「さがす」「岬の兄妹」の片山慎三が監督・脚本を手がけ、漫画家・つげ義春の同名短編を独創性あふれるラブストーリーとして映画化。ほぼ全編台湾でロケを敢行し、2人の男と1人の女の切なくも激しい性愛と情愛を描き出す。
貧しい北町に住む売れない漫画家の義男は、アパート経営のほかに怪しい商売をしている大家の尾弥次から、自称小説家の伊守とともに引っ越しの手伝いに駆り出される。そこで離婚したばかりの福子と出会った義男は艶めかしい魅力をたたえた彼女にひかれるが、彼女にはすでに恋人がいる様子。伊守は自作の小説を掲載するため、裕福な南町で流行っているPR誌を真似て北町のPR誌を企画し、義男がその広告営業を手伝うことに。やがて福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、3人の奇妙な共同生活が始まる。
義男を成田凌、福子を中村映里子、伊守を森田剛が演じた。「ドライブ・マイ・カー」の脚本家でドラマ「ガンニバル」でも片山監督と組んだ大江崇允が脚本協力。2024年・第37回東京国際映画祭コンペティション部門出品。
2024年製作/132分/R15+/日本・台湾合作 映画.comより転載
「胡蝶の夢」、夢と現実の境界
ストーリーはあるにはある、しかしそれがメインストーリーか?と思っているといつの間にか迷路に入り込むが、それが不自然かと言えばそうではない。
不自然だと思う人向けの映画ではなく、こういう映画だと映像世界に身を任せられる人向けの映画だと思う、それでも後半、あっ、そうなのかと思うところはあるが、実はそれも定かではない。
約50年前に発表されたつげ義春の短編漫画4作を基に書かれた脚本のようだ。
日本、中国、台湾をめぐる終戦間近のころの台湾を舞台にした映画?そのあたりもはっきりとはわかりません。
二人の男と一人の女の交情(欲情?)が描かれている、ラブストーリーとはちょっと違う。
戦闘シーン、非現実的に荒唐無稽なシーン、戦時の胡散臭さ、そして濃密な性のシーン。
エロスとタナトスの映画、迷路に嵌るというわけでもなく唐突にシーンが切り替わる、それも魅力で没頭できるのです、感動できるというようなものではないけれど酔わせる魅力がありました。
キャストが魅力的で、戦時という設定に嵌った森田剛、実は中国人?という設定の中村恵里子のスレンダーな肢体はマギー・チャンに似ていてけだるさを感じさせるのが良い、そして主演の成田凌がものすごく魅力的、三十歳を超えると俳優の魅力の真価が出てくる、特に成田さんが好みというわけではなかったが、脱皮したという感じがした。
ネタバレ
人が死にゆくとき、人生での記憶の数々とそれに関連する妄想が走馬灯のように脳内に浮かび上がるという(何とかいうホルモンの作用らしい)、その断片を描き出した映画、というように思った。