相談

 

分割するも着床せず、治療を続けるかどうか悩んでいます

 

私は卵管が片方つまっていたこと、夫の精子が少なめだということから、体外受精に踏み切りました。今までに3回採卵をしました。卵子は10個前後採れ、顕微授精により受精して分割も始めるのですが、着床にいたりません。
凍結胚を戻す時には、胚盤胞まで追加培養をするのですが、いつも胚の成長が遅く、桑実胚までしか育ちません。成長の遅い胚は、戻しても着床の可能性は低いと言われます(もちろん戻しましたが、やはりうまくいきませんでした)。

胚の成長が遅いのには何か原因があり、今後、何度トライしても同じことになる可能性が高いのでしょうか。それとも、例えば凍結したことによるダメージなどで、たまたま成長しなかっただけでしょうか。凍結せずに胚盤胞まで培養してもらうことなどで、うまくいく可能性は考えられるのでしょうか。現在38歳、治療を続けるかどうか悩んでいます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

お返事

 

胚の成長には、卵子の質、精子の質、培養環境が関係しています

 

ご質問ありがとうございます。

医師より女性側と男性側の因子を指摘され、体外受精に踏み切ったものの受精はするが胚盤胞まで育たない、移植しても着床しないとのことですね。

 

胚盤胞に育たない理由は、主に次の3つが考えられます。

1,卵子の質(染色体、遺伝子といった見た目、形では判断できない部分)が悪い

2,精子の質(染色体、遺伝子といった見た目、形では判断できない部分)が悪い

3,培養環境があっていない

 

はじめに1の卵子の質についてですが、年齢や誘発方法、ホルモン剤、BMIなど様々な原因で低下することが知られています。

受精後3日までの初期段階で成長がとまっているのであれば、これらが要因の1つとして考えられると思います。

また、誘発方法で変わる可能性もあります。

おっしゃるように元々お持ちの卵子の質が関係していることも考えられます。これは採卵をして受精して発生させてみて、結果的に「卵子の質だったのかもしれない」という部分でしか判断できないため、採卵を何度か繰り返すことをセオリーとするクリニックが多いと思います。

ただ、何度も同じような結果になってしまう場合は、例えば転院をしてみて別の医師がみること(クリニックによって考えや伴う実績が変わってきます)で結果が変わることもあります。

 

次に2の精子の質です。精子の遺伝子と考えていただくとよいと思います。受精後3日後までは卵子の遺伝子によって発育が進むと言われているため、その後に発育が止まってしまっている場合は、精子の質に着目します。精子の質も卵子と同様で年齢や喫煙、ストレスなど様々な理由で低下します。しかし、遺伝子は目視で判断できるものではなく、精液所見では判断できないため、いくつかの技術を用いて、良質だと思われる精子を選別することが必要になります。

既に診療で受けているかもしれませんが、転院先のクリニックでIMSIやPICSI、ザイモートを用いた精子精製法があるかと思いますので、こちらを提案されることがあれば、利用することで結果が変わってくることもあるでしょう。

 

そして3です。培養方法が「あってない(培養液についても同様)」可能性もないとは言えません。ただ、これはクリニック毎にこだわりと実績があり、簡単に方法を変えることが難しいため転院という選択肢になってしまうかと思います。

以上のことから、トータル結果を見て「もしかしたらこれだったのかもしれない」と判断するのが妥当でしょう。

 

それらのことから、1,2に関係する原因の可能性が高いと考えますので、卵子と精子の双方から良い対策を検討したいと医師にお伝えいただくのが良いのかと思います。

 

次に初期胚で一度凍結し、次周期以降で胚盤胞まで育たせた上で移植を行われていることについての考えですが、結論から申し上げますと、凍結ダメージについては考えられないこともないですが、個人的にはそもそもが胚盤胞まで育ちにくいという可能性のほうが高いように感じます。理由としては、受精後すぐの段階で既に成長が遅いからです。成長が遅いものは胚盤胞まで育ちにくいことは知られていますから、凍結が原因というより、卵子や精子、受精した後の受精卵の質に課題があるとクリニック側では考えていると思います。私も同様に思います。

 

他クリニックの話になりますが、なかなか胚盤胞に育たない場合、初期胚移植という方法をとることもあります。おそらく、相談者さまには移植に繋がっていないこともご不安となっている一因かと思いますので、このような方法について、一度医師にご相談していただくのはいかがでしょう?

 

まとめになりますが、胚盤胞に育たない場合は、卵子や精子の質というのが非常に重要なファクターになります。ただ胚盤胞にならないからと言って、対策がないかというとそういうことではないです。誘発方法や薬剤の対策、技術による対策などいくつか考えられますので、上記を参考に一度医師にご確認いただくというご提案です?

そこでもあまり進展がない場合は、転院というのも一つの選択肢です。クリニック、医師によって考え方も違えば、対策方法も微妙に変わってきますし、実績も変わります。また、治療についてご不安になられているように思えますので、治療を継続するかどうかの判断材料として、更に今までの治療を再確認する意味でも、違った先生に意見をもらうのも一つの方法かと思います。

 

少しでもご参考になれば幸いです。

 

ママなり談話室は、不妊治療情報センターに日々寄せられる相談とそれに対するお返事を抜粋して紹介する「i-wishママになりたい」連載のコーナーです。不妊治療で悩まれる方は全国に多くいらっしゃいます。私たちは、みなさまが少しでも不安や心配なく妊活や治療に臨めるように願いを込めて編集を続けています。