「近松物語」(監督 溝口健二 102分)

話の内容は、不義密通で市中引き回しのうえ磔獄門になる大店の女将おさんと奉公人茂兵衛の恋

旦那さんが奉公人の若い女中の袖の中に手を入れて触るセクハラがやらしかった

不義密通で、馬に乗って市中引き回し、大勢の群衆の晒し者になるシーンが圧巻だったが、最後もおさんと茂兵衛の市中引き回しのシーンで終わると、もう一度市中引き回しのシーンを撮っていたのが凄かった

大阪にいる時に、役人達から逃れる時に、大きな樽の間をおさんと茂兵衛が逃げるシーンがシーン的に良かった(大きな樽というのが観ていて楽しかった)

夜の水辺を歩いて逃げるおさんと茂兵衛、一艘の小舟に乗り入水心中しようとする演出、死ぬ間際に茂兵衛がおさんに好きだと告ったら、おさんが死ぬのをやめて茂兵衛との愛に生きる演出が凄かった

琵琶湖に心中の遺体がないか?夜何艘もの舟がかがり火焚いて探しているシーンが良かった 

茂兵衛がおさんの命を助けようと、おさんを置いて山を降りて逃げるが、おさんも山を降りて茂兵衛を追いかけて来て、隠れていた茂兵衛が転んで立てないおさんを見かねて助けに出た時に、おさんと茂兵衛が激しく抱き合う「愛情の深さ」の演出・撮り口が良かった

不義密通の犯罪人のおさんと茂兵衛を小屋に匿ってくれる茂兵衛の父親の優しさが良かった

役人に匿った父親だけでなく村人達にも罪が及ぶと言われて、父親が2人を匿っている事を役人に白状するのがやるせなかった

役人達に強引に引き離され、竹藪の中連れていかれるおさんを必死で追いかける茂兵衛、奥の方に役人達に連れて行かれるおさん画面手前では役人達に取り押さえられる茂兵衛のシーンがシーン的に良かった

自分の身が危うくなっても、小屋に閉じ込められていた茂兵衛を逃げ出させる茂兵衛の父親の優しさが良かった

おさんの実家にやって来た茂兵衛を、おさんの母親が暖かく迎い入れるが、最後に1目会いたいだけかと思ったらもう2度と離れないと言い出した2人を、おさんの母親が自分の家も取り潰されるのを回避する為に態度を変えて役人が2人を取り押さえるのに協力するというのがやるせなかった

不義密通は、恋した2人が処罰されるだけでなく、お店は取り潰しで奉公人達も路頭に迷い、親族縁者にも累が及ぶというのがやるせなかった

最後市中引き回しで群衆に晒し者にされている時に、しっかりと手を握るおさんと茂兵衛のショットで死んでも構わないという愛情の深さを描いていたラストがとても良かった

全般的に

不義密通は恋する2人が処罰されるだけでなく、お店は取り潰され、親類縁者にも累が及ぶけれど、それでも愛し合うおさんと茂兵衛の愛情の深さがとても上手く描かれていたのがとても良かった

シーン的にも、役人達に常に追われる中での恋の逃避行シーンは観ていて楽しかった

恋愛経験の少ないお子ちゃまのボクでも、「死んでも構わないという恋愛」の激しさを感じる事が出来た、やるせない恋愛映画の傑作。観て良かった。