これはボクが昔に書いた演劇の脚本です。アメリカと北朝鮮との関係が緊迫している今ブログで公開しようと思い、今回アップしました。

戯曲「エンド・オブ・バイオレンス」(仮題)

同時多発自爆テロとその後のアフガン・イラク戦争の総括。
アメリカ対アフガン・イラクという横の対立はおかしい。本当は、「自爆テロを命じたり、戦争を決定し劣化ウラン弾の雨を降らせるような酷い事を命令したお偉いさん達」と「実際にテロを行った者や戦争で戦った兵士達やテロや戦争で犠牲になった一般市民」との間の縦の対立があるだけである。本当はお互い殺しあっている兵士達や憎しみ合っている一般市民達は連帯して酷い事を命令するお偉いさん達を倒すべきなのではないかというのが今回のテロや戦争を観て考えてだしたボクの結論です。

登場人物 
アブラハム(I国テロリスト)・・・テロを実行したり、家族を殺されて戦争に参加したり
する
トム(A国軍軍人)・・・金につられて戦争に参戦する。
ボブ(A国軍軍人)・・・・若い。トムの戦友
マイク(A国軍軍人)・・・・・妻子持ち。トムの戦友
アリババ(I国テロ首謀者)・・・株の空売りで大もうけしようとテロを企てる。戦争に  
                発展するが、ジョンソンと和平協定を結び戦争を終わ
                らせる
ジョンソン(A国大統領)・・・テロ首謀者の儲けとI国の天然資源を狙いI国に対し宣戦
布告するが、戦争が長引き、経済的な損失と世論の反対の為アリババと和平協定を結び戦争を終わらせる

あらすじ

I国のアリババは、A国の世界金融センター爆破と株の空売りで金儲けをたくらむ。
アリババに説得されたアブラハムは純粋に「国の為に」テロを実行する
A国の大統領ジョンソンはこのテロをきっかけに、アリババの儲けとI国の天然資源の利益を狙いI国に宣戦布告し、劣化ウラン弾の雨をI国に降らせる
A国のトムは、最初戦争には乗り気ではなかったが、危険手当1日3万ゼニーという金にひかれて、志願兵としてI国におもむく
アリババは劣化ウラン弾の雨をみて国外逃亡を企てる
アブラハムは劣化ウラン弾の雨の為家族や仲間を皆殺しにされ、A国に対し徹底抗戦する決意を固める
トムはアブラハム達の徹底抗戦にあい、軍の仲間達が次々死んでいく中でI国に対する憎悪を強めていく
トムとアブラハムが対決。相打ちとなって二人とも死ぬ。
A国大統領ジョンソンは思ったよりI国に天然資源が少ない事、徹底抗戦の為に死者が多数でて戦争反対の世論が高まった為に、アリババに儲けの半分を渡す事を条件に、アリババに和平交渉をもちかける
死んだ後トムとアブラハムは「なぜ戦争が起こったかについて考察し、お互いの指導者におどらされていたことに気づき反省する」
豪華な食事や大勢の報道陣の中、和平交渉が始まる。そこに亡霊のトムやアブラハム達がアリババやジョンソン達に復讐にやってくるが、肉体がない為物理的な復讐ができず、その間に和平交渉は締結され、それを祝してパーティーが開かれる。
トムやアブラハムは嘆きながら、無駄な復讐を続ける。



本編

シーン1 アリババの部屋。アリババがいる部屋に労働者1が給料をもらいにくる

労働者1「失礼します。給料をいただきにきました」
アリババ「そうか。たしか全部で12万ゼニーだったな。ほら。受け取れ」
労働者1は給料袋からお金をだして数える
労働者1「はい確かに頂きました。ところでアリババ様ちょっとお願いがあるので
すが・・・」
アリババ「何だ。まだいたのか。わしの方には用事はない。とっとと出て行け」
労働者1「そんな事言わないで聞いて下さい。私も長年アリババ様の下で働いてきま
した。それなのに給料はいっこうに12万ゼニーのままあがる気配はない。」
アリババ「もっと頑張って働けば、もっとよい給料をはらうぞ」
労働者1「これでも私なりに精一杯頑張っていますが」
アリババ「もっと頑張れ」
労働者1「休みも少なく、拘束時間も長いのに文句も言わず頑張っているではないです
か。今日こそは賃金アップをしてもらいます」
アリババ「うるさい。私はそんな事にかまっていられない。仕事があるだけマシだと思え。
     さぁ金を受け取ったらとっととこの部屋からでていけ」
労働者1「いえ賃金をアップしてもらうまで梃子でも動きません」
アリババ「そうか。なら力づくで排除するだけだ」
アリババ屈強な男二人を呼んで労働者1を部屋から追い出す
アリババ「全く。くだらない事で時間をとらせやがって。第一労働者を安い給料で働かせ
た所で利益なんてたかが知れている。何せ労働者なんてたいして働きゃしね
ぇからな。労働者を働かせる設備には莫大な金もかかるし。あぁなんかいい金儲けの方法はないかな。うん。いいアイデアを思いついたぞ。テロと株の空売りで大儲けというのはどうだ。つまりはこうだ。まず後で返す約束でテロの対象となる企業の株式をできるだけ大量に借り受けすぐに売却する。次にテロを実行し、テロの対象となった企業の株価を著しく下落させる。最後に下落した株を買い戻し、株を借りていた人に返す。これにより最初に借りた時の株の価格とテロ直後の暴落した株の価格の差額を利益としてうけとるというものだ。これはいいぞ。安い労働者をちんたら働かせるより一気に金儲けができるし利益もでかい。よしこのアイデアを実行に移そう。まずはテロを実行する者をさがさねば」
     アリババ電話をとる
アリババ「もしもし。アリババだがアブラハムか。至急きてくれ」
アブラハムがすぐにアリババの部屋に来る
アブラハム「お呼びですか。アリババ様」
アリババ「良く来たな。アブラハム。まぁ座れ」
アブラハム席に座る
アリババ「アブラハム。お前は正義感が強く、正直者で有名らしいな」
アブラハム「いえいえ。そんなことは」
アリババ「そこでお前に聞きたいことがある」
アブラハム「何でしょう」
アリババ「この国は貧しいか?」
アブラハム「はい」
アリババ「そう。この国は貧しい。どうして貧しいか分かるか」
アブラハム「はい。アリババ様のような方達が労働者にまともな給料を支払わないからで
す」
アリババ「今はそんな事はどうでも良い。この国が貧しいのはA国のような先進国が
わが国をくいものにしているからだ。」
アブラハム「そうでしょうか・・・」
アリババ「そうだ。この国ではいまだ飢えに苦しんでいる人々が多いのに、A国のような先
進諸国ではブクブクと肥え太る者や食い過ぎの為ダイエットまでする者が大勢
いるほど世界中から食物を集め、多くを食べきれずに生ゴミとして捨てている」
アブラハム「はぁ」
アリババ「他にも、先進諸国は世界中から天然資源をかき集めて経済を発展させる一方大
量の公害を出し地球全体の環境を悪化させている」
アブラハム「はぁ。でもアリババ様達も同じような事をしていますが・・・。」
アリババ「とにかく。先進国はひどい。そこでお前に頼みがある」
アブラハム「なんでしょう。」
アリババ「先進国に一泡吹かせる為に、A国の世界金融センタービルを爆破してもらいた
     いのだ」
アブラハム「ビルを爆破ですって。そんな事をしたら大勢の人達が死んでしまいます。私
には無理です」
アリババ「何を言う。A国の人間などみな悪魔のようにひどい連中ばかりだ。もし奴等を
殺さないとこの国はずっと貧乏国のままだ。この国の人々の幸せのために是非
ともお前に世界金融センタービルを爆破してもらいたい」
アブラハム「本当にこの国のためになるのでしょうか。この国が貧しさから解消されるな
      ら、私は喜んでその任務を致しましょう」
アリババ「頼むぞ。アブラハム。この国の為に。貧困をなくす為に。」
アブラハム「では失礼致します。さっそくこの計画を実行してきます」
アブラハムはアリババの部屋を出て行く
アリババ「しめしめ。どうやら計画はうまくいきそうだ。次は全財産をかけてA国の世界
金融センタービルに入っている企業の株を借り受けねば。さぁ忙しくなって
きたぞ」
アリババ電話をかけようとする所でフェードアウト     
爆発音とともに、テロを実行したという事を大画面の世界貿易センター爆破の映像で示す
シーン2 ジョンソンの部屋
ジョンソン「エライ事になったぞ。まさか世界金融センターが倒壊するなんて。経済の混乱は避けられない。やったのは誰だ。こんなテロ行為は絶対許せない。テロを起こしたのはI国のアリババか。ちょうどいい。I国は天然資源が豊富な国だ。アリババ打倒を口実にI国の天然資源の利益を手に入れるためI国に宣戦布告するか」

シーン3 トムの部屋。小さなTV画面をくいいるように見ている。
トムTVをみながらセリフ
トム「すごいなぁ。こんな事がA国で起こるなんて。信じられないよ。でも世界金融セン
ターが爆破されても俺にはあまり関係ないかな。金融センターで働くようなエリー
ト銀行員に知り合いはいねえし。預金もほとんどしてねえからな」
そこに軍隊へ勧誘する電話がかかってくる
軍「君はトム君だね。どうだ今度I国と戦争することになったのだが君も兵士として志願し
ないか」
トム「いえ。今回のテロ攻撃は私にはあまり関係がなかったですから。」
軍「何を言っている。今回は世界金融センタービルだったが、テロは今度は君の家族を襲
うかもしれないんだぞ。それでも君は関係がないというのか」
トム「確かに自分の家族がテロの犠牲になったら、私も志願したかもしれないです。しか
   し今回は自分とはあまり関係のない世界だし、いくらテロを起こしたからって人を
   殺すのは良くないことだし・・・。それに自分の命も大事だし・・・。」
軍「そうか。それでは仕方がない。惜しいなぁ。もしI国に兵隊としていけば通常の給料の
他に一日3万ゼニーの危険手当がでたのに・・・」
トム「それをはやく言って下さい。お国のために頑張って働きます」

大統領の演説
「邪悪で卑劣な攻撃により数千人の命が失われ、わが国は深い悲しみに覆われている。国は混とんの状態と言える。今日、我々は悪の正体を見た。…… 」(ブッシュの演説参照)。途中から背後に劣化ウラン弾を雨のように降らせる映像。

シーン4 アリババの部屋
爆音が響く中で。
アリババ「困った事になったぞ。こうもはやくA国が攻撃を仕掛けてくるとは・・・。しかし私は大丈夫。何せ空売りで儲けた莫大な財産があるからな。とっととこの国から逃げ出して外国でほとぼりが冷めるまでのんびりくらそう。金がある者はどの国に行ってもハッピーでいられる。資本主義のグローバリゼーション万々歳だ。」
アリババとっとと逃亡する。

シーン5 アブラハムがI国に帰ってくる。瓦礫の街中で呆然とする。
アブラハム「何ということだ。テロから帰ってきたら街はボロボロ。民間人の女・子供の死体までゴロゴロしている。確かに私はテロでA国の人間をたくさん殺した。その報復がこれか・・」
アブラハム瓦礫の中に娘の遺体を発見する。
アブラハム「おー娘よ。なんという事だ」
アブラハム瓦礫の中に妻の遺体を発見する。
アブラハム「おー妻までがこんな事に」
アブラハム「こっちには父・こっちには母。こっちには弟。いとこに、はとこに、向かい三軒、両隣、町内のほとんどの人達が・・・・・・。何ということをするんだ。A国の人間はホントに悪魔だ。俺は絶対許さない。死ぬまで徹底抗戦してやる」

シーン6 ジョンソン大統領演説
ジョンソン「現在敵は空爆でほぼ壊滅状態だ。さらに「砂漠の砂嵐作戦」で地上軍を動員して、テロを起こした悪の枢軸を根絶やしにしてやる」
フラッシュがたかれ、歓声が沸き起こる。
 
シーン7 I国の砂漠地帯の塹壕 トムと仲間の兵隊が2人塹壕に隠れている(マイクは子供が生まれそう。ボブはまだ子供)
トム「いつのまにか危険手当につられてこんな砂漠の国に来ちまったな。」
ボブ「ボクはこれでようやく仕事にありつけましたよ。テロで犠牲になった人達の為にもA国の為にも頑張って戦います」
マイク「俺もこれでお腹の大きな彼女と結婚する資金が稼げるよ」
トム「へぇ。マイクは子供ができるのか?名前は決めたのか?」
マイク「まだだよ。でもみてくれる。ここに来る前にとった胎児の写真があるんだ」
トム「どれどれ。へぇーこれが胎児か?男・女どっちだ」
マイク「もちろん。お・・・」マイク撃たれて死ぬ。
トム「おい。大丈夫かマイク。おい。おい。しっかりしろ。なんてこった。おいマイク。
しっかりしろ。せっかく子供ができたのに・・・。おい」
ボブ「ちくしょー。ふざけやがって。」ボブ塹壕から抜け出るがすぐに撃たれて倒れる。
倒れたボブをトムは塹壕にひきずりこむ。
トム「おい。しっかりしろボブ。おいボブ」
ボブ「腹が焼けるように熱い・・・・。」
トム「しっかりしろ。今手当てしてやるから」
ボブ「いてぇー。苦しい。のどが渇く。目がかすむ・・・・。いやだ。死にたくない。助けて。助けて下さいトムさん。(もがき苦しみのたうつ感じ)」
トム「分った。落ち着け。傷口が広がる」
ボブ「いやだぁー。死にたくないよー。かぁさん」ボブ身体が崩れ落ちて死ぬ。
トム「おい。ボブ。なんてこった。こんな若造までが。こりゃ危険手当ぐらいじゃ割りにあわねぇぜ。」
突撃の声がかかる。
トムとアブラハムの両方がお互い走ってきて中央で激突。相打ちで死ぬ。

天国
天国でトムとアブラハム二人がでくわす。
アブラハム「A国の人間は悪魔だ」
トム「何を。お前達こそ戦友を殺しやがって。マイクには子供が生まれてくるんだぞ。ボブはまだケツの青いガキだったし。貴様らの方こそ悪魔じゃないか」
アブラハム「フザケルナ。こっちはカワイイ娘や愛する妻。肉親や隣人が殺されてるんだ。」
トム「第一テロなんて起こすから悪いんじゃないか」
アブラハム「俺だってテロなんか起こしたくなかった」
トム「俺達だって好き好んで戦争していたわけじゃねぇ」
アブラハム「どういう事だ。俺はI国が貧しさから抜け出すためにテロを行った」
トム「俺は3万ゼニーの危険当てと仕事目当てに戦争に参加しただけだ」
アブラハム「そもそも私達はナゼ憎しみ合っているのか?」
トム「それは現場でたくさんの血が流れたからさ。現場で血が流される度に現場の人間の互いの憎しみが増幅していくのさ」
アブラハム「本当に憎まなければならないのは誰なのか?」
トム「それはあれだな。こんなテロや戦争を始めようとした奴らだよ」
アブラハム「自爆テロを実行するよう俺達に命じた奴や劣化ウラン弾の雨を降らせるように命じた奴らか」
トム「そうそう。自分達は安全な場所にいて、俺達の殺し合い・憎しみ合いの高みの見物をしている奴等だよ。」
アブラハム「俺達は本当は憎しみ合うより協力して、その高みの見物をしている奴らこそやっつけなければならなかったんじゃないか?」
トム「そうだな。A国対I国という横の対立の図式は間違ってる。本当はテロや戦争を命じたA国I国のお偉いさん達とテロや戦争の犠牲者となったA国I国の一般市民との縦の対立があるだけだ」
アブラハム「これから一緒に復讐にいかないか?テロや戦争を引き起こしたジョンソンやアリババをやっつけに」
トム「いいぜ。一緒に行こう」
アブラハムとトムはがっちり握手をする。

和平協定のパーティ
沢山の報道陣が集まる中、アリババとジョンソンは笑顔でがっちり握手。
大晩餐会が繰り広げられる中、アブラハムとトムの亡霊がやってくる。
アブラハムとトムはアリババやジョンソンを殴ったり蹴ったりするが、亡霊は物理的な肉体がないので全てすり抜けてしまう。
アブラハムとトムは舞台前に出てきて最後のセリフ
「死んでからでは遅すぎる」
と言いながら嘆き崩れる
後ろでは豪華な晩餐会が何事もなかったように続けられる
終幕

「本当に平気で人を殺す空爆を命令したり、核攻撃を命令したりするようなボケトランプ、バカアサド、外道金正恩のようなお偉いさん達にははやく死んで貰いたい」心にそう願う世界平和を祈念長七郎であった。