「過去のない男」〔監督アキ・カウリスマキ 97分)

話の内容は、暴漢達に襲われてボコボコにされて死にかけ、記憶を無くした男が、炊き出ししている救世軍のオバちゃんと恋に落ちる話

列車の連結部分で、巻紙タバコを巻いて吸う所から始まるオープニングが良かった

深夜の公園のベンチで荷物抱えて居眠りしている所に、暴漢達が後ろから近づいて来て、主人公をボコボコにし、胸の内ポケットから財布を抜き取り、再びボコボコにして去って行く撮り口・演出が良かった〔暴漢の1人が荷物のトランクにあったラジオのスィッチを入れて音楽が流れたり、溶接のヘルメットを被ったりするのも良かった)

血まみれでフラフラ歩いている主人公の視点にカメラがなって、通行人達が血まみれの主人公に驚いて避けて通ったり、男の後ろに隠れたりするのを撮る撮り口が良かった

血まみれの主人公がトイレで倒れるのを年配の警備員が見つけて、タバコ吸いながらトランシーバーで「トイレで男が死んでる」と報告するのが良かった

心電図で死亡が確認され、看護師がシーツを顔に被せて立ち去った後、顔に包帯の主人公がムクっと起き上がって、身体につけてるコードをはがし、鏡で自分の状態を確認して、脱いだ服を着て病院を出て行く〔撮るのは脱いである服に手を伸ばすシーンまで)という撮り口が良かった

岸で倒れている主人公の靴と自分の靴を取りかえ、主人公の靴で去って行くおじいちゃんが良かった

荷物を竿で前後に並んで運ぶ小さな兄弟が、倒れている主人公を助けるのが良かった

小さな兄弟の父親が、ドラム缶に酒瓶を隠して酒飲んだり、母親が父親の吸ってるタバコをとって吸ったりするのが良かった

小さな兄弟が湯を沸かしたヤカンを持って上からシャワーのドラム缶に注ぎ、そのお湯で父親がシャワーを浴びるのが良かった

「金曜だからディナーへ行こう」と小さな兄弟の父親が主人公を誘うが、そのディナーは救世軍の炊き出しだったというのがコミカルだった

金にガメツイコンテナの警備員に、主人公がなけなしの金でコンテナの家賃や車のレンタル代を支払うのが印象に残った。ガメツイ警備員の飼ってるハンニバル〔食人鬼)と言う名の犬が、名前の怖さとは裏腹にカワイイのが良かった

穴のあいたバケツでコンテナの床に水を撒いて掃除したり、壊れていたジュークボックスを直してもらってコンテナの部屋に置いたりというのが良かった

小さな食堂のタダのお湯だけ主人公が貰い、持参したティーバッグをつけて飲んでいたら、年配の女性の従業員が「捨てるものだから」と言って廃棄する食材で作った料理をタダで食べさせてくれる優しさが良かった

救世軍の手伝いをしたり、救世軍の支給するスーツを着て仕事を探す主人公が良かった

主人公が救世軍のオバちゃんを家まで送った時に、ほっぺにチューする演出撮り口が良かった

救世軍のオバちゃんが、メイクでまつ毛を整えたり、愛する主人公の為に綺麗になろうと化粧するというのが良かった

救世軍のオバちゃんをコンテナの部屋に呼んで、主人公が料理をふるまい、ジュークボックスの音楽をかけてムードを盛り上げ、ソファーにいた犬を外へ出して2人でソファーに座り、キスをする撮り口が良かった

救世軍のバンドをコンテナに呼んで、ジュークボックスの音楽を聴かせて、もっとブルースやロックなど世俗的な曲を演奏した方が救世軍のアピールになると主人公が提案するのも良かった

救世軍のバンドの演奏と救世軍の年配のオバちゃんの歌で、聴いてる人がダンスし始め、そのダンスする人数が増えて行くという演出撮り口が良かった

夜中のコンテナの、焚き火の明かりで、救世軍のバンドが、歌詞は宗教的だけれど曲はロックな歌を、演奏して歌うのも良かった

金にガメツイ警備員からなけなしの金を払って車を借り、救世軍のオバちゃんときのこ狩りに行くが、主人公が採ってきたきのこは毒きのこという演出がコミカルだった

溶接の仕事に就く為に、主人公が銀行で給与口座を開設しに行ったら、銀行強盗に巻き込まれるというのがコミカルだった〔その銀行強盗が従業員達の未払い給料を支払う為に強盗するというのも良かったし、もともと壊れている監視カメラをライフルで撃って破壊するというのもコミカルだった)

銀行強盗にあった銀行も経営が厳しく、1人しかいない女行員も仕事がタイヘンというのが良かった〔銀行強盗に襲われても淡々としているオバちゃんの行員が味があって良かった)

銀行強盗の仲間ではないけれど、捜査や尋問に答えない主人公が警察に勾留されていると、救世軍のオバちゃんが依頼した弁護士さんがやって来て、法律や判例を熟知していて、警察の不当勾留から主人公を解放する演出がスカッとした

銀行強盗した土木作業の経営者が、主人公に未払い給料を元の社員達に渡してくれと頼んだ後、主人公が去る時に銃声が聞こえて、経営者が自殺したと暗示する撮り口が良かった。その後主人公が未払い給料を元社員達に渡していくショットも良かった

銀行強盗で主人公が新聞に載ったので、主人公の奥さんから警察に連絡が入り、主人公の過去が明らかになるのが良かった

奥さんの所に主人公が帰ったが、奥さんとは離婚していて、奥さんには恋人もいたので、主人公が奥さんとスッキリ別れて救世軍のオバちゃんのもとへ帰るという演出が良かった〔帰りの列車で、寿司と日本酒で主人公が食事していると、ボクの大好きなクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が結構長めにBGMとして流れるというのも良かった♪)

再び主人公が暴漢達と鉢合わせ、暴漢の1人がナイフを抜いたので、主人公は落ちてた木の板を拾って応戦しようとするが、どこからともなくコンテナの住人達がゾロゾロ出て来て、その住人達の多さに圧倒されて暴漢達が逃げて行くという演出撮り口が良かった

最後奥さんとスッキリ別れ、救世軍のオバちゃんの所に戻って来て、主人公と救世軍のオバちゃん2人で去って行くハッピーエンドもとても良かった〔2人で去って行く時に流れる救世軍のバンドの演奏で救世軍の年配のオバちゃんが歌う「思い出のモンレポ公園」も良かったし、2人が去った後に横切る貨物列車のシーンもシーン的に良かった)

全般的に

以前観た時は味のある歌や音楽は良く感じたが、映画としてはそれ程良さを感じなかったけれど、今回観直してみて、撮り口や演出、セリフなんかもオモロく、過去のない男と救世軍のオバちゃんとのロマンスもとても良かった

ラストもアキ・カウリスマキ監督には珍しいハッピーエンドだったので、観た後味もとても良かった

コンテナ暮らしの悲惨な暮らしも、ジュークボックスの音楽や救世軍のバンドや救世軍の年配のオバちゃんの歌♪困った時には助けてくれるコンテナ住人達などの優しさ、そして救世軍のオバちゃんとのロマンスで、そんなに悪くはないもんだとボクは感じる事が出来たアキ・カウリスマキ監督の傑作と言える作品


以下は以前観た時の感想です🎞️

この頃のボクはかなりアキ・カウリスマキ監督作品かなり低評価してますね🎞️ボクは歳をとってアキ・カウリスマキ監督作品の良さが感じられるようになったのかな?と感じました🎞️

「過去のない男」(97分。http://www.eurospace.co.jp/kako/)
「金曜日にディナーに行こう」と言って、救世軍が配っているスープを食べに行く演出が良かった。
無料のお湯だけ頼み、持参のティーパックでお茶を飲んでいると食堂のおばちゃんが残り物で料理を作って運んできてくれる演出が良かった。
工事現場で労働者達が聞くとはなしにバンドの音楽を聞いているシーンが良かった(徐々に音楽にあわせてチークダンスを踊るカップルが増えていくのも良かった)
夜中のコンテナで焚き火をしながら、バンドが音楽を演奏するシーンもいい雰囲気を出していた。
何とか車を借りる事ができてきのこ採りに行くが、男が取ったきのこが毒キノコだったという演出がちょっと面白かった
銀行で口座を開設しようとした時に、銀行強盗が銃を持って入ってくる演出(建設会社の経営者で、銀行により口座を凍結されたため社員の給料を支払えないために銀行強盗をする。)や壊れている防犯カメラを銃で撃って壊す演出が面白かった。
警察で尋問される時に救世軍が依頼した弁護士が助けてくれる演出が良かった(警察の出す法律の条文を熟知していてうまくきりかえす感じが面白かった)
全般的にコンテナ生活などひどい生活環境でもジュークボックスの音楽や救世軍のスープ、救世軍のおばちゃんとのロマンスや親切な人達の助けなどでそれなりに楽しくやっていける感じが出ていた。
しかし「浮雲」のように最後のお金をルーレットにかけてすってしまうという面白い演出が少なく、資本主義社会のエゲツナサみたいな面白さ(金に汚い警官がいたり、警察に不当に拘留されたりする所など)もあまりなかった。
バンドの演奏シーンなどがいい雰囲気を醸し出す中々面白い作品。
*クレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が流れるのも面白い。