「人生はわれらのもの」(監督ジャン・ルノワール、ジャック・ベッケル他 61分)

話の内容は、当時のフランス共産党のプロパガンダ映画

最初の学校の授業で、先生が子供達にフランスの豊かさを教える演出が良かった(フランスの豊かさが映像として映し出されるのも良かった)

子供達が、学校の帰り道授業で教わったフランスの豊かさについて話し合う演出が良かった

ナチスやファシズムの台頭と、それに対抗する共産党の対立を描いていたが、スターリンを英雄視したりして、共産党も諸手を挙げては賛成できないとボクは感じた  

第一のエピソードは、経営者が利益を出す為に、商品の値下げ・人員の削減をし、生産効率を上げる為タイムキーパーを雇って労働者達の働きっぷりを監視する工場で、労働者のストライキにより労働者の解雇・商品値下げを撤回させ、タイムキーパーもいなくさせる事に成功する話

工場自体が成り立たなければそこで雇われている労働者も働いて賃金を得る事が出来なくなるので、労働運動には工場の存続という制限がある事。労働者の有効な手段がストライキだけで、ストライキすると生産性が落ちてしまい、社会全体の豊かさにとってはマイナスになる手段しか労働者はとれない事。が労働運動やストライキの限界だとボクは感じた

第二のエピソードは、農村でやり繰り出来なくなった農家が、家畜や農業用道具などを競売で売って借金返済する事になったが、共産党が力を貸してくれて、他の買い手を共産党員達が脅したりスカしたりして競売で買うのを邪魔して、共産党員が安い値段で競売物件を買い占めて、元の持ち主の農民に返してあげるという話

このエピソードがボクは1番良かった。共産党員達が他の競売の買い手を脅したりスカしたりして、入札するのを邪魔する演出がコミカルで良かった

第三のエピソードは、高学歴だが職に就けず、日雇いの仕事を探すが上手くいかなかったり、車の洗車の仕事を始めるが慣れない仕事でモタモタしてクビになったり、仕事があるよと誘ってくるのは軍隊入隊の勧誘だけだったりする話。仕事が無くて食う物が買えず腹が減り、救世軍の食事の長い列に並ぶが、貰える寸前で食事配布が終了し、グッタリしている所を共産党員達に助けられ、共産党の集会で共産党員や他の苦しんでいる労働者達と知り合ったり、共産党員や労働者達のいかにも左翼的な歌詞の合唱に力づけられて、男は労働運動にのめり込んでいく。

しかし結局男は、就職して、働いて、賃金を稼いで、食っていく事は出来ないまま、というのが違和感があった

全般的に

当時のナチス、ファシズムが台頭して、それに対抗する共産党や労働運動がとても必要だった時代なので、共産党労働運動を賛美していたのだろうけれど、スターリンを英雄視するなど今の時代ではとても受け入れられないとボクは感じた。ヒットラーの独裁もスターリンの独裁もどっちもどっちで、鶴田浩二の「傷だらけの人生」の歌詞「右を向いてと左を見ても♪莫迦と阿呆のからみ合い♪どこに男の夢がある♪」を思い起こした

共産党は悲惨な労働者など社会的弱者を助けるという政治理念は良いけれど、資本主義の自由競争にすると富が資本家に集中するので、国家のお偉いさん達が計画を立てて経済を回そうとした所に無理があった。その国家計画経済のおかげで、社会主義国家の庶民は、資本家に搾取され劣悪な環境で働かされている自由主義経済の労働者達より、更に酷い生活を強いられる事になった。これではいくら政治理念が良くても意味が無い。

しかし社会主義国家が次々と亡くなり、世界中資本主義経済の資本主義のグローバリゼーションが進む中、悲惨な労働者など社会的弱者を助ける必要は強くなり、共産党の社会的弱者を助けるという政治理念の実現が益々必要になっているとボクは感じる。その政治理念を実現するのは、科学技術などの発展で世の中が物質的に豊かになる事が必要不可欠だとボクは感じるので、社会的弱者を助けると同時に経済成長や生産性向上も促す事が出来るような、ストライキではない新しい労働運動政治運動が必要だとボクは感じました