飛騨路は花盛り。 | ママゲリア聖子の大阪ロマンチック

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北大阪在住、食いしん坊で呑んべえのなかよし夫婦のいろいろを記録しておきたいと思います。こんなに楽しい毎日、本当に感謝しています。

長男とリカちゃんと、松本で別れ、私たちが向かった先は岐阜県高山です。

高山は、風情ある昔町。
素泊まりの安宿に1泊し、有名な朝市を目指して朝の散歩に出かけました。

陣屋の朝市は、朝8時、すでに内外からの観光客で賑わっていました。
地元のお母さんたちが自家製のものを売るテントが並びます。

「うちは米農家なんです。」
軽快なセールストークがチャーミングなお母さんは、2年前までお姑さんが出店なさっていたのから引き継いだそうです。
「ゴールデンウィークみたいな旅行のお客さんが多いときは、おばあちゃんの顔が見たくて来た、って言ってくださる方もおられます。」

その方のテントでは、もち米と、朴葉の葉に挟んだお餅を選びました。

他のテントでは、リンゴ一山と、山菜のコシアブラを。

そのあと、朝ごはんを食べられそうな店を探して街をウロウロします。昼間は混雑する古い街並みも、まだ開いてるお店がほとんどなくて、飲食店が見つかりません。

あ、お醤油屋さんがある!
刺し身用のかけ醤油がそろそろ切れる頃で、樽に仕込んで寝かせていたというこの店ご自慢の一本を選びました。

あ、飛騨牛のコロッケだ。
夫とコロッケとメンチカツをはんぶんこずつして食べ歩き、小腹を満たします。

結局、朝8時から開店していると「こびしや」というお惣菜屋さんで、おにぎりといなり寿司を買って、店内のカウンターに座って朝ごはんになりました。

その日まで、全然予定が決まってなくて、
「郡上八幡に行こうか?そのあと、時間がありそうなら岐阜にも回ろうか?」
と朝ごはんを食べながら決定。

新緑が美しい、清流吉田川沿いのせせらぎ街道をドライブします。

若葉だけでなく、飛騨の里は現在あちこちに桜が満開で、街道はさながら花の道です。
前日も、この日も、走っていたら、いろんな乗り物に出くわしました。顕著に多かったのは小型のオープンカー。幌を上げてドライブするのには最適の気候です。オートバイにまたがって旅するシニアの方にも多く出会いました。

車窓から見える桜並木があまりにも艶やかで、思わず車を停めて花盛りの樹の下まで行ってみました。
ソメイヨシノよりもずっと小輪のこの桜はなんという品種でしょう?

河原に下りて、流れに指を浸してみました。雪解けの水は冷たくて、飲めてしまいそうな清らかさが嬉しかったです。

前日、松本から高山に向かう安房峠越えの山道を走っていたときも、見事な桜の樹を見つけて、Uターンしてその下で車を降りてみました。


前夜は、高山の街の居酒屋に飲みに行きました。
「樽平」という店をどうやって見つけたかと言うと、夫が敬愛する居酒屋探訪家、太田和彦さんのオススメの店だということで。
地方都市に旅行すると、その街に太田氏推奨の店がないかどうか、一応チェックしてお店を選ぶことにしています。


早朝から自宅で着付けをして長距離ドライブ、想定外の暑さの中、着物姿で旅をして、ホテルの部屋でやっと簡単なワンピースにストールの姿に着替えて夜の街へ。
その格好では、肌寒いほどでした。

ガラガラと入り口の扉を開けたとたんに
「これは太田さん好みやわ。」
と合点が行きました。

カウンターの中でくるくるとたち働くのは、年配の女性と、その実の娘さんで、お二人とも和装です。
お母様の方はたすき掛けに前掛け。娘さんの方は、白い割烹着。
この日は、連休の繁忙期で、さらに三代目になる若いお嬢ちゃんもお手伝いなさっていました。

太田さんは、着物できびきび働く女性のいる店がお好き。そして、家族経営なのも良い店の条件だと常々熱弁なさっています。

地酒の品揃えも、店のしつらえも、手のかかった郷土の家庭的な料理もズバリストライクのお店でした。
隣り合ったおじさんとさしつさされつ、つまみも分け合って話がはずみ、楽しい夜になりました。


さて、桜並木のお次に見つけたのは、芝桜の花畑です。
「國田家の芝桜」と看板が出ていて、川沿いのドライブウェイの対岸の丘が、ピンクのグラデーションで埋め尽くされています。

この地に住むひとりの女性が芝桜を植え続け、花のじゅうたんを育て上げて、道行く人の目を楽しませて来たのが始まりだそうです。
彼女のなきあとも、地元の方の協力で、家族により花畑は守られ、その盛りの時期には多くの観光客が訪れる有名なスポットなのだそうです。

写真では、その広大さが伝えきれなくて残念です。


郡上八幡にも、懐かしい思い出があります。久しぶりにそれを辿ることにしましょう。

吉田川の清流で、友禅流しをするように、職人さんが川に入って、鯉のぼりを泳がせている画像を見たことがないでしょうか?

郡上八幡の伝統工芸の鯉のぼりは、独特の藍染の色とデザインがきっぱりと美しく、あどけなくひなびた味わいです。

長男を生んだばかりの頃に、私たちは家族でこの地を訪れ、鯉のぼりの生産と販売を行っている「渡邊染物店」を訪ねました。

我が子の初節句に、藍染のこんな鯉のぼりを飾りたい、と思って、結局私は住まいの近所の藍染の先生の手解きで、郡上八幡の鯉のぼりを手本にして、ろうけつぞめで手作りの鯉のぼりを染めました。

今回も、この小さな老舗を訪ねました。
藍をたてる甕が床にいくつも埋め込まれた工房で、今年も鯉のぼりが売られていました。
当時の当主の渡邊庄吉さんもご存命で喜ばしいことですが、今は、息子さんが代替わりをなさって伝統を守られているのだそうです。

昼食には、「すぎ本」という郷土料理の店で、山菜をいろいろにアレンジした、お蕎麦もいただけるコースを選びました。
夫は名物の「鶏ちゃん」の定食を。


郡上八幡には、もう一軒大切な場所があります。
水野政雄さんとおっしゃる造形作家の作品を集めて展示してある「遊童館」というギャラリーです。

郡上八幡は、夏の間毎日盆踊りが開催され、徹夜踊りも行われる「郡上おどり」という行事で名高い街です。この山里に、全国からファンが集まり、連夜たいそう賑やかな伝統行事です。

その行事を広く報せる観光ポスターのイラストを長年担当なさっている、この地ゆかりのアーティストが水野政雄先生です。


油彩画、木を使った人形、そして、子供たちの造形遊びのアイデアの数々が、遊童館にはたくさん展示されていて、ワークショップのコーナーもあります。

最初に家族でここへ来たときには、水野政雄先生ご自身から、楽しい工作を手ほどきしていただきました。何度も図工の授業で繰り返し楽しんだ、作って遊べる工作です。
身近な素材をアレンジして子供たちがものを作って遊ぶ精神を、ここで学んだと言える場所です。


この日は偶然、近くの
「ギャラリーNAOI」で、水野政雄先生の新作の個展が開催されているのを見つけました。まだまだお元気で、精力的に活動なさっているのです。

遊童館の展示には、紙コップを使った工作の新しいアイデアがたくさん飾られていました。これもまた、研究して図工でやってみたくなりました。

観光客が溢れるメインストリートを外れて、静かな職人町を歩きました。

通りかかったお寺の境内の藤の花が満開で、スイーツみたいな芳香を放っていました。
一本の樹を藤棚にしつらえて、こんなにたくさん花をつけられるように丹精してあるのです。藤の樹の力はものすごいものだとあらためて感心しました。


岐阜の旅の最後にたどり着いたのは、頂上に岐阜城をいただく金華山のふもとです。

長良川のほとりには、大きなホテルが建ち並び、船着き場には、5月11日から夏の間開催される「鵜飼い」を告知するポスターが貼られて、そわそわするような一大観光地です。
子供たちが幼い頃に、義父母とや義兄家族と共に、屋形船に乗り込んで、鵜飼いを鑑賞したのを思い出しました。

もう一度、岐阜の夏の風物詩である由緒正しい鵜飼いの船に乗ってみたくなりました。いつか、乗りに来ましょう。

川原町という、昔ながらの作りのうだつの上がった家々が続く町に、「長良川デパート」という小さな商店があります。

清酒、打ち刃物、和紙製品など、長良川の流れる美濃地方の特産品を集めたアンテナショップです。

中でも、圧巻なのは「和傘」の品揃え。岐阜は和傘の生産量日本一で、京都で売られているものも、ここで作られたものが多いのだそうです。

若い女性の店員さんが、
「どうぞ手にとって見比べてください。」
と、次々に開いて見せてくださいます。

畳まれている時の形も美しいですが、パッと開いたときの花が咲いたような色の鮮やかさと、絹糸を丁寧に張り巡らした内側の細工の細かさに感嘆します。

開いたり、閉じたりするときの手触りも、香りも、とても魅力的。
夫も魅了されてしまい、一本を選んで購入することにしました。

大切に手入れをしたら、生涯使えるのだそうです。
迷いに迷って、明るいブルーのものに決めました。職人さんの伝統の技に敬意を抱きながら、使い続けたいと思います。

帰路の高速道路の渋滞を避けて、途中滋賀県の八日市で地道に下りました。
ヒトミワイナリーと、大桝酒店に寄り道して、近江路で大きな夕陽を眺めながら走りました。

と言っても、私はナビシートで爆睡していて、気がついたら家の近所でした。まるでどこでもドアです。

せめてもの罪滅ぼしに、ずっとドライバーをつとめてくれていた夫をいたわる晩ごはんを作りました。

朝市で買ったコシアブラとタラノメの天ぷらと、鯛の塩焼き、キュウリの梅肉和えです。

二日間働いたら再びお休み。ゴールデンウィークはたいそうありがたいです。