。

Signature Collection

最高級グレードとしてこの秋登場する「シグネチャー・コレクション」からの1足。糸目の見えない内縫いとアッパーに直接施された細かいブローギングが溶け合い、最高に洗練された雰囲気。底づけはボロネーゼウェルト製法。\60,900

 「この秋登場」と書いてありますので、Signatureの名を冠したモデルがリリースされたのは2007年秋ということになります。リーガル製ジョンストン&マーフィーの終売時期2009年3月ですから、Signatureラインはわずか1年半くらいしか販売されていなかったわけですね。かつてガルジョンマーのラインについて考えたときには謎多き存在だったSignatureラインの情報が、少しだけですが得られたのは収穫でした。

 

 さて、説明文に戻りますと、「シグネチャー・コレクション」の説明がひととおり終わったあと、以下のように書かれています。

その一方で、トム・ブラウンに代表される「アメトラ第三世代」の出現と、それに付随したアメリカントラッドそのものへの再評価の傾向に鑑み、同ブランドでは久々に本領を発揮したといえるモデルも登場。丸みがより緩やかなラウンドトゥなどは、ある人には懐かしく、またある人には大変斬新に感じるだろう。

 

 そしてページ上段に掲載されている靴がこちら。

Lexington

このブランドはこうでなくては! とおっしゃる方も多いであろう、典型的なアメリカンシェイプの内羽根フルブローグ。水染めコードヴァンの表情が美しい。クレープソール仕様だが、使いやすさを考え接地面は合成ゴムでカバー。グッドイヤーウェルテッド製法\60,900

 

 …あれ?丸っこいシェイプの内羽根フルブローグで、水染めコードヴァンで、クレープソールを合成ゴムでカバー…コレ間違いなく私の持っているLS61ですね。

 

 おかしいなあ、私の持っているLS61は間違いなくSignatureなんですが、この記事ではまるで「シグネチャー・コレクション」に属する靴ではないような書かれ方ですね。

 

 それより何より、靴の説明の冒頭にあるLexingtonって…。おまえ、そんな名前がついてたの?

 

 調べたところ、レキシントンは米国内に何か所もある地名で、中でも有名なのが「レキシントン・コンコードの戦い」(1775年)の舞台となったマサチューセッツ州レキシントン市。レキシントン・コンコードの戦いというのは、植民地軍がイギリス軍に勝利し、アメリカ独立戦争の始まるきっかけとなった戦闘だそうです。

 

 そう考えると、このネーミングには、英国靴何するものぞ、米国靴ここにありという意気込みが込められているような気もします(日本製なんですけど)。

 

 これからはこの靴のことをレキシントンと呼ぼうかな。