「なぜ私は他の人と違うの……?何が違うの……?この緋眼のせい……?」

「……ナミ……ナナミ!おい!」
呼びかける声にハッと我にかえるナナミ。
「ごめん、ちょっと考えごとしてて……」
「はあ?どうせいつもみたいにボーッとしてたんだろ?」
「違うもん!私だって考え事くらいするもん!」
「どーだかな……ほら、さっさと行くぞ!」
同じ弓使いのリクシャに連れられ、怪物の森にナナミは来ていた。ソフィアの合成屋のクエスト依頼で薬品素材を集めるため、この森の魔物を狩りに来たのだ。
「同じ弓使いの俺とクエストに出てるようじゃ、いつまでたっても弓使いとしては半人前だぜ?わかってんのか、ナナミ!」
リクシャのその言葉にナナミは無言の返答である。
(そんなことは私が1番わかってる!努力だってしてる!私だってお荷物になりたくない!)
ナナミの心の声は届くわけないのだが、リクシャも鬼ではない、彼なりにナナミを早く一人前の弓使いとしてやりたいというだけなのだ。普通、弓使いはパーティひとつに対して1名で編成する。だから2名以上で連れだって行くことは少ないのだ。半人前の弓使いがいる場合を除いて……
ナナミはリクシャの後を黙ってついて行く……

予定の場所に到着すると、視界に複数の魔物を捉えた。リクシャとナナミは、ほぼ同時に
「アローレイン!」
わずかな間に計12発の矢が魔物に降り注ぎ、あっという間に魔物たちは倒れた。しかし、ナナミは顔をしかめる。アローレインは複数の矢を上方から降り注がせ、複数の魔物に攻撃する弓術である。リクシャほどの腕になると、1度に9本を放つ。つまり、ナナミは3本ということになる……が、問題はそこではない。当たっていないのだ!
(なんで!なんで1本しか!)
自己嫌悪……そして、それは緋眼に向く……
(この眼のせいだ!この眼のせいで普通のことすらできないんだ!)
そんなナナミの苦しみは誰にも知られることなく、わかる者もいなかった。この世界での緋眼は稀なのだ。稀であるということには2つの意味がある、希少と異端だ。ナナミは後者の人間として見られた。だから、ナナミは人との関わりを極力避けてきた。でも、冒険者は人との関わりなしにできるものではない。リクシャはナナミの数少ない冒険者仲間なのだ。
そうこうしているうちに、狩りも進み、必要な素材も集まった。そろそろソフィアに戻るため、リクシャに確認しようとした瞬間……目の前の岩壁が崩れ落ちた!
違う!崩れ落ちたのではない!何かいる!その証拠にリクシャは弓使いの奥義とも言うべきクロスファイアの構えを取っている。当然、ナナミもである。しかし、その構えを無視するかのごとく、割れた岩壁の奥から巨大な影が現れ、2人の目の前に立ちはだかる。
「バカな!こんなとこになぜタイタンが!」
リクシャの明らかな動揺の声。当然だ。クリュスタイタン……巨人族の魔物で本来はもっと北に棲息する大型の魔物なのだ。しかも、外殻は硬く、矢は通りにくい。つまりは弓使いの天敵なのだ。
「クロスファイア!」
2人とも、初撃に勝負をかけた。クロスファイアは、その名の通り、2つのクロスファイアを同時に当てることで威力を上げることができる。が、次の瞬間、タイタンの巨体は宙に舞っていた。クロスファイアは直線的な技のため、なすすべも無く通り過ぎていった。
「そんな……」
ナナミの心底絶句に近い声。クロスファイアは威力こそ高いが、その威力の高さと引き換えに連発性能がない。タイタンの外殻を突き抜く技がもうない!
「ナナミ、撤退しろ、俺が時間を稼ぐ!」
「リクシャだめ!」
(まただ……また私は誰の役にも立てない……誰も助けられない……目の前で仲間が死ぬのはもう見たくないのに!)
「死なせない、もう絶対死なせないんだから!」
タイタンをその緋眼でにらんだその時、
『あなたの眼は守るためにあるのよ、さあ、その眼に向き合いなさい』
ナナミの頭に直接響く声、そして次の瞬間、その緋眼は光を受けたルビーのように輝きだす。
「えっ、こ、れは……」
『あなたの矢は数打つものじゃないの。私、火の精霊は一撃必中なのよ。さあ、打ちなさい。彼を守りたいのでしょう?』
脳裏にイメージがハッキリと浮かんでくる!その技も!タイタンの次の動きも!
1本の矢をつがえると、その矢すらも赤く輝きだした!それを天に向け彼女は叫ぶ!
「サテライトアロー!」
一筋の閃光は空へ上がったかと思うと、リクシャを潰さんと踏みかかるタイタンの頭上から一閃、地面にまで突き刺さる槍となった。まっぷたつに裂けるタイタン……
「ナナミ、お前、それ……」
サテライトアロー……弓使いの間ではもはや伝説となる技。硬い魔物の外殻すら突き破る弓術の奥義。しかし、これを扱えるのは精纏衣者だけなのだ。そう、ナナミの緋眼は、火の精霊使いの証だったのだ。
「私にこんな力が……」
当然、最も驚いているのはナナミ本人である。
「ナナミ、お前精霊使いだったのか!」
「私も今知ったの……」
「良かったな!その緋眼、好きになれるんじゃねえの?」
リクシャのその言葉にナナミはゆっくりとうなづいた。これからは仲間を守る。ルビーのような輝きをし始めたその眼には強い、強い意志と希望があった。

彼女が「緋眼の射手」と呼ばれ、at home四柱の1人となるのは、この1年後のおはなし……

※この物語は全てフィクションです。場所名や人物名は、同名なだけであり、トーラムオンライン内の実際のプレイヤーとは設定が異なります。