「西鶴一代女」(監督 溝口健二 137分)

話の内容は、昔は高貴だったが、今は年老いて誰も見向きもしない老婆の夜鷹に落ちぶれてしまった女の話

他の夜鷹達は客とシケこむ中、主人公の夜鷹は誰からも見向きもされず、1人寂しく夜道を歩くという演出・撮り口が凄かった

身分違いの恋で、主人公達親子は京都追放、相手の男は打ち首というのが悲惨だった(相手の男が死んだと聞いて、主人公が包丁で自殺しようとするのを母親が止める、家の中から竹林の中まで出ていく長回しがシーン的にも凄かった)

殿様の老家臣が、殿様の子供を産む妾として集められた女達の顔や身体を品定めする長回しがコミカルだった

舞を舞ってる主人公を老家臣が見つけて、妾にピッタリと喜ぶ演出がコミカルだった

子供を産んだら捨てられて家に帰らされる主人公が悲惨だった

親は主人公が世継ぎを産んだので、金回りが良くなると思い、多額の借金をしていたので、帰ってきた主人公を廓に売るというのが悲惨だった

廓に、下品だが金をたっぷり持った男がやって来て、廓の人達は金を見たら応対が変わり、下品な男を客として丁重に扱い、使用人達は店の中に散ってテキパキ働き、その男が廓で遊んでいる時に金をバラまいたら、廓の人達がその金に群がり、主人公の大夫になった女だけがバラまいた金を拾わずにいたら、廓の主人は「お高くとまるな。お前はクビだ」と言っていたら、客の下品な男は主人公を気に入り高額の見受け料を払うというので、廓の主人は手の平を返して主人公の機嫌をとり、下品な金持ちの男に主人公が見受けされるのか?と思ったら金が偽金で、役人達が下品な客を取りおさえに来るシーン・演出・撮り口が凄かった(特に金を見て、廓の使用人達が蜘蛛の子を散らすように散らばってテキパキ働き出すシーン、下品な客がバラまいた金に廓の人達が群がるシーン、そして2階にいた下品な客を役人達が取りおさえる時の2階から1階に降り店の中庭で取り抑えるシーンとそれを2階から見ている主人公の大夫のシーンがシーン的に楽しかった)

廓の年季が明けて、主人公が商人の店で働き出すが、廓で働いていた事がバレて気まずくなり、店の主人にも手籠にされるのが悲惨だった。そのお返しに店の女将の秘密の頭のハゲを猫を使ってバラす演出がコミカルだった

廓の過去を知った上で結婚しようと申し込んだ真面目な男と結婚し、お店をもって夫婦仲良く暮らしていたが、夫はもの取りにより殺害され、役人達によって死体が店で待っていた主人公の所に運ばれてくるのが悲惨だった

主人公が出家しようと尼寺で生活していたら、主人公に気のある商人の店の使用人が、店の着物を主人公に渡していたのが店の主人にバレて、主人が「着物を返せ」と主人公に言ったら、主人公が「着ている着物が貰った着物だ」と言って着物を脱ぎ出したら、主人はムラムラして、一緒に来ていた丁稚にお小遣いをあげて追い払ってから、尼寺の中で主人と主人公がHしていたら、お茶を持って来た尼僧に見つかり、主人公が尼寺を追い出されるというのが悲惨だった

尼寺を追い出された主人公と主人公に気があり店の着物をくすねてあげて店を辞めさせられた使用人が、尼寺の軒先で会い、お互い笑って意気投合して、一緒に旅に出ようと思っていたら、使用人は辞める時に店の金もくすねていて、たまたま入った茶店で出会した店の主人と使用人達に見つかり、ボコボコにされて、それを止めに入った主人公に店の主人が「お前には関係ないこの売女めが」と捨て台詞を吐いて、止めに入った主人公を突き飛ばして、金をくすねた使用人の男を連れ去って行くというシーン・演出・撮り口が凄かった

寺の前で三味線弾く女乞食にまで身を落とした主人公が、大名行列を見つけ、息子が籠に乗ってると思って大名行列を見守る主人公の、主人公は女乞食、息子は大名の世継ぎというギャップが悲惨さを強めていた

息子は大名暮らしだけれど、自分は女乞食という悲惨さに、主人公が泣いて突っ伏していると、夜鷹達が心配してくれて、夜鷹のアジトで飯を食べさせて貰って、夜鷹達に「ここまで落ちぶれたら何をやっても一緒」と励まされて、主人公が夜鷹デビューするのが悲惨だった。夜鷹用の着物にレンタル料が要るのと、主人公が声をかけても断られてばかりいたのが、1人のジジイが夜鷹の主人公を家まで連れて行ったが、Hするんじゃなくて、大勢いた旅の男達に「こんな醜くて悲惨な女と遊ぶ気にならんだろ」と言って、主人公の夜鷹を反面教師として連れて来ただけで、Hせず金を払って主人公の夜鷹を帰すのが悲惨過ぎて笑えた(覚悟を決めて夜鷹になったが、年老いて醜くなり、その夜鷹としても使えないというのが悲惨過ぎて笑えた。夜鷹の主人公は怒ったけれどお金は返さないというのも悲惨さを増幅させていた)

寺の500羅漢像に男達の顔が浮かぶという主人公の演出・セリフが良かった

羅漢像見ながら倒れたが命は助かり、主人公の息子が大名の後を継いだのでこれからは楽が出来ると年老いた主人公の母親に言われて、主人公は大名の息子に会いに行ったが、家臣達から「母親が夜鷹とバレたら藩の威信が傷つく」と言われ、歩き去って行く大名の息子の顔はチラッと見えたが、会って話そうとする主人公を家臣達が全力で止め、結局主人公は息子の大名の所から抜け出して托鉢槽になるというオチも悲惨だった(歩き去る大名の息子を主人公が追いかけ、それを家臣達が全力で止めるシーンがシーン的に良かった)

全般的に

悲惨過ぎて笑わざるを得ないユーモアの連続。溝口健二監督のお得意の長回しも存分に楽しめる

偽金使いの廓の客を役人達が取りおさえるシーン、使用人を店の人達がボコボコにして連れ去るシーン、大名の息子を主人公が追いかけて家臣達から全力で止められ、主人公が大名邸から逃げ出して、主人公をさがして家臣達が右往左往するシーン、がアクションもありボクは楽しかった

この作品の落ちぶれていく田中絹代はミリキ的だった

本当に悲惨過ぎて笑わざるを得ないユーモアだらけの溝口健二監督の大傑作。時間が2時間越えと長いのもあるけれど、見所満載でついつい感想も長くなってしまった。