「国宝」〔監督 李相日 175分)

話の内容は、歌舞伎に賭けた人生

ヤクザの新年会のワチャワチャした感じが良かった。そこでの出し物の歌舞伎で、縁側を花道に見立てて、役者達が出て来て通るのが印象に残った

喜久雄達が化粧を落としている時に、ヤクザの殴り込みが勃発するというのが印象に残った。特にくの字型の廊下の奥で、倒れたヤクザがドアガラス割りながら庭に倒れ出るのと、喜久雄達がドアガラス越しに見るドアガラスに、喜久雄の父親が射殺されるのが映る、撮り口が印象に残った

東一郎と半弥が橋の上、橋のたもとの川べり、で踊りを稽古するシーンが印象に残った

田中泯演じる万菊の、中性的な感じ、白粉塗ってるが深い皺が刻まれた不気味な感じ、そして何でもお見通しな感じ、が印象に残った

父親の半二郎の代役に、実の息子の半弥でなく東一郎を指名するストーリーが印象に残った。そして橋の上で本気でキレてるように演じて実は東一郎を許している半弥の演出が印象に残った。後に立場が逆転して、今度は半二郎が家の前で半弥に本気でキレる演技をやり返す、というのも印象に残った

半弥と東一郎の恋人春江が、なんで半弥とデキちゃったのか?ボクには良く分からなかった

半弥の落ちぶれぶりが弱かった

東一郎が芸者との間に生まれた娘に、「悪魔と取引して、全ていらないから芸を上手くして下さいと願ったよ」と言う、演出が印象に残った。最後半二郎を撮りに来たカメラマンがその娘で、「悪魔と取引したようになったね」みたいな事を言うのも印象に残った

東一郎が3代目半二郎を師匠が白虎を襲名する口上で、師匠が口から血を吐いて倒れた時に、口から血を吐きながら師匠が実の息子の俊介の名前を繰り返し口にする事で、東一郎に半二郎を襲名させても、血の繋がりのある半弥への愛情は変わらない所か強くなっていた、というのが分かる演出が印象に残った

師匠の白虎が死んで、半二郎が落ちぶれていくストーリーでは、大物役者から役を貰おうとその役者の娘に手を出す。その娘と2人ドサ回りで歌舞伎を続ける半二郎が、夜の建物の屋上で、舞台の衣装を着ながら、酒瓶ラッパ飲みする落ちぶれぶりが印象に残った

田中泯演じる万菊が、最後ボロアパートで寝たきりになっているというのが、残ったのは人間国宝の芸だけ、という感じで、ボク的に良かった

再び歌舞伎界に2人揃った半二郎半弥コンビだったが、半弥の方が糖尿で片足切断するというストーリーが印象に残った。その足で最後、命懸けで舞台に立つというのも印象に残った

最後は新たに襲名した白虎の踊りで終わるラストが印象に残った

全般的に

歌舞伎の演目シーンが長めに撮られているし、演目の前に稽古などで同じシーンを前もってやってくれるので、歌舞伎の演目のシーンが分かりやすくなっているというのは良かった

しかし半弥も半二郎も落ちぶれてゆく演出が弱く、その落ちぶれてゆく中でも芸を磨く演出も少なく、再び歌舞伎の世界で活躍するようになる説得力があまりなかった

そして東一郎や半弥の女達も、溝口健二監督の「残菊物語」のような、落ちぶれた東一郎や半弥を献身的に支える女性のようには描かれていなかったのも残念だった

大ヒット作品で、ボクは興味を持って観れたので、約3時間集中して居眠りしないで観る事は出来たが、落ちぶれぶりが弱く、支える女性のエピソードも良いのが無く、半二郎半弥の2人の、時に親友時にライバル、な関係性もボクは楽しめず、多くの人達が絶賛し大ヒットした作品だったけれど、ボクはあまり楽しめなかった作品