「緋色の街/スカーレット・ストリート」〔監督フリッツ・ラング 102分)

話の内容は、若い女に騙された欲ボケジジイが、女を刺し殺し、女を殺した罪を女の恋人に被せて、一緒に騙していた女の恋人も死刑で死ぬが、欲ボケジジイは2人を殺した罪を背負い、死んだ女の幻聴に苦しみながら惨めな人生を送るという話

社長の若くてベッピンの愛人が、若くてベッピンだった

最初の雨の降る町のセットの雰囲気がとても良かった

キティがカフェの蝋燭の火でタバコに火をつけ、タバコを吸うのが良かった

奥さんに「皿洗っといて」とキツく言われて皿を洗うクロスの、奥さんとの冷えた夫婦関係の演出がとても上手かった

奥さんが、クロスが絵を描いているキティから貰った大事な花をゴミ箱に捨てるのが印象に残った〔夫婦の冷え切った関係を強める上手い演出だとボクは感じた)

クロスが一旦は金を戻すが、キティに頼まれて会社の金庫から会社の金を横領するのが印象に残った。クロスが会社の金を横領したと気づかずに、社長が出納係のクロスから仕事用の金を受け取る演出が上手かった

クロスが描いた絵を、キティが自分が描いた絵として画廊に高値で売るのをなんとか取り繕うのがオモロかった。クロスの奥さんは、画廊でクロスの絵を見つけるが、クロスがキティという有名な画家の絵をマネて描いたと勘違いし、クロスが描いた絵ともクロスとキティの関係にも気づかない。クロスは、キティの「お金が無いから自分の絵として署名して売ったの」という嘘の説明〔ホントはキティの恋人が金欲しさに売り払ったら、高名な絵画批評家の目にとまり、クロスの絵をキティに署名させてキティの絵として高額で売り飛ばす)を信じて、クロスが描いてキティの絵として売るのを続ける。絵画批評家がキティに「制作にどれくらいかかる?」と聞いたら、キティが「1日時には1年。絵は恋愛と同じでフィーリングが大事」とクロスのセリフをそのまま絵画批評家に話す演出もコミカルで上手かった

クロスの奥さんの死んだはずの元夫が生きていて、元夫は妻と会わないから金をよこせとクロスを脅すが、クロスは元夫が生きていれば奥さんと別れてキティと結婚でき渡りに船なので、元夫に家にある奥さんの元夫が死んだ時の生命保険金を盗ませるという名目で元夫を家に招き、元夫と奥さんを鉢合わせる演出がコミカルだった

奥さんと別れられて、喜んでキティのいるアトリエに行ったクロスが、キティと恋人のイチャイチャを見て、黙ってアトリエを出て行ってしまうのが悲しかった。再びアトリエに戻ったクロスが、キティから騙していた事を告げられ、欲ボケジジイとキティがクロスを罵ったので、クロスがカッとなってキティをアイスピックでメッタ刺しにするのが怖かった

凶器のアイスピックはキティの恋人が買った物で、キティの恋人の指紋もついていて、クロスが出てった後キティとケンカ別れした恋人もアトリエを出るが、クロスがキティを刺し殺してアトリエから逃げようとした時に恋人が高級車を酔っ払い運転しながら帰って来て、ドアのガラスを割って建物内に入り恋人とクロスが入れ違いになり、恋人は死んでいるキティの金や宝石を盗ろうとした事から、恋人がキティを殺したとして死刑判決が出る演出が上手かった〔全ての状況証拠や裁判の証人の証言が、恋人に不利に働く演出が上手かった)

クロスは会社に警察が来たので、キティ殺害で来たか?と思ったら、会社の金の横領ですみ、しかも社長が会社をクビにはするが刑事告訴はしないと言ってくれて軽い罪ですむ演出が上手かった

列車の中で記者の1人が言った通り、クロスはキティを殺し、その罪をキティの恋人に被せ、キティの恋人を死刑にしたが、死んだキティの幻聴に苦しみ〔独りホテルの一室で、ホテルのネオンの灯りが点滅する中で、キティの幻聴に苦しむクロスのシーン撮り口演技演出が凄かった)、ホテルの一室で首吊り自殺を試みるも助けられ〔首吊りを首吊ってぶら下がっている影で描く撮り口が良かった)、公園のベンチに寝転んで巡回中の警官に注意されるという惨めな人生を送り、最後まで殺したキティの幻聴に苦しめられて死刑になった方がまだマシという人生を送る事になるクロスの惨めさが、無茶苦茶悲惨で凄かった〔最後に絵を売った画廊の前を落ちぶれたクロスが通り、クロスが描いたキティの絵が金持ちに1万ドルで売れるが、描いたクロスには全く関係なく、画廊の前をクロスが惨めに通り過ぎるという演出を入れていたのもとても良かった)

全般的に

ストーリーがボク好みで無茶苦茶オモロかった。若い女に欲ボケジジイが騙され、それがバレて開き直った若い女が欲ボケジジイの欲ボケぶりを罵ったら、欲ボケジジイがカッとなって若い女をメッタ刺しにして殺し、その罪を騙すよう女に命令していた女の恋人に着せて女の恋人も死刑になり、これで死刑にはならないので楽になるか?と思ったら、殺した女の幻聴に悩まされ、死刑になって死んだ方がまだマシという惨めな人生を送るというラストが無茶苦茶悲惨で、悲惨過ぎて笑わざるを得ないユーモアがあり、ボクは無茶苦茶楽しかった

キャストも、名優エドワード・G・ロビンソンもとても良く、社長の愛人・ミリー・そしてキティ役のジョーン・ベネットと出てくる女優さん達がベッピン揃いなのもとても良かった

フリッツ・ラング監督の「メトロポリス」「M」「無頼の谷」「飾り窓の女」「死刑執行人もまた死す」などの作品とは違い、ボクは全く聞いた事がなかった無名の作品だが、悲惨過ぎて笑わざるを得ないユーモアが無茶苦茶楽しいフリッツ・ラング監督の知られざる大傑作とボクは感じた作品。フリッツ・ラング監督は侮れない。