【添付資料を見直しました 2024/05/16修正】
1 *1 動物医療薬品等データベースのリンクに修正しました。
2 *3 心不全ステージ分類を参考までに追加しました。
ロリーの健康診断の結果を受けてセカンドオピニオンを勧められました。心臓の具合が悪化している、との診断で左房径大動脈径比が2.07(昨年は1.77)、椎骨心臓サイズ11.9(昨年は11.8)。この数値の悪化をどのように捉えればよいのか不安が拭えなかったことが発端でした。
掛かりつけの獣医師の紹介で地域の高度医療センターへ。当初は有名な獣医師が在籍するJ動物病院を提案されましたが緊急時に駆け付けて間に合う病院にお願いしたいと考え当該循環器科の心臓外科専門医にロリーを診ていただくことにしました。
直近の健康診断の結果を持参し、ロリーはX線と心エコー検査。ちょっと体重が増えていたロリー。ハーネスを外したロリーを獣医師は片手で軽々と持ち上げて検査室へ。腕にロリーを乗せていて後ろから見送ると獣医さんの肘のあたりにロリーがお座りしているように見えました。
30分ほどで今度は看護師が大事そうにロリーを抱えてきて返してくれました。
検査終了後の診断は掛かりつけ医と同じ僧帽弁閉鎖不全症。ただし左房径大動脈径比は1.82。ステージ(*2)は明確に出されてはいませんが中~軽症状であると判断されている。
比較的早期に服薬(ピモベンダン製剤ベトメディンチュアブル)を開始していること、好発犬種ではないことから心不全(肺水腫)を発症させずに維持できる可能性がある。服用中のベトメディンチュアブルはエンドポイント50%到達まで3年半あるデータ(*1)からロリーの寿命を通じて症状を維持できる可能性があると考える。
以上より現在は手術のリスクを冒すべきではない。お勧めしない、ということでした。
現在服用中のベトメディンチュアブルは僧帽弁閉鎖不全症のステージB2より服用させることが心不全ステージ分類に記載されている(*3)。早ければ早いほど心不全までの時間が稼げるらしい。ロリーは昨年(2023年2月27日)に譲渡が完了しそれから12歳の誕生日に健康診断を受け心エコー検査から間もなく3月20日から服用を開始していました。かかりつけの獣医師の判断に感謝している。
好発犬種に関しては圧倒的に多いのはチワワ。そしてキャバリア、トイプードル、ポメラニアン等と代表的な小型犬種が続く。ロリーは10kg強のシェルティ。心臓外科専門医の手術実績でもシェルティの手術は10/800件ほどらしい。1%強。シェルティは好発犬種ではないそうだ。
手術の推奨年齢は10歳以下。13歳なら可能な年齢らしいが若いほど回復力が良く合併症の影響も出にくいらしい。
一方病状のステージが重篤すぎると手術の予後が悪くなる。しかし、中程度~軽症であるならば手術のリスクはとらないほうがいい。
では、今後どのように手術を判断するか。
ベトメディンは長期服用し続けて手術したとしても予後に影響しないとのこと。ロリーの場合は健康診断などで血液の逆流に気づいて服用を早期に開始した。それでも病気は進行するので心不全を起こした後はベトメディンなどの強心薬に利尿剤が追加される。そして利尿剤は着実に腎不全を引き起こしていく為長期服用はできない(*3)。
従ってベトメディンなどのピモベンダン製剤で服用を継続し心不全に陥るまでの時間を稼ぐことはできても心不全を起こした際に次の手段として手術に踏み切ることになる。
ロリーの場合はそれまでに寿命が尽きるのでは、という見立てをされている。掛かりつけ医も心臓外科の専門医も同じ見解でした。
ただ、3年半(*1より正確には3年4か月)というデータは早く亡くなった子もいれば長く生きた子もいてその中央値なだけ。ロリーは既に14か月経過している。
ロリーがこれからどれだけ生きてくれるか私には分からない。その寿命をこの心臓の病が制限することを避けたいと考えている。
次回の専門医の診察は3か月後。今は今日明日のスパンで何か起きることはないかもしれない。しかし急激に悪くなることもある。だから夜間の呼吸数には気を付けるよう注意を受けた。40回/minを超える場合は直ぐに受診との指示でした。最初の肺水腫を早期に発見して乗り越えなければならないからだ。そうでなければ生きるチャンスは失われてしまう。
獣医師はまだ大丈夫というが後一年か一年半先でも私にはもう時間がないとしか思えない。
昨年は自分が勉強不足だったこともあり薬を飲んでいれば何となく平穏な老後を暮らしていけると思い込んでしまった。でも友人の愛犬の死でかなり変化を来した。
調べれば調べるほどこの病気は最後は呼吸困難で亡くなってしまう。薬では治らない、進行を遅らせるだけ。根治には外科手術しかない。その手術のリスクも非常に高い。心房を切り開いて弁の腱索を再建し弁輪縫縮する。縫い合わせた心臓はしばらく無理をさせてはいけない。手術台からの生還率は95%らしいがその後の生存日数のデータは見たことがない。
ロリーがもう少し若かったら状況は変わったのだろうか。
それとも手術をせずに済む可能性があることを喜ぶべきなのか。老犬が衰えてギリギリに肺水腫を起こしたときにそれは獣医師が考えたプラン通りだとその時に納得できるのか。
今年は昨年よりも考え込むことが多くなってしまった。
*1:
※添付文書をダウンロードするとみることができます
【2024/05/16 修正】
*2:犬の僧帽弁粘液腫様変性の診断と治療に関するACVIMコンセンサスガイドライン(和訳版) | ベットアート (veterinarian.jp)
*3:VETERINARY BOAD APRIL No.60 特集犬の僧帽弁閉鎖不全症 ーACVIMコンセンサス・ガイドライン2019とその後の新知見ー 2024/4/15 高野裕史(監修)
心不全ステージ分類 出典は*3