「秘密と嘘」のマイク・リー監督がまたもオスカー監督賞&脚本賞にノミネート。タイトルロールを演じたイメルダ・スタウントンが同主演女優賞にノミネート、シカゴ批評家賞等数々の映画賞を受賞した。1950年のロンドン。家族を愛する献身的な主婦ヴェラは非合法と知りながら、望まない妊娠をした女性たちの堕胎の手伝いをしていたが、通報されて裁判にかけられることになってしまう。

2004年製作/125分/PG12/イギリス・フランス・ニュージーランド合作
原題:Vera Drake                    映画.comより転載

 

 

ブロ友さんに教えていただいたレスリー・マンヴィル主演のマイク・リー監督作を探していたのですが、見つからず、以前から気になっていた本作を鑑賞しました。

ものすごく重くて暗い内容が想像できたので気になりながら何年も過ぎてしまっていました、レスリー・マンヴィルもちょい役で出演、その娘をサリー・ホーキンスが演じていますので20年前という歳月を感じてしまいます。

 

ヴェラ・ドレイクは家政婦をして家計を助ける働き者の主婦、善意の固まりのような彼女が、善意ゆえに、いえ無知ゆえにというところもありますが、望まない妊娠をした女性たちを助けたい、その思いのみで違法で危険な堕胎行為を続けている。

映画はヴェラとその家族のささやかでつましい幸福を並行して描きながら破滅に向かう緊張感を高めていく。

ついに彼女の行為が発覚し逮捕されてしまうが、彼女に悪意も金儲けもない「困っている娘さんたちを助けていた」だけなのだ。

刑事も取調官も裁判官もヴェラの言葉に嘘がないことはわかっている。でも違法であり、同情はしても公平な裁きをするのは当然だ。

 

刑務所に収監された彼女は同じ罪で服役している二人の女性に出会う。

ヴェラは自分の行為は罪ではあっても”善意”を疑っていなかったように思う。

でも彼女たちとの会話の中で、彼女たちは”商売”としてやっていて、反省も、不安も、葛藤もない。

「すぐに出所して、またできるわ」

その言葉にようやくヴェラは自分も彼女たちと同じなんだと気が付いたように思う。

絶望の淵に突き落とされたように見えた。

 

本作は1950年という時代を描いていて、男性も女性も戦争の後遺症に色濃く支配されている、それぞれが傷つき生き辛さを抱えている、その中でヴェラの善意がとても温かい、しかし無知は罪なのだ。

 

家族がヴェラを見捨てない、娘の婚約者も彼らを見捨てず「大切な家族が出来て嬉しい」と、家族の一員として出所を待っていてくれる、つらいけれどわずかな希望を見せて映画が終わる。

人の善とか悪とか救いとかを描いているのだろうが、主に描かれているのは善だろう、だから苦しくつらい映画だけれど後味は悪くない。

 

見応えがあります、内容はもちろんですが、主演のイメルダ・スタウントンが凄い、英国きっての名優と言われるのが納得の目が離せない名演です。

『お見送りの作法』のエディ・マーサンも良い味わいを出しています、キャストの端々まで贅沢で行き届いています。

 

U-next配信で鑑賞