筒井康隆の同名小説を、「桐島、部活やめるってよ」「騙し絵の牙」の吉田大八監督が映画化。穏やかな生活を送っていた独居老人の主人公の前に、ある日「敵」が現れる物語を、モノクロの映像で描いた。

大学教授の職をリタイアし、妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋にひとり暮らす、渡辺儀助77歳。毎朝決まった時間に起床し、料理は自分でつくり、衣類や使う文房具一つに至るまでを丹念に扱う。時には気の置けないわずかな友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーも振る舞う。この生活スタイルで預貯金があと何年持つかを計算しながら、日常は平和に過ぎていった。そんな穏やかな時間を過ごす儀助だったが、ある日、書斎のパソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。

主人公の儀助役を12年ぶりの映画主演になる長塚京三が演じるほか、教え子役を瀧内公美、亡くなった妻役を黒沢あすか、バーで出会った大学生役を河合優実がそれぞれ演じ、松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩らが脇を固める。2024年・第37回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀監督賞(吉田大八)、最優秀男優賞(長塚京三)の3冠に輝いた。

2023年製作/108分/G/日本                映画.comより転載

 

 

悪夢劇場という感じだけれどかなりシリアス

前半、上品な元大学教授の端正な日常が語られる、食にこだわり、好きなものに囲まれ、豊かで、でもストイックな生活。

そう見えた・・・・元大学(フランス文学部)教授、ロマンスグレーとは言えない高齢だが、ファッションにもこだわりがあるように見える、さりげなく自分を演出している。

これは長身痩躯、ソルボンヌ大卒業という洗練された雰囲気の長塚京三さんあっての映画かな。

夢か現実か妄想か、というお話で、映画はシリアスに傾いているが、原作はたぶんテイストが違うのだろうと思う。

 

夏から秋、そして冬・・・・そして春を迎えるはずだった。

丁寧な日常が語られ、徐々に彼の生活に侵入者が現れる、その侵入者によって取り繕った元大学教授=儀助の隠された欲望が露になっていく。

序盤からかなり気になったのは”お金”の問題だ、連載の原稿料もわずかながら入ってくる、趣味に合った暮らしをしているが派手な生活ぶりではない、大学教授を定年退職した人の年金額はかなり高額のはず、預貯金があと何年持つか計算しながら暮らすという状況にはならないはずと、疑問を感じるのだけれど、まあ横に置いておこう。

 

夏・・・端正な日常、徐々に狂いだしてくる、現実と夢、大体夢というのは現実とかけ離れているわけではない、潜在意識下にあるものが現れてくる・・・金縛りに遭った悪夢という感じ・・モワモワモワ・・

秋・・・徐々に夢と現実の境目がなくなって、より煩悩に支配されていく、”色欲”、滑稽と言えばこの滑稽さが重要なところだと思うが・・

 

 

 

冬・・・崩壊の予兆が・・夢と妄想の区別がどこで?

 

こういう映画、好きなんです。

人間というのは枯れるということはないのだろう、最後の最後まで欲望に支配される、最後に残るのは何だろう、見苦しい自己愛をさらけ出すのは滑稽だがそれが人なのだとも思う。

最後のシーンは現実か妄想か、美化された過去(認知症の認識?)に戻ったような気がした。

演出の妙かキャスティングの妙か!

 

老人キラー、河合優実の魅力半端ないです。

 

追記

映画とは関係ない・・・とは言えなくもない。

今年に入ってからフープピアスが欲しくて、でも決心がつかず、鑑賞後、なぜか?ではない、よし買うぞと買った!!!

直径3cm、プラチナの環っか。

欲望を抑えすぎるとろくなことはないとは、映画を観て思ったし(笑)

迷惑をかけなければ好きなことをしてよい年齢なんだよね。

今読んでいる本は貸してくれる人があって、なぜ?「恍惚の人」なのよね~💦