『果たされた運命』⑧

 

 

 

エルロイ大叔母様の死後アルバートさんは孤立。

疲れ果て再び自由を求め世界中を旅していました。

キャンディはポニー先生の死後孤児院を気にかけるも、慌ただしい日々の為帰る事ができずにいました。

キャンディを養子にと望んでいたカートライトさんが亡くなり、遺言で孤児院の土地をキャンディに遺したことで、子供のための病院を建てることを考え始めます。

 

一方テリィは自分の会社を設立しプロダクションを持ちたいと考えていました。それは大きなリスクを伴うもので、成功させる為に最初の作品に母であるエレノア・ベーカーに出演を依頼。テリィの役に立ちたいと常々思っていたエレノア・ベーカーは快諾します。

キャンディは万一の失敗を思い緊張の日々を送っていました。

 

その頃アルバートさんから手紙が届きます。

 

 

 

親愛なるキャンディ

 

最後に会ってから長い時間が経ってしまったね。テリィが一緒だから心配はしていないよ。僕は人生においてとても激しい経験をしてきた人間だ。そしてこれまで今のように感じたことは一度もなかったと思う。

 

僕はここ数日間フランスの川沿いにいて、ある女性に会ったんだ。彼女は毎日同じ場所に来て絵を描いていた。彼女が通り過ぎる人々を見つめ、それを描く方法は並外れたものだった。

僕は彼女に絵を描いてもらうために通行人の一人になってね。最初は彼女が生計のために描いているのだと思ったが、のちにそうではないと分かった。彼女は目に留まったもの全てを描いていた。

 

ある日、僕は彼女がどこに住んでいるのかを見に行くという誘惑に負けてしまったんだ。彼女が誰であるかを知る前に、僕は彼女に恋をしてしまった。どうアプローチすればよいのか分からなかったから、僕を描いて欲しいと頼んだけれど断られてね。それで毎日川辺に行ったんだが、彼女が僕を描いているのを見たんだ。

僕は話しかけなかった。彼女は僕が求めたことを自分の意思でやっていたんだよ。

 

ついにある日、彼女から肖像画が出来上がったと連絡があったんだ。ようやく観ることが出来たその絵の美しさは信じられないほどだった。

彼女は僕の魂をこの肖像画に描いてくれたんだよ。こんな気持ちになったことは一度もなかった。

 

彼女が肖像画を描き終えた後も僕は一緒にいたくてね、毎日川辺に通い続けたんだ。

僕達は少しずつ仲良くなりお互いを知るにつれ、共通点が多いことに気付き驚いたんだ。

シモーネは貧しい家庭に生まれ、夢見ていた芸術の勉強を終えられなかった。

 

キャンディ、おかしな話に聞こえるかもしれないが、ソウルメイトを見つけたと思う。それを最初に知るのは君だと言ったことを覚えているかい?

君とのこれまでの人生について話したが、彼女は何も批判しなかった。

僕は彼女と残りの人生を過ごしたい、キャンディ!

 

この手紙は僕が結婚することを知らせるためだよ。

テリィと一緒にパリに来てくれたらとても嬉しい。式は小さな教会で行い、ゲストはほとんどいないんだ。

式の後アメリカに落ち着くが、彼女が愛するフランスに頻繁に訪れることを約束したよ。僕は彼女が愛する国を描くのを観るのが大好きだから、望んでいた芸術を勉強出来るように手配したんだ。それが僕に出来る最低限のことだからね。

 

キャンディ、この手紙で僕がどう映るのかは分からない。僕からのこのような手紙には慣れていないだろうからね。

僕の招待への返事として、すぐに連絡をもらえたら幸いだよ。

近いうちにパリで会えることを楽しみにしているよ。

 

 

愛を込めて

 

 

アルバート

 

 

 

キャンディは読みながら涙を浮かべていました。素晴らしかった。

いつもとは違っていたけれど、それでいてアルバートさんらしく、彼のことをとても幸せに思いました。

 

二人に会いに行きたいと思ったキャンディでしたが、会社が軌道に乗っていないテリィは難色を示します。しかし、非常にストレスを抱えているテリィには休息が必要だと訴えるキャンディに根負けし、パリへ行くことに。

 

 

ポ二ーの家に子供達を預け出発。

テリィはすぐにフランス旅行が正しかったことに気付きました。

旅の間中ご機嫌なキャンディはとても幸せで、テリィは彼女のそんな姿を見るのが好きで、ただキャンディを幸せにするためだけに生きていました。

 

久しぶりの再会を果たした三人。

テリィは劇場のプロジェクトについて話し、とても楽観的なアルバートさんに、突然同じように感じます。

キャンディは幸運のお守りで、一緒にいる限り何も問題は起こらない、テリィはそれを確信していました。

 

パリは魔法のように美しく、テリィは魂を圧迫するものが何もなくなった今、キャンディをさらに強く愛していると感じました。

恨みも罪悪感も無く、二人の愛は最高潮に達していました。

 

 

パリの小さなカトリック教会で行われたアルバートさんとシモーネの結婚式は、シンプルでしたが素晴らしいものでした。

司祭の前に立ち愛を誓う新郎新婦を見つめながら、自分自身の結婚生活と、一緒になるまでの経験した全てを思い出し、感情的になるキャンディ。

 

 

式後、アルバートさんとシモーネは彼がオーナーであるホテルの応接室でゲストを歓迎。

皆健康と幸せを祈り、新郎新婦と酒を酌み交わしました。

 

夕方遅く部屋に戻ったテリィとキャンディは、バルコニーから遠くエッフェル塔が見える美しい景色を眺めていました。

 

「この街はとてもロマンティックね。もうすぐ帰らなければならないなんて、本当に悲しいわ」

 

「いつかまた来よう」

 

「そうね」

 

「来年の夏、子供達も一緒にスコットランドへ行かないか?父さんが招待してくれたんだ。あれから長い時間が経ってしまったが、時間を見つけて行きたい」

 

「もちろんよ!行きたいわ」

 

「今夜願いがひとつ叶えられるとしたら、何を願う?」

 

「そうね、今夜のようにいつも一緒にいられる幸せかしら・・・。あなたは?」

 

「毎朝起きてそばかすが見られるように…かな」

 

「心配しないで、愛する人。私のそばかすはどこにも消えないわ。ずっとここに残るわ」

そう言ってキャンディは彼の腕の中に跳び込みました。

 

二人はしばらくそのままパリの素晴らしい雰囲気に酔いしれるのでした。

 

 

ニューヨークに戻ったキャンディはパティから手紙を受け取り、パティがエディと婚約したことを知ります。

 

パリを離れる前にアルバートさんに病院について話したところ、返済を条件に経済的援助を申し出てくれ、ついに夢が叶うことを嬉しく思うのでした。

今後完成する病院に、ポニー先生を偲んで『ポニー病院』と名付けました。

 

テリィの新しい劇は大成功。プレミア上映はあらゆる売り上げ記録を破り、毎晩満席。それが一年中続きました。

エレノア・ベーカーは素晴らしく、テリィも非常に良い評価を受けました。二人はうまく協力し、新しい劇に取り組むことを考えていました。

 

キャンディはシカゴの精神病院に入院しているイライザを見舞いに行っていました。

イライザは全く認識をせず、キャンディに自分は誰なのかを訊ね、いとこだと答えると頷いたまま反応はなし。

キャンディは医師から訪問者がほとんどいないことを聞き、ラガン家は娘の運命を受け入れることが出来ずそこに置き去りにし、存在しないかのようにしていることを知ります。慈悲深い魂はこれに耐えられず、ラガン夫人に会って理由を訊ねようと何度も考えましたが、勇気がありませんでした。

 

 

 

 

*カバー画像お借りしました🙇