「SR サイタマノラッパー」「AI崩壊」の入江悠が監督・脚本を手がけ、ある少女の人生をつづった2020年6月の新聞記事に着想を得て撮りあげた人間ドラマ。

売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、ホステスの母親と足の悪い祖母と3人で暮らしている。子どもの頃から酔った母親に殴られて育った彼女は、小学4年生から不登校となり、12歳の時に母親の紹介で初めて体を売った。人情味あふれる刑事・多々羅との出会いをきっかけに更生の道を歩み出した杏は、多々羅や彼の友人であるジャーナリスト・桐野の助けを借りながら、新たな仕事や住まいを探し始める。しかし突然のコロナ禍によって3人はすれ違い、それぞれが孤独と不安に直面していく。

「少女は卒業しない」の河合優実が杏役で主演を務め、杏を救おうとする型破りな刑事・多々羅を佐藤二朗、正義感と友情に揺れるジャーナリスト・桐野を稲垣吾郎が演じた。

2024年製作/113分/PG12/日本            映画.comより転載

 

 

河合優美の熱演に尽きる

河合優美さん、かなり体重を絞り別人のように見えます、体を張った演技が素晴らしく、一皮むけた感あり。

社会の底辺で蠢く人々の中で生まれその世界しか知らない、そこから逃れる機会を得るも再び沈んでいく救いようのないお話ですが、一つ一つのエピソードの説得力が甘く唐突な展開に、え?と思うことも多い残念な部分も目につきました。

 

売春と薬ですでに闇落ちしている主人公、あるんでしょうねこういうこと、絵空事ではない切実なところあります、小さなころから映画のような環境で育ってきたらこの世界でしか生きていけないようになるというのはわかります。

ただ、え?この設定でいいの?と思うところも多々あって。

例えば彼女の母の人物設定、暴力で娘を支配しようとするとき杏をママと呼んでいる、依存でしょうが、この母のキャラクターは依存体質というようには思えない、強烈な暴力で娘を支配している、女優の演技も良いのだけれど。

母がこうなっている背景を描く必要があると思います、演技だけでは説得力がない。

 

 

また、河合優美のリアリティある演技に比べ刑事役の佐藤二郎の演技が彼のパターンから抜け出せず作り物めいている、受けに回った稲垣吾郎は可もなく不可もなくだけれど、ジャーナリストである彼が刑事に対しどこまで接近してよいのかという疑問もちょっと気になる。

 

 

そして、赤ん坊を無責任にも杏に預ける女性、杏には子供はいないので普通は彼女に預けるという発想にはならないとは思う、シェルターで暮らす同じ境遇の女性に見えましたが。

その上偶然出会った毒母に詰め寄られて赤ん坊連れで母のアパートに行くってありえません、他人様の子供を預かっているのだから。

案の定事件が起きて、杏は絶望状態に。

そして再び奈落に、簡単に覚せい剤に手を出す、この辺り杏も成長してそれなりに世間を知ったわけだから、葛藤があるはず。

表面的なことは描かれているけれど深くは追及されていない。

 

映画最終盤に杏への感謝の言葉を口にする赤ちゃんを預けていった無責任女性、身なりは派手だけれど、別人のようにしっかりして常識的だ、こういう人がああいうことをするわけがない、どうにも釈然としないというか、まあ、脚本に問題ありという映画で、見応えはあるけれど、それはほとんどが河合優美さんと母役の女優さんの力で、まて、まて、まて、と思うところも多い映画でした。