幼い頃に自分と母を捨てた父が事件を起こして警察に捕まった。知らせを受けて久しぶりに父である陽二のもとを訪ねることになった卓(たかし)は、認知症で別人のように変わり果てた父と再会する。さらに、卓にとっては義母になる、父の再婚相手である直美が行方をくらましていた。一体、彼らに何があったのか。卓は、父と義母の生活を調べ始める。父の家に残されていた大量の手紙やメモ、そして父を知る人たちから聞く話を通して、卓は次第に父の人生をたどっていくことになるが……。
主人公・卓を森山未來が演じ、父・陽二役は「コンプリシティ 優しい共犯」でも近浦監督とタッグを組んだ藤竜也が務めた。卓の理解者となる妻の夕希役は真木よう子、行方知れずの義母・直美役は原日出子。第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門で藤竜也がシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞。第67回サンフランシスコ国際映画祭では最高賞のグローバル・ビジョンアワードを受賞。
2023年製作/133分/G/日本 映画.comより転載
藤竜也さんの演技が海外での評価も高く話題になっている、確かに、演技臭がなくとても自然で、これは評価されるのがが当然と思います。
ただ、映画そのものが評価されての演技なので、映画の質もとても高いです、構成が邦画の枠を超えているというところあります。
認知症の闇というか、そういうものをテーマにした映画ではなく、20年前と言えば主人公が思春期の頃?、父が母と自分を捨て若かったころの恋人との生活を選んだ、父は傲慢で身勝手な人物だ、今その精神は崩壊し妄想の世界をさまよっている。
たぶん主人公の中には父への憧憬があった、父に認めてもらいたいという気持ちもあった、現在は立場が逆転しても尚父として受け入れられるか、許せるか、というのが主なテーマだと思う。
主人公は舞台役者だ、冒頭に稽古シーンが映され、ラストシーンも同じだ、台詞があるのだけれどその意味はよく分からなかった、でもわからないなりに何を表現しようとしているのかはわかる。
構成が複雑で時系が行ったり来たりで混乱する、しかも認知症の父の行動や、それから来る事件、それらが事実か妄想かはっきりしない。
序盤父の家への特殊部隊突入などは妄想だろう、また、父が妻の妹に暴行を加えけがをさせたというのも、父が妻とその妹の区別がつかなくなっていたのでは?と想像した。
行方不明になっている義母と父のかつての生活の描写で、父の精神の荒廃が進んでいくのが見える、父自身もそれを分かって恐れていた、どれもが混然と描かれる。
それらがわからなくても最後には、あれは・・・とわかるようになっている、巧いと思わせない巧さがある。
藤竜也さんの演技を超えた演技が素晴らしいのだけれど、それを受ける森山未來さんの演技もまた良いのです。
こういう内容の映画にもかかわらず映像もとても美しかった。