血液がん・MDS治療記録 〜移植までの日々〜 -6ページ目

 

 

私の病気、骨髄異形成症候群(MDS)のタイプである「複雑核型」について、調べたことや主治医から聞いたことをまとめます。

染色体とは

MDSの記事で、骨髄は血液をつくる「工場」だと説明しました。
工場で製品をつくるには、設計図が必要です。私たちの体の細胞の中にも、体をつくるための「設計図」が入っています。この設計図がDNAで、DNAが細長く折りたたまれて束になったものが染色体です。

 

ふつう、1つの細胞には46本の染色体があります。46本は2本ずつ23組のペアになっていて、各ペアのうち1本は母親から、もう1本は父親から受け継いだものです。

 

ちなみに、1つの細胞に入っているDNAをすべてつなげると、約2メートルにもなります。それが小さな核の中に、きれいに折りたたまれて収まっています。

MDSと染色体の異常

MDSでは、血液のもとになる細胞で、この設計図の一部が欠けたり、余分にできたり、別の染色体とくっついたりすることがあります。
設計図がおかしくなると、工場では形や働きのおかしい細胞がつくられてしまいます。
MDSの患者さんの約半数に、何らかの染色体異常が見つかるといわれています。

ただし、MDSで見つかる染色体の異常は、親から受け継いだものではありません。生まれた後に、骨髄の血液のもとになる細胞だけに起きた変化です。

複雑核型とは

染色体の異常が3か所以上ある状態を「複雑核型」と呼びます。
MDSでは、どの染色体にどんな異常があるかによって、病気の進みやすさの見通しが変わります。複雑核型は、その中でも進行しやすく、薬だけでは抑えにくいタイプとされています。そのため、治療では造血幹細胞移植が検討されることが多くなります。

どうやって調べるの?

骨髄検査には2種類ある

染色体を調べるには、まず骨髄の細胞を採取する必要があります。この骨髄検査には、骨髄穿刺と骨髄生検の2種類があり、同じ日に続けて行うこともあります。

骨髄穿刺(こつずいせんし)

骨の中の骨髄液を、注射器で吸い取る検査です。
採取した液の中の細胞を調べて、形がおかしな細胞がないか、未熟な細胞がどのくらいあるか、染色体や遺伝子の異常がないかなどを確認します。複雑核型かどうかが分かるのは、この検査です。

骨髄生検(こつずいせいけん)

骨髄を、骨ごと小さく切り取って採取する検査です。骨髄穿刺より太い針を使い、長さ1〜2cmほどの細い円柱状の組織を採ります。
骨髄の中で細胞がどのくらい詰まっているか、どう並んでいるか、骨髄が硬くなる「線維化」が起きていないかなど、骨髄全体の状態を確認します。骨髄が硬くて、穿刺では骨髄液がうまく吸い取れない場合にも行われます。

たとえるなら、骨髄穿刺は工場で働く人を呼び出して一人ずつ調べる検査、骨髄生検は工場の一部を切り取って、建物の中の様子をそのまま見る検査です。

検査の流れ

どちらの検査も、一般的な流れは同じです。

  1. うつ伏せ(または横向き)に寝て、腰の骨(腸骨)のあたりを消毒する
  2. 皮膚から骨の表面まで、局所麻酔をする
  3. 専用の針を骨に刺し、骨髄液を吸い取る(穿刺)、または組織を採取する(生検)
  4. 針を抜いたら、しばらく圧迫して止血し、安静にする

検査そのものは十数分〜30分ほどで終わり、その後30分〜1時間ほど、ベッドで安静にすることが多いです。
麻酔が効いているので、針を刺すときの痛みは抑えられますが、骨髄液を吸い取る瞬間に、ズーンと引っ張られるような独特の痛みを感じることがあります。生検では、骨を押されるような圧迫感があります。

私が受けたときは

私は、これまでに2回、骨髄検査を受けました。

1回目は、近くの病院で骨髄穿刺を受けました。このときは日帰りでした。検査の結果、骨髄異形成症候群(MDS)の疑いがあると分かり、専門の病院を紹介されました。

 

2回目は、専門の病院で1日入院をして、骨髄穿刺と骨髄生検の両方を受けました。どちらも先に麻酔をして、骨髄穿刺で骨髄液を採取したあと、続けて骨髄生検で組織を採取しました。

私は痛みに弱い方なので、最初の麻酔の注射でも「イタッ」と感じました。ただ、麻酔の痛み自体は、採血と同じくらいです。

麻酔が効いてから、骨髄穿刺を受けました。針を刺すときは、麻酔が効いているので、さほど痛みは感じませんでした。ところが、骨髄液を吸い取るときに、引っ張られるような痛みがありました。骨の中は麻酔が効かないため、この瞬間はどうしても痛みます。

思わず「ウウッ!」と唸り、足の指先にぎゅっと力が入って、少し汗をかきました。ただ、長くは続かないので、耐えられる程度だと思います。

 

骨髄生検では、麻酔を多めに打ちます。先生が少し針を入れて痛みの程度を確認してくれたので、「痛いです」と伝えて、麻酔を何本か足してもらいました。それでも痛みは感じました。

骨髄穿刺とは違う種類の痛みなので説明が難しいのですが、こちらも思わず「ウウッ!」と唸り、足の指先に力が入って、じわっと汗がにじむような痛みでした。

どちらも痛みは長く続かないので、耐えられる程度でした。これから検査を受ける方は、痛いときは我慢せずに伝えると、麻酔を足してもらえることもあります。

染色体の確認方法

骨髄穿刺で採取した細胞を使って、染色体を調べます。

ふだんの細胞の中では、染色体はほどけた状態で核の中に広がっていて、形としては見えません。染色体があのX字の形になるのは、細胞が分裂する直前の短い時間だけです。

そこで検査では、次のような手順で染色体を確認します。

  1. 骨髄の細胞を培養して、分裂させる
  2. 染色体がX字の形になった瞬間に、色素で染める
  3. 顕微鏡で撮影し、1番から23組目までペアごとに並べる
  4. 本数が足りないもの、多いもの、形がおかしいものがないかを、1つずつ確認する

結果が出るまでには、数週間かかることがあります。

私の場合

最初の病院で受けた骨髄検査(2026年7月)の染色体検査では、20個の細胞を調べ、そのうち7個の細胞に異常が見つかりました。

結果の代表的な異常は、次のように書かれていました。

44,X,-Y,-5,-7,-12,-17,-18,-18,+5mar

暗号のようですが、読み方は次のとおりです。

  • 44:染色体の数が44本(ふつうは46本)
  • X,-Y:性染色体はX染色体のみで、Y染色体がない
  • -5、-7、-12、-17:5番・7番・12番・17番の染色体が1本ずつない
  • -18,-18:18番の染色体が2本ともない
  • +5mar:正体の分からない染色体(マーカー染色体)が5本ある

正体の分からない染色体は、なくなった染色体の一部が、ちぎれたり別の染色体とくっついたりしてできたものと考えられます。

ほかの6個の異常な細胞も、これと共通の異常を持っていましたが、染色体の数が42本、43本など少しずつ違っていました。残りの13個は、正常な46本の細胞でした。

このように、私の場合はたくさんの染色体の異常が重なっていました。この結果から複雑核型と分かり、アザシチジンで病気を抑えながら、移植を目指す治療方針になりました。

MDSでは、こうした染色体の異常のほかに、設計図そのものは正常なのに、必要な部分が「読めなくなる」という異常も起きています。これは「メチル化」と呼ばれる仕組みに関係していて、私が受けているアザシチジンという薬の効き方にもつながります。詳しくは、別の記事で説明します。

注意が必要とされる異常

染色体の異常の中には、移植後の再発に注意が必要とされるものがあります。

  • 異常が4つ以上の複雑核型:国際的な予後分類(IPSS-R)で、最も進みやすいグループとされています。
  • モノソミー核型:5番や7番など、染色体が丸ごと1本なくなる異常が2つ以上ある状態です。移植後に再発しやすいと報告されています。
  • TP53遺伝子の変異:複雑核型に伴って見つかることが多く、移植後の再発に関係するとされています。染色体検査ではなく、遺伝子検査で調べます。

ただし、これらの異常があっても移植を受けられないわけではありません。移植は、こうした異常がある場合でも、根本的な治癒を目指せる唯一の治療とされています

 

※この記事は、患者である私が理解した範囲でまとめたものです。病状や治療方針は人によって異なるので、詳しくは主治医にご確認ください。

 

【用語解説】骨髄異形成症候群(MDS)とは ― 患者の私が理解したこと

【用語解説】複雑核型とは ― 染色体の異常が3か所以上ある状態