手持ちの革靴の数を改めて数えてみたところ、14足ありました。革靴沼に心地よく浸かっておられる諸先輩方に比べれば全然かわいいものだと思いますが、既に家族からの視線は痛いです。

 

 仮に、家族が仏の顔を見せてくれる数を華麗なステップで超えてゆくとしても、当然ながら先立つものには限りがあるわけですし、収納スペースの問題もありますので、どうにか購買意欲を抑え込んでいかないといけません。

 

 しかし今でも、ついネットオークションを覗いてしまったりなんかして、アレもいいなあコレも欲しいなあと思ってしまったりするので、どうにか靴を買わないようにするための制約誓約が要りそうです。心臓を鎖で縛り上げるわけにもいきませんので、より文明的な手段で。

 

 制約とは例えば、使いみちのない靴は買わないということ…いや、ちょっと違うかな。この靴じゃなきゃダメ、という状況が想定できない靴は買わないということでしょうか。入手困難な靴や高価な靴が安値で買えそうな状況に置かれると、物欲が判断力を鈍らせてしまいがちなので、冷静になるためのルールがあると良さそうです。より具体的に●足以上は持たないみたいな縛りをかけるのも有効そうです。

 

 そして誓約。靴箱に入りきらない靴は絶対に処分する、みたいな感じでしょうか………。辛いぜこれは………。

 

 …まあ、こんなルールを本当に導入するかは追い追い考えるとして、こんな風にストイックに物欲を押さえ続けるのは、中々ストレスがかかるもの。どうにかその対策を考えたい。

 

 このためのささやかな試みとして、あることを思いつきました。誓いを守るために正しい行動をとれたら、そのたびにその記録をとっておくということです。つまり、魅力的な靴を買わずに堪えたときの思考過程を記録しておいて、そんな自分を褒めまくろうという作戦。結果的に、同じような素敵な靴に再び巡り合ってしまったときの対処にも活かせそうです。

 

 さて前置きが長くなりましたが、そういうわけで最近買わずに堪えた靴の話を書いておこうと思います。今回のモノは、某フリマアプリで見かけたとあるコードバンの靴でした。

 

 底付けはグッドイヤー、つま先のデザインはプレーントゥ、外羽根の短靴で、色はミディアムブラウン、水染めです。少し履きジワは入っているものの、革底の様子からして外履きされたことはまだない様子。かなりそそられました。

 

 右脳は叫びます。この靴、とっくの昔に廃盤になったモデルだぜ!オレ、茶色の外羽根のプレーントゥの短靴、持ってねェし!欲しいぜ!

 

 左脳は、右脳の味方をしたい気持ちを必死に抑えながら諭します。その靴、いつ履くのだい?と。

 

 さあ考えてみましょう。水染めコードバンの靴ですから、雨の日には使用を避けたい。日本の私が住んでいる地域の気候を考えると、夏よりも冬の方が晴れの日が多いはず。では、この靴は冬用として活躍できそうでしょうか?

 

 いやいや、ここに書いたように、冬なら短靴よりもブーツの方が暖かくて使い勝手が良いはず。足首まわりの防寒性能において短靴に特段の優位性はありません。将来素敵なブーツが手に入ったら、この靴の冬の出番は脅かされることになります。

 

 そう考えると、この靴が活躍できそうな季節は、春や秋。この靴だけでなく、色々な靴にとって絶好の季節。既に所有している靴の中にも、出番を待っているヤツらがひしめいている季節。ううむ…。

 

 そして、この靴が特にピッタリ合う服を持っているわけでもない。この靴が特に相応しい使いみちがあるわけでもない(冠婚葬祭に黒ストチ、みたいな)。うううむ…。

 

 …と思い悩んでいるうちに、例の靴は、他の誰かに買われてしまったのでした。

 

 猛烈に残念な気持ちの一方で、私はどこかホッとしていました。邪念との戦いがまた一つ、終わったのです。

 

 まあ、プレーントゥではないけれど、水染めコードバンの靴としてはガルジョンマーのLS61がありますしね。

 またコードバンの素敵な靴が目の前に現れたら、こいつをかっさ棒で愛でまくることで、目を逸らしてやり過ごすとしましょう。

 

 それでもきっとまた、邪念はやってくるのだろうけど。