「生きるべきか死ぬべきか」(監督エルンスト・ルビッチ 99分)

話の内容は、ナチスが占領するポーランドのワルシャワで、劇団の役者達が、一生一代の大芝居で、ナチスのスパイを殺し、無事にイギリスに脱出する話

最初の、厳格なナチスの軍人達と総統から戦車のおもちゃを貰って無邪気に喜ぶ子供とのコントラストが楽しい劇が良かった

劇の長ゼリフ「生きるべきか死ぬべきか」を夫が舞台で喋ってる途中で、妻の浮気相手が立ち上がって、楽屋の妻に会いに行くという演出がオシャレだった(ラストのオチも、前回とは違う男が長ゼリフの時に立ち上がって退出するというオチで、無茶苦茶面白いしオシャレだった)

ナントカ「スキー」というポーランドの名前の看板が次々と出てくるシーン(スキーと最後につくポーランドの名前をおかしがっている)、ナチス侵攻後にはその看板が破壊されてるシーンを撮っている所が印象に残った(最初はコミカルに出てくる看板が、後のシーンではシリアス感を与える事になり、そのコミカルとシリアスのギャップが益々戦時下の緊張感を高めるという効果を出していたから)

ナチスの攻撃で逃げ惑う人々と行進しているナチスの兵士達が迫力があった

ポーランドのレジスタンスの、ショーウィンドウを石で割ったり、Vの字のペイントしたり、Vの字の炎が燃えたりしている、ナチスへの抵抗のシーンが良かった

端役の人達が雪かきしながら「いつか主役を演じたい」と話してるのが、最後の脱出劇で命がけで成就するのが良かった

妻の浮気相手の中尉が、パラシュートでワルシャワに降下するのもシーン的に良かった

スパイがゲシュタポに接触するのを止めないといけないが、妻の浮気も気になる夫がコミカルだった

ナチスのスパイを騙して劇場に連れ込んで、そこで夫がナチスのスパイから話を聞き出す演出(夫が間をもたせる為に「「強制収容所のエハート大佐」とイギリスでは呼ばれていますか?」というセリフを繰り返す所や夫がナチスのスパイから妻の浮気の話を聞かされて怒りだした為にナチスのスパイが夫がエハート大佐ではない事を見破る所、部屋の外で銃声が鳴ったのに夫は撃たれたと勘違いして「ポーランドは永久に不滅だ」みたいなカッコつけたセリフを言う所)がコミカルだった

劇場内を逃げてるナチスのスパイが、最後は舞台上で幕が上がり、スポットライトを浴びながら倒れて死ぬシーン・演出が上手いと思った

夫が今度はナチスのスパイに変装してナチスの基地に入っていく所が、ハラハラ(基地の中に兵士達が大勢ウロウロしているシーンがハラハラ感を高める)でもあり、コミカル(本物の「強制収容所のエハート大佐」を騙す。本物のエハート大佐も「「強制収容所のエハート大佐」とイギリスでは呼ばれていますか?」と聞いてくるセリフを入れる演出やエハート大佐がなんでも部下に責任をなすりつけるキャラクターとして描かれている所)でもあり面白かった

ナチスのスパイが殺されたのがナチスに判明した後に、夫が再びナチスのスパイに変装してナチスの基地に入っていく所のやり取りが、ハラハラあり、コミカルさあり、展開の面白さありと、とても上手い演出だった(夫は奥の部屋に通されるがそこにはナチスのスパイの死体が置かれている。そこをナチスのスパイの死体のヒゲをとる事で死体のナチスのスパイの方が偽物と証明して切り抜けるが、今度は助けに来た劇団の仲間達(ナチス高官の軍服を着て基地に潜り込んで来る)が夫のつけヒゲをとって夫が偽物である事をバラしてしまう。夫はナチス高官に扮した劇団員達に連行されながら無事に基地から出るが、エハート大佐は訳が分からず混乱して又部下に責任をなすりつけようと部下の名前を大声で怒鳴る)

今度は劇団員全員でワルシャワから脱出する為、ヒットラーが来る演劇場で芝居をうち、ヒットラーと入れ替わって劇場・ワルシャワから脱出する演出が、ハラハラ(ヒットラーが来るので基地よりも兵士の数が多く、ハラハラ感がより高まる)だし、シリアスだし(売れない役者がヒットラーに訴えるポーランド人の役を命がけで熱演する)、コミカル(最後エハート大佐が部屋で妻に言い寄ろうとしている時に、ヒットラー役の劇団員が妻を呼びに現れた為に、エハート大佐が妻はヒットラーの愛人と勘違いしてビックリするという演出や飛行機を操縦するナチスの兵士達が偽物のヒットラーの命令に従順に従って、パラシュートも着けずに飛行機の出口から飛び降りる演出)だし、とてと上手いと思った

最後のオチも、再びハムレットの舞台で夫が「生きるべきか死ぬべきか」の長ゼリフを言う時に、前の中尉とは別の男が席を立って退出していくという演出で、とても上手く落ちていてとても良い終わり方だった

全般的に

以前観た時は、最初の方を面白く感じなかったが、今回観直してみて、子供が総統から戦車のおもちゃを貰う劇やヒットラーの役者がワルシャワに現れて騒然となる所も、ナチスのスパイの教授や浮気相手の中尉のワルシャワ潜入なんかも観ていて楽しかった

そして夫や劇団員達が芝居でナチスを騙していく所のストーリー展開は、ハラハラありユーモアありシリアスありで無茶苦茶面白かった

危険に巻き込まれているのに妻の浮気の事も気になる夫やいつも部下に責任をなすりつけるエハート大佐など登場人物の描写もとても良かった

観ている内にどんどん引き込まれてしまう、とても上手いし面白いスクリューボールコメディの傑作