「ポンヌフの恋人」(監督:レオス・カラックス。約130分 http://leoscarax.com/)
オープニングで男と女が一緒にギアをトップに入れ、アレックスの足を車で引く演出が面白かった。
ルンペン達を乗せたバスの中や収容所の猥雑な雰囲気が良かった。
立ち入り禁止の看板があるポンヌフ橋に金網によじ登りながら侵入する演出が良かった。
市場で鯛をシャツの中に入れて(シャツからはみ出している)盗む演出(通行人も振り返ってみている)が良かった。
炎を吐くパフォーマンスシーンが印象に残った。
弦楽器の音色を聴いて動く歩道を女が逆走するシーンが印象に残った(*女をつけていたアレックスが必死で走って先回りしてナイフをつきつけて音楽家を立ち退かせる演出も良かった)。
酒ビンを二人でラッパのみして仰向けになって酔っ払って笑っている演出が良かった。
花火が打ちあがる中、拳銃を取り出し7発ずつ撃つシーン(男は橋を歩きながら、女は銅像の馬に跨りながら発砲する)が良かった。
花火が打ちあがる中、ポンヌフ橋でダンスを踊るシーンが良かった。
居眠りしている兜を被ったおっちゃんに兜をとりヘッドバットをくらわせて(酒ビンで叩こうとするがすっぽ抜けてしまう)気絶させた後、ボートを盗んで水上スキーをするシーンが綺麗だった。
拳銃を川へ捨てる代わりに靴を投げて女をだます演出が良かった。
「空は白」「でも雲は黒」という暗号で愛を受け入れるという演出が良かった。
睡眠薬で眠らせて金を盗むという演出が良かった(眠っているシーンと睡眠薬の箱を開けるシーンを交互に撮る)。
金を貯めて海に行くシーン(浜辺を走ったり、砂浜に足跡を残しながら帰るシーン等)が良かった。
「眠る事を教えられて誇らしいわ」と女が言って寝入った後に、睡眠薬を飲むためアレックスが箱を開ける所を「パコッ」という音で表現する演出が良かった。
女が金の入った箱を落とすようにアレックスが箱を体操している女の近くに置く演出が面白かった(*箱は女の手にあたって川に落ちる)。
「目が見えにくくなるから何でも大げさにやって」と女が頼むとアレックスが側転したり地下鉄の壁を蹴ってばく転したりする所が面白かった。
尋ね人のポスターを破り捨てるが、次の通路には何枚も尋ね人ポスターが貼られていて、ガソリンをかけてそれを全部燃やす演出が良かった(*町中にもポスターが貼られていて、貼っている車を追いかけ、後ろの荷台に積んでいるポスターにガソリンをかけて燃やすと車が炎上しその火がポスター貼りの人に燃え移って焼死してしまうという演出が凄かった。そうまでして女に目が治ることを知らせまいとしたのに、ラジオから目が治ることを女が聴いてしまう演出も良かった)。
目が治ると知って女がアレックスの飲む酒ビンに睡眠薬を入れて、アレックスが眠っている隙に逃げ出す演出が面白かった(*「あなたの事を愛していなかった」という書置きを残して去っていく演出が面白かった。それを見てアレックスが拳銃で指を吹き飛ばす演出は重かった)。
刑務所での面会の時、隣の面会室で黒人の夫婦がキスをしてその子供がキスをしている夫婦に背を向けて目を手で隠してキスをみないようにしているショットがコミカルだった。
雪の降るポンヌフ橋に二人で抱き合いながら座っているシーンが印象に残った。
最後二人で橋から飛び降り川に入って、通った船に乗ってパリを出て行くというラストのシーンも良かった(*船の先端まで走っていき、女が「目覚めよパリ」(映画館で観たら「まどろめパリ」になっていたが、「目覚めよパリ」の方がボク的にはいいと思うので訂正しない)と言う所)。
全般的にルンペンでも楽しくやれる感じ(睡眠薬を使って盗みをしたり、水上スキーをしたりする所など)だけでなく、ルンペンの厳しい生活の感じ(酒を飲まないとやってられない感じや自分を割れた酒瓶で傷つけたり、拳銃で指を吹っ飛ばしたりする所等)も上手く出していた。
ラストの船でパリから出て行くシーンも「希望がある」雰囲気がよくでていて見終わった感じも良い。
面白い演出を随所に散りばめ、シーン的にも見応えがある最後までとても楽しめる傑作だった。
PS 2011年1月にリヴァイバル上映で映画館の大スクリーンで観た感想。
映画館の大画面で観ると、アレックスが火を吹くパフォーマンスや花火が打ちあがる中踊るダンスシーンや水上スキーシーンは迫力がありとてもいいシーンになっていたのが印象に残った。
収容所に収容されるルンペン達のシーン(バスでの移動も含む)を結構長い時間撮っていたのが印象に残った。
「いつルンペンに転落するか分らないという不安がボクにはある。だから「ポンヌフの恋人」はついつい主人公に自分を投影して観てしまう。」心にそう願うポンヌフというよりポンコツな長七郎であった。