「ギルバート・グレイプ」などの名匠ラッセ・ハルストレムが、「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュ主演で描いたファンタジックなドラマ。ジョアン・ハリスの同名小説を原作に、不思議なチョコレートを売る母娘が因習に囚われた村に変化をもたらしていく姿を描く。古くからのしきたりに縛られたフランスの小さな村。北風とともにこの土地にやって来たヴィアンヌとその娘アヌークは、孤独な老女アルマンドから店舗を借りてチョコレート店を開く。村人たちはヴィアンヌが作るチョコレートの不思議な美味しさに魅了され、心を解きほぐされていく。しかし厳格な村長レノ伯爵はそれを快く思わず、村人たちにヴィアンヌの悪口を言いふらしてチョコレート店への出入りを禁じてしまう。「ギルバート・グレイプ」でもハルストレム監督と組んだジョニー・デップが、ヴィアンヌと交流する青年ルー役で共演。ヴィアンヌの娘ルー役は「ポネット」で注目された子役のビクトワール・ディビゾル。

2000年製作/121分/G/アメリカ
原題:Chocolat                      映画.comより転載

 

 

「午前十時の映画祭」のラインナップを見て楽しみにしていた映画。

ラッセ・ハルストレムは特に好きな映画監督の一人ですが、近年小粒でウェルメイドな作品が多くなっていて、どれも悪くはないのだけど残念ではありました。

「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」「サイダーハウス・ルール」など、喪失の痛みから、現実を受け入れ人は大人になっていくんだというようなことが描かれる青春ものみたいなところがあって、その痛さがとても魅力だったのですが、そういう瑞々しい作品を作れるのはほんのわずかな期間なんだなと改めて思ったものです。

 

フランスの小さな村ランクスネ(架空の村、ブルゴーニュ地方ディジョンの近くの村で撮影された)、時が止まったかのような美しさ。

でも村人はそれぞれが不幸だ、教会の戒律を厳しく守り異質なものを排除しようとする、村の価値観しか知らず自由を極度に恐れお互いを監視する、いわゆる村社会、これって陥りがちなことです。

 

その美しい村に赤いマントに身を包んだ母娘が流れ着く・・・・いえ、世界中を旅するチョコレートの伝道師ヴィアンヌ母娘。

お伽噺に出てくるような村、赤いマント、ビジュアルが素晴らしいのです。

 

村でチョコレートの店を開店しますが誰も寄り付きません、何んったってよそ者ですから。

でも彼らはただのよそ者ではなく伝道師なのです。

 

ヴィアンヌのチョコレートは人の心を開放する「快楽」や「歓び」の象徴であり、それらを禁じられた人々に心を解き放つ勇気を与える。

一人、また一人と、誰もが幸せを求めていたのだ。

 

一番頑なだったのは当のヴィアンヌだが自分と同じ流れ者のジプシーが村にやってきたことで彼女の心に変化が起きる。

よそ者ではなく伝道師でもなくジプシーの青年と村人の中で生きることを選ぶ、誰よりもそれを必要としていたのは彼女の娘。

 

排除するより、受け入れること。

愛はいつも、そばにある。

ラッセ・ハルストレム監督の映画はこのテーマからぶれることはない。

 

豪華キャストだし音楽も魅力的なんです。

老女アルマンドを演じるジュディ・デンチが本作のキーパーソンかなと思います。