午前中、共に教材研究をしたのは、近くの市の若い男の先生でした。
秋に、大阪府の図工美術教育の研究大会で、地区の代表として発表をしてくださることになったので、夏休み中に大会の冊子に載せる原稿を書いてもらうのですが、とり急ぎ本部にタイトルを報告すべしという期日がせまっているので、早急に内容を決めなくてはならず。
大役を引き受けてくださったものの、
「伝えたいことはあるけど伝える術はまだない。」
という状態で、ふたりで模索を始めました。
キーワードになったのは、その彼が来月マダガスカルに植物の撮影旅行に行くという話。
マダガスカルって、正確にはどこにあるんだっけ?
固有の動植物の宝庫だということと、小さい頃鉱物に魅せられていた次男が、訪れたい国として、希少な鉱石が豊富だと言われるマダガスカルにこよなく憧れていたことは覚えていました。
「何かそんなに好きな珍しい植物があるの?」
と尋ねたら、聞き取ることも覚えることもできなさそうな、舌を噛みそうな名前の植物をいくつかあげてくれました。
「塊根植物の仲間なんです。」
すぐにググりましょう。
あ!なんて自由な形!
ユニークな造形です。植物の定型にとらわれない独特の形。しかも多彩。
ただし、そこに載っていた画像はどれも園芸品種のようで、小ぶりなオブジェのようです。マダガスカルに行けば、野生の猛々しいこういうのがいっぱいあるのかな?
「こういうの、工作で作るとしたら素材は何がいいと思いますか?」
「粘土がいいです。」
と、彼が即答しました。
彼は学生時代に美術を学んでいて、写真や陶芸を今も続けているのだそうです。
砂場の泥んこで作るもよし。
陶芸用の土の粘土で作って焼くもよし。
手近にあった素焼きすることもできて、乾燥させるだけでも堅牢になるという工作用の粘土を使って、「塊根植物」を作ってもらうことにしました。
土をこね、形作っている間に、子供たちの活動に繋げるイメージが明確になって行ったようです。
「塊根植物だけに限らないで、子供たちがそれぞれ自由にデザインした植物を作るのはどうだろう?」
わざわざアフリカまで見に行くほど大好きな植物をモチーフに、ライフワークにしている陶芸に絡めた作品を作る題材が見つかりました。
夏休みにマダガスカルで撮影した写真を資料にしましょう。だけど、本物も見せたいね。
日本で手に入るものを、育てているのだそうです。
「ジャングルに見立てて、みんなの作った植物を並べようか?」
アイデアがいろいろわいてきてワクワクしますね。
「植木鉢も自由にデザインして作るのはどうかな?」
「僕、植木鉢にもこだわりがあるんです。
東京の作家の植木鉢が好きで、わざわざ買いに行くんです。」
ふぅん、どんなの?
インスタグラム覗いてみよう。
これと似てるの知ってるなぁ。
「そういえば、私の知ってる静岡の陶芸作家も、多肉植物マニアで面白い植木鉢作ってはるよ。芦澤和洋さんっていう人。」
今度は彼が画像検索しました。
「あっ!これ僕持ってます。すごくいいですよね!」
そうでしょ?
なんだか嬉しいなぁ。
「緑地公園のミズタマ舎っていうところで買ったんです。」
あ、ミズタマ舎さん知ってるのね。
私も好きで。
芦澤さんがミズタマ舎で個展なさるときは一緒に飲んだりするんだよ。
「僕、鳥肌たちました。」
どうやら彼も嬉しかったみたいです。
ご縁って繋がってるなぁ。
ところで、この題材は魅力的ですけど、現実に授業でするとなると、学年の先生に理解してもらって、教材研究にも協力していただかなくては。
お願いしたら、すぐに了解をいただけました。いいものになる予感がします。
たった二時間の打ち合わせでも、情熱があったら形が見えてくるのだなぁ。
午後は、近くの箕面市の研修会に参加しました。
講師は奈良女子大学付属小学校の服部真也先生です。
全貌をレポートしたいのだけど、お話の内容が盛りだくさんで、実習もいくつかあって大忙しだったので、簡単にはまとめられません。ごめんなさい。
「ことばから絵の題材をみつける」
提案では、三つの短歌と一篇の詩が紹介されました。
かなしみはすべて僕らが引き受ける桜の花は上に散らない
針に糸通せぬ父もメトロでは目を閉じたまま東京を縫う
雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる
この三首の作者は木下龍也。
そして長田弘の「最初の質問」という詩。
「今日あなたは空を見上げましたか。」という一節から始まる長い詩です。
まずはひとりでそれを読んで、自分が絵にしたいものを選びます。
そして思い付いたことを隣の席の人や班の人に語ってシェアし合う。
それからサイズや色がいろいろある画用紙から選んで絵を描きます。
私が選んだのは
「雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる」
という歌。
アジアの繁華街の夜。コスプレイヤーの少女。少女に見えて実は大人。
少しお酒に酔っていて、雑踏に見つけた瀕死の蝶を撫でて形を直して再び飛び立つようにと念じています。
晩ごはん。
ここだけの話、週に一度の焼きそばの日は、楽チンです。
私はお肉を解凍し、ありあわせの野菜をザクザク切っておけば、あとは夫が料理してくれるからです。
昨日、新鮮なモツを夫が煮込みにしてくれたのもある。
今日も食卓がととのい、いただきますをする前に、
「で、今日は君は何か作ったのか?」
と夫に問われました。
冷奴の豆腐は切っただけ。
とうもろこしはラップを巻いてチンしただけ。
枝豆は茹でただけ。
甘長とうがらしは焼いただけ。
赤だしの味噌汁は作ったよ。塩蔵ワカメを戻して油揚げを刻んでなめこを放り込みました。
まぁ、いいじゃないの。
これでも贅沢な食卓だよ。
どれも、美味しいです。
酒も、旨いです。