山下達郎がリズムギターの名手となったワケ | ゆるい中年の独り言~おやじサーファー日記~

山下達郎がリズムギターの名手となったワケ

坂本龍一 FMサウンドストリート 
ゲスト 山下達郎 1982年6月1日 より
2人のトークを抜粋。



坂本:こないだ会いましたよ、おたくの奥さんに
山下:何でですか?
坂本:どっかのスタジオで
山下:あぁ、何かター坊がター坊があってたときに君が来たんでしょ
坂本:そうです。 お綺麗になりましたね。
山下:何を言ってんだ!!君は!!(笑) その顔なんだい、その顔
坂本:曲行きますか?
山下:ほんとに白髪増えたね・・・ ええと次はバーケーズっていうファンクで最近人気が凄いありますけど、この道十何年のグループで、バーケーズの中でもベスト・トラックだと言われるホリー・ゴーストっていう曲





坂本:今、流行のSのファンクですね、これは
山下:でも、これはずいぶん昔のヤツ
坂本:何年ごろなんですか?
山下:76年くらいですかね

坂本:ああ、なるほどね、ホリー・ゴースト。ところで、ビジネスの話の続きなんですけど、その道は詳しいんでしょ?
山下:よく言うよ(笑)
坂本:山下君といえばさ、レーベルつくったでしょ?RCAでね。それで、その頃あったらさ、明日から地方に行ってね、地方のレコード店で営業するとかね、廻ってくるんだって、説教してくるんだってね(笑)、言ってましたけどね、2、3年前かな
山下:そうだね、79年くらいですかね
坂本:ちょうど、こっちもねイエローやってる頃で、まだやってるんですけどね
山下:(笑)
坂本:やっていたんですね、どうですか?もう何回も地方なんかに行ったりしてるわけ?
山下:そうだね、そういうディスカッションの場には出たね
坂本:なに、そこでやっぱり普段は歌謡曲ばっかり聴いてるようなレコード店のオヤジさんとか
山下:そういうんじゃなくてね、むしろレコード店の若い人っていうか、数少ないけど、支持してるっていうかね、
坂本:現場で売る人
山下:そう、現場の売る人に直接、商品知識をね
坂本:オルグするわけですね
山下:そうそう、そういうと聞こえはいいんだけどね
坂本:なるほどね

山下:流通っていうのは、すごくプリミティブだよ。そういうところは。
坂本:あ、そうか、君んちはさ、お家がほら、あれでしょ?
山下:お菓子屋なんだよ
坂本:ね、だから商店の息子さんでしょ?
山下:そう
坂本:だから、割とそういうことは知ってるんだ。
山下:あのね、オレ中学校の頃からやってるでしょ
坂本:ああそうなの
山下:そうすると、ガムとかさ当時はさ、今は問屋へ行ってねトラックでさ、問屋へ行って、勝手に品物持ってきてさ、問屋もスーパーマーケットになってるからね。
昔は問屋が来たの。それで、ガムとかさチョコレートとかちっちゃいのあるでしょ、ああいうのさ、業界用語で”ポケットもの”って言うんだけどさ

坂本:なるほど、いい言葉だね、”ポケットもの”レコードの・・
山下:ああいうのさ、ガムの有名な会社あるでしょ、NHKだから言えないけど、ああいううセールスマンが来るのよ。注文取りに来るわけ。今度出たガムは天然チクルでね、これからどういう時代で、いちいちこういう・・
坂本:それって、やっぱり一人来ると来ないじゃ大違いなわけでしょ、商品としてはね。
山下:えらい違う。そうすると、やっぱりガムの会社を信用できるから、あれしょうと。

坂本:信用をね・・・
山下:清涼飲料あるでしょ、コーラといわれるね、あれ2大メーカーあるでしょ。一つのメーカーがどんどん発展してさ、もうひとつが全然だめだったの、あれはもう、営業の差なんだよね。営業所の数がさ
坂本:細かく地方に入り込むという、現場に入り込む
山下:そう、これはすごいね。
坂本:企業も・・・

山下:アルファとかさ、ジャパンとかたくさん、ちっちゃいレコード会社あるでしょ。ああいうのは、どうしてもね、そういう末端のね動きでね、難しいところがあるみたいよ。
坂本:兵隊さんの数が違う・・戦争ですよね、企業戦争。
そうすると、歌を歌ったり、曲を書いたり、プロデュースしたりという、アーティスト活動って言われてるね、そういうのとさ、そういうレーベルのオーナーというかね、それはもう一種企業的なっていうかさ、商売でしょ?
そういう部分と、分けてやってるんですか?
山下:そうですね。最終的には、もっと・・・僕は事故で入ってきたようなもんですからね、君は必然性で入ってきたからね、ちゃんとね。

坂本:イヤ、僕は事故ですよ
山下:そうですか?
坂本:僕はバイトの延長だもの
山下:(笑)そうは言わせないよ。
坂本:そうかな
山下:君に一番最初に会った時に、何を最近聴いてるのって聞いたら、ケニーランキンって言ったね
坂本:何それ?(笑)

山下:覚えてないでしょ
坂本:覚えてるよ、いたね、そういうのがね、まいったね。次、いってください。
山下:これ、僕のアイドルのジェームス・ブラウンで・・・
坂本:清志郎も好きなんだよ。
山下:ああ そう。僕はねこの人のシングルコレクターでね、日本で一番シングルを持っているんだ。200枚くらい出てるんですよ、140枚くらいにはなりましたけど。ゼア・ワズ・ア・タイム





山下:これ、あれなんですよ、ジャガーなんですよフェンダーの
坂本:ジャガー、何ですか?
山下:ジャガー、ジャズ・マスターっていうたぐいのね。テレキャス、ストラスの前のヤツってわけじゃないけど、今はテレキャスかストラトって感じですけど、ジャガーとかね、ジャズ・マスターっていう
坂本:全然知らない。ギター少年だったの
山下:そうでもないけど
坂本:バンドってのはさ、シュガーベイブが初めてだったの?
山下:アマチュアバンドやってた。
坂本:ああ、そうか
山下:そん時、ドラムだったの。オレ言ったことなかったっけ?
坂本:いえ、知ってましたよ(笑)、驚いて見せたの(笑)
山下:(笑)
坂本:サービス精神ですよ、これ。

山下:君、最近ドラムたたいてるね、ルージュマジック、君がドラムたたいてるでしょ?
坂本:判ってくれてる?
山下:あれ、いいねぇ
坂本:そう言ってくれる?、ほんと?
山下:ドラムってのはさ、ドラムって絶対ね、あれはね、あれなんですよ。あの・・・
坂本:なに?
山下:パラディドルができるとかね、そういう尺度じゃないんだよね。あれね。
坂本:できるよ、でも(笑)

山下:昔、やってたもんね。
坂本:練習はね・・・
山下:どうやって、やってるの? 練習台でやってるの?
坂本:なんにもない、もうぶっつけ本番。
山下:ああ そう
坂本:だからね、ある日突然フィルとかができるようになるわけ。
山下:(笑) 何でドラムやろうって思ったの?
坂本:・・・・そうだな・・・ユキヒロを見ててさ、カッコ良すぎんジャン
山下:ユキヒロのドラムセットってのは、結構イタズラしたんでしょ?
坂本:うん、してたよ、いつも

山下:ユキヒロのドラムセットってのが、一番たたきやすいんだよね。ペダルとかね。
坂本:同じペダル買いましたよ。あの、ペダルは最高。
山下:ん。あれは某社のものです。
坂本:某社のもの
山下:ブラックシャフトのヤツでしょ?
坂本:そうそう
山下:オレモあれ使ってる(笑)
坂本:え、持ってんの?
山下:持ってるよ
坂本:家でたたいたりするわけ?
山下:家では叩けないけどね、ただ、腕の練習、左はどんどん弱くなるからさ

坂本:僕ね、左ぎっちょでしょ
山下:ああ そうなんだね、それ得だね。
坂本:得なのかね?
山下:うちの青山も左なんだよね
坂本:”うちの青山”だって(笑)、青山君ね、純ちゃん。あ、そう?
山下:そう、だから、左から始めるフレーズっていうのがすごく楽にできる

坂本:その代わりさ、”ダカ・ダカ・ダカ・ダカ”っていかないんだよ。シンバルがさ、どうしてもさオン・ビートでさ、左いきたくなるわけ。だけど、普通のセットだと右じゃない、オン・ビートがさ。
そこでフィルでさ、こんがらがって、一発食って、食っていったりね
山下:あれはね、左を二つたたくの
坂本:・・・・・そうね、それは判ってますよ
山下:(笑)すいません
坂本:だけどさ、タムでさ、タムがあるでしょ。タタ、タタでしょ。それをさ、ッタッタタとかさ、難しいわけよ。スティック絡まっちゃう。
山下:そうだね
坂本:カチンなんて音がしたりして

山下:いっそのことさ、ファットぎみにすれば
坂本:それはかっこいいんだけどね
山下:そういう人、よくいるよ
坂本:誰かいたな・・・
山下:ビーチボーイズなんかそうだね、あれは左利きだから。
坂本:よく聴いとかなくちゃ
山下:(笑)あんまりうまくないけどね
坂本:だけど、今話してたんだけど、ユキヒロのドラムはいいね
山下:いいね。

坂本:山下君といえばね、こないだ、去年だっけ、矢野顕子のさ、シングルであしたこそ、あなたってシングルでリズム・ギターをね、弾いていただいた。

山下:全然、明らかじゃないんですけど。
坂本:聴こえるでしょ?
山下:弾かしていただいてるのは、明らかじゃないんですけどね、あんまりね。
坂本:もっと宣伝しよう。”明日こそあなた”を聴くと山下達郎のリズム・ギターが聴ける! すごくいいんですよね、あれね。あれは、どういうものだったっけね?
山下:ズッ・チャーカ・チャっていううやつでしょ? 難しいんだよ、あれ。

坂本:難しいですね。いやね、ギタリストがさ、いないんですよ。いいなぁっていうギタリストが。それで、そういえば山下がいるって、僕がアドバイスしたんですよ
山下:宜しくお願いします!! ついに、でもね、あれでね、あの後、結構仕事来たんですよ。
坂本:そうかな?
山下:ほんとに。それで、スタジオミュージシャン斡旋業者のさリストに載ったんだよ
坂本:なに? じゃ僕もドラムに載ってるかな?
山下:そろそろ載るんじゃない
坂本:シングルで一位になったんだからね
山下:(笑)でも、ルージュマジックよりター坊のさ”黒のクレール”ってあったじゃない。あの方がいいと思ったね。(大貫妙子 黒のクレール)
坂本:ドラムやりはじめて、まともなのは、あれくらいでしょ。
山下:あれはいいよ。
坂本:リムやってたんだけどね、カッってね、あの、やったことないのよ全くね。あの時初めてやったのね。
山下:(笑)
坂本:細野さんがさ、皆ブーッてふきだしてさ、一回ごとに音がかわっちゃったりするわけね。一所懸命、動かしちゃいけないんだなって、固定してねカッ・カッってやったんだけど

山下:でも、そういう一定さが無いから、いいんだよね。
坂本:そうだね、やっぱりね。でね、ユキヒロがやるとね、うまくなりすぎちゃうのね。
山下:ふーん
坂本:判る?うますぎるじゃない。あいつが。
山下:(笑)
坂本:一頃、流行ったヘタウマって言葉がね、下手でよいっていう気持。トムトムクラブもそうだしさ、トーキング・ヘッズもそうだしさ
山下:昔のさ、リバプール・サウンドとかさ、あの時期の人達って、みんな下手なんだよね。
坂本:下手だよ~ん。その極致はローリン・ストーンズだね。
山下:そうだね
坂本:すごいよ!

山下:ストーンズのビデオって、家たくさんあるんだよね、初期のさ。もう、ほんとに下手だよ。チューニングメチャクチャだしさ
坂本:はぁ でもいいんだよね
山下:いいんだよね
坂本:スタジオミュージシャンのうまい人がやったらさ、面白くないジャン。ぜんぜん。曲が死んじゃう。
山下:うん
坂本:だからね、結局さ、自分が好きなさ、”下手さ”っていうか、”良さ”ね。口で説明してもなかなか、ないじゃない。自分でこれだって思う人がさ居ればさ、その人に頼んでやればいいんだけど、面倒くさいじゃない。
人にだいたいね、自分のイメージを伝えるっていうのは難しいでしょ?
山下:ん、伝えきれないでしょ
坂本:不満でね
山下:坂本君の中にはあってもね、生きてきたアレの中から、一こまがね、みんなそれぞれ違うからさ。
坂本:いやぁ 違うんですね。
山下:(笑)







mambo:そうだったんですか!もともとリズム屋だったんですね。
今もパーカッションは達郎サンご自分でやりますしね。
それに坂本サンもですけど、相当ファンク好きですね。
ファンクもシンコペの効いたリズムの絡み合いの音楽ですからね。
そして「上手さ」ではなく「良さ」を求めると。
そうですかぁ。
ですよねですよねええ。。





山下:これ、あれなんですよ、ジャガーなんですよフェンダーの