午後3時過ぎだった。
警察から検案が終わったので署まで来てくださいと連絡があったのは。
他殺の可能性はなく、本人が自ら首を吊ったと。
それは私もわかっていた。
身長184cmの筋肉質の息子を一体誰か何の目的で…
そんなことより理由を知りたかった。
うちは4年前に離婚しており、私と息子は実家で暮らしていた。
父は3年前から入院しており、家には私の母と息子と私の3人で住んでいた。
田舎の一軒家。
庭も広く、3人で暮らすには十分過ぎる広さだ。
初孫である、私の息子を母は溺愛していた。
少し甘やかし過ぎでは?と思うくらい、年金が入ればすぐに小遣いをあげていた。
だから彼は心の優しい子だった。
お年寄りにも、障害をもっている人にも。
学校でも同級生はもちろん、下級生たちにも慕われ、彼の周りには常に人がいたらしい。
校長先生が言われた「私が教職員を辞めても一生忘れる事の出来ない生徒です」に涙が溢れた。
だからこそ何故彼は死を選んだのかが解せなかった。
警察の方は「このくらいの年齢のお子さんが自死する原因の一つとして受験への不安というのがあります。携帯の中を調べさせていただきましたが、息子さんは発達障害か何かありましたか?」と。
え?私の息子がですか?
いえ、特にそういう事は言われたことはありませんが…
葬儀社の方が車を持ってきてくださっていた。
まだ息子は納体袋に入ったままで、そのままワゴン車に載せられて葬儀社へと向かった。
事故や病気で亡くなったのならともかく、こういった亡くなり方をした場合は密葬にするものだと聞いていたので、お通夜なしの一日葬というプランを選んだ。
しかし、翌日が友引だった為、葬儀は翌々日ということになった。
葬儀社に着き、白装束に着替える為に私と母はロビーで待つように言われた。
「お待たせいたしました。どうぞ中へお入り下さい」
怖かった。
今朝あの死に顔を見てから半日くらい経っている。
優しく頬に触れてみた。
もう人間の体温なんて全くなく、何度名前を呼んでも何の反応もない。
当たり前だ。
涙と鼻水が顎を伝って拭っても拭っても止まらない。
何があったの?
ねぇ?ママのこと親友みたいって言ってたじゃん。なんで何も相談してくれなかったの?
なんで?なんで?
気が触れる一歩手前…という状態だった。
だけど私は喪主。
母として彼の為にしてあげられる事をきちんと努め上げないと…
息子の葬儀社は学校関係者にだけ教えた。
しかし葬儀社に問い合わせがすごかったらしい。
お花を贈りたいという人も数多くいて、最後に会っておきたいという方からの電話が鳴り止まず、葬儀社の方から「どうしましょうか?」と聞かれる始末。
私は息子に言った。
「お前一体どれだけ愛されてたんだよ…」と。