『果たされた運命』②

 

 

 

テリィは主演を掴んだハムレットの初演を大成功におさめたものの、心は空虚。

何とかキャンディの居場所を探そうと考えるもなすすべがなく、運命を受け入れキャンディとの約束を果たそうと、スザナと結婚することに・・・

 

テリィは母を訪ね、伝えたいことがたくさんあったにも拘らず言葉を発することができませんでした。

エレノア・ベーカーは息子が何か悩んでいることを察しますが、無理に聞き出そうとはせず、

「テリィ、幸せじゃないの?結婚するのよね?」

テリィは苦笑。

 

「それが嫌なら、なぜこんなことをするの?」

 

「俺は約束を破る習慣を持ちあわせていないんでね・・・」

少し残酷に答えました。

 

 

結婚式当日、テリィはスザナに永遠の愛を誓います。

(お前は哀れで汚い嘘つきだ!人に嘘をつくのが好きなんだな!)

自分自身に向け、頭の中でこう思いながら・・・

 

スザナは美しく、幸せに包まれていましたが、拷問儀式の間中、テリィはどんなに頑張ってもスザナを愛することはできないと思い、キャンディのことが頭から離れませんでした。

 

 

 

一方、イギリスで従軍看護婦として働き2ヶ月が過ぎようとしていたキャンディは、体調不良で倒れてしまいます。

アメリカからボランティアとして一緒に来ていたエディ医師が診察。

 

キャンディは妊娠していました。

 

事情を聴いたエディは、すぐに帰国し子供の父親に話すよう助言。

悩んだ末テリィに打ち明けることを決め、帰国の準備をするキャンディでしたが、

新聞でテリィがスザナと結婚したことを知り絶望。帰国を断念します。

 

体調も思わしくなかったキャンディを見かねたエディは、田舎に住む自分の母(ウィルソン夫人)と妹(アリソン)のもとで赤ちゃんを産んではどうかと提案。

キャンディは受け入れ、親切な親子のもとで、

栗色の髪、青い瞳の美しい女の子を無事出産。

『エレノア』と名付けます。

 

その2日後、突然アルバートさんがキャンディのもとを訪問。

自分の居場所を一切明かしていなかったキャンディはとても驚き、アルバートさんもキャンディの状況に驚きます。

何があったのか、なぜ何も話してくれなかったのか、なぜ帰国しなかったのかを問われたキャンディは、

大スキャンダルになることでアルバートさんに迷惑をかけたくなかった…と。

子供の父親を問われても何も答えないキャンディ。

実はアルバートさんはアーチ―の結婚式当日、去っていく二人を目撃しており、父親はテリィだと気付きます。

 

アルバートさんは一緒に帰国したいかどうかを訊ねますが、産後日が浅い為今は帰れない、いづれ帰るつもりだと告げ、子供のこと、居場所を絶対に口外しないと約束し、二人は別れます。

 

 

テリィはキャンディからの置き手紙を読み返す日々。

間もなく体調を崩したスザナは、具合が悪い姿をテリィに見られたくないと寝室にテリィを入れないようメイドに話しますが、堪えられなくなったメイドがテリィに…。

 

テリィは初めてスザナの状態を知ることに。

慌てて医師を呼んだものの、例の怪我が背骨にも及び、痛みの為モルヒネを使うまでになっていました。

 

スザナは痛みに苦しみ、絶えず不平を言いながら時を過ごし、テリィはそんな雰囲気の中で生活するのが耐えられなくなっていきます。

罪悪感と自責の念で苦しみながら・・・

 

新しい役と自分を比べ死を意識するも、もう一度キャンデイに会い愛を伝えたいというわずかな希望に、そんなことはできないと思うのでした。

テリィは何とかキャンディの居場所を探し出そうと、アルバートさんに電報を打ちます。

 

 

帰国したアルバートさんは電報を受け、ニューヨークのテリィのもとへ。

「キャンディは大丈夫、心配いらないと伝える為にここへきた」と告げます。

 

彼女に会ったのか、どこにいるのかと詰め寄るテリィに、

「スザナと結婚している君がキャンディに何を望むというのか。彼女に今の人生を歩ませてあげて欲しい」と言うアルバートさん。

 

「キャンディはやりたいことを自由にできます。まだ僕を愛していると分かっています。僕はそれを感じています。生きている限り彼女を諦めるつもりはありません」

 

「なら、なぜ他の女性と結婚を?キャンディがいなくなったことを知っていたというのに、なぜ追って来なかったんだい?」

 

「出来ることは全てやりました。彼女は失踪し、どこで探せばいいのか分かりませんでした。あなたも彼女がどこに行ったのかを知らなかった。スザナについては、キャンディに結婚を何度も懇願されたんです。彼女に聞いてください。僕はそれを実行しただけです」

 

「テリィ、もうお互い言うことは何もないよ。もうこれ以上関わりたくはない。君とキャンディは大きな間違いを犯したようだ。修正できる時に修正する代わりに、より大きな修正を行ったんだよ」

 

「本当にどこにいるのか教えてくれないのですか?」

 

「いや、テリィ。キャンディは準備ができたら戻ってくると言っていた。僕が言えるのはこれだけだよ。また会えて嬉しかった。さようなら」

 

アルバートさんが去った後、テリィは怒りと惨めさを吐き出し、苦い涙を流しました。

 

**

 

あっと言う間に時は過ぎ春になり、エリー(キャンディが娘に付けたニックネーム)は生後3ヶ月に。

キャンディはアメリカに戻る可能性について考えていましたが、決断できずにいました。

そんな時、エディはキャンディをスコットランドに誘います。

思い出の地をテリィとそっくりなエリーと訪れ、懐かしさとテリィへの想いが込み上げるキャンディ。

彼女の気持ちを知りつつも、エディはプロポーズ。

キャンディはテリィへの断ち切れない想いを語り断ります。

 

 

その頃、テリィは人生の最悪の悲劇、悪夢を毎日生きていました。

スザナは悲惨な状態にあり、彼女の母、医師、看護婦が常に世話をしていました。

夜も眠れず苦痛でうめき声を上げる彼女は、どんな薬でも助けられないレベルに…。

マーロウ夫人はとてもイライラし、娘のためにいつも泣き、娘の不幸をテリィのせいにするのです。無言で全てに耳を傾けるテリィ。

しかし、テリィはその不気味な雰囲気に耐えることに限界が来ていました。

 

ある日帰宅したテリィはメイドからスザナが会いたがっていると伝えられます。重みにつぶされるのを感じながらも会いに…。

スザナの変わり様は驚くべきものがあり、美しさは何も残ってはいませんでした。

テリィは自分が経験している事の代わりに、スザナの代わりでありたかったと何百万回も願っていたのです。

 

スザナは残された力を振り絞り笑おうとし、

「テリィ!久しぶりね。会いに来てくれないのかと思っていたわ」

 

「迷惑をかけたくなかったんだ」

 

「嘘よ。私を見るのが耐えられないのよ」

 

「なぜ自分自身を苦しめる?そんな必要はないだろう。言われたらすぐに来たさ」

 

「ずっとあなたを待っていたの」

 

テリィは何も答えず、スザナは泣いていました。

「私は夢を一つも叶えられなかった。偉大な女優になりたかったのに、なれなかったわ。あなたを愛していたけれど、あなたは少しも愛してはくれなかった。他の人を想う気持ちの1%も私には与えてくれなかったわ」

「否定しないで。あなたはまだ彼女を愛していて、彼女のことを考えるのをやめていないわ。分かっているの。私を見るたびにあなたの顔にそれが表れるの。私に感じているのは、悲しみと哀れみ、それ以上ではないわ」

 

テリィに言葉はありませんでした。

 

「スザナ、泣くのは止めるんだ。どうかしている」

 

「あなたが私を愛してくれると思ったのは間違いだった。あなたに恋したのは間違いだったわ。あなたは私の愛に値しなかったし、私の愛に感謝したこともなかったわ。捨てたのよ」

 

「もう十分だ。俺にそんな風に言わないでくれ。君は俺のことを何も知らない。初めから何もなかった。それは今でも変わらない。愛していない人をどうやって愛することができるって言うんだ?特別なことを何も共有したことがない人に?どうして俺を愛してると言える?俺がどういう人間かもわからないのに・・・」

テリィは彼女には残酷なことを承知の上で、こう言い放ってしまいました。

 

「そのことについてはもう話したくはない。必要ない。今は休んだ方がいい」

 

「でも、私はあなたを愛しています。初めて会った時から愛していました。でも、間違いだったわ」

 

テリィは気分を害し、部屋を後にすると外へ出て朝まで歩き続けました。

 

 

 

 

 

 *カバー画像お借りしました🙇