「数々の社会派ドキュメンタリー作品を手がけてきた森達也が自身初の劇映画作品として、関東大震災直後の混乱の中で実際に起こった虐殺事件・福田村事件を題材にメガホンを取ったドラマ。

1923年、澤田智一は教師をしていた日本統治下の京城(現・ソウル)を離れ、妻の静子とともに故郷の千葉県福田村に帰ってくる。澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であったが、静子にもその事実を隠していた。その年の9月1日、関東地方を大地震が襲う。多くの人びとが大混乱となり、流言飛語が飛び交う9月6日、香川から関東へやってきた沼部新助率いる行商団15名は次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。沼部と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の集団心理に火がつき、後に歴史に葬られる大虐殺が起こってしまう。

澤田夫妻役を井浦新、田中麗奈が演じるほか、永山瑛太、東出昌大、柄本明らが顔をそろえる。

2023年製作/137分                                               映画.comより編集転載

 

 

快挙である、今この時代に必要な映画

連日映画館は満席で行列までできている、そして観客が押し寄せるのがわかる内容であった。

福田村が日本の縮図として描かれている、それが今現在と地続きであり、切り離しては考えられない説得力がある。

そういう内容だとわかったうえでの鑑賞だと思う、高齢者も多かったが、それにとどまらない観客が集まっているようだ、内容からしても、これから口コミでかなりヒットが見込めるのではないか、これは本当にうれしい出来事だ。

 

実話をもとにエンタメとして枝葉は付けている、でも芯になる虐殺事件とそこに至った状況や時代背景はぶれずに描かれている。

多くのエピソードが詰め込まれた群像劇でありながら巧みに整理されている、前半での布石が次々回収されるのは、ここは前半の部分で読めてしまうところもあるし、作品の緻密さには物足りないところもあるのだけれど、勢いで押し切っている。

いきおいのある作品は粗をも蹴飛ばすものなのだ。

欲張って、あれこれの問題意識も詰め込みすぎではあるのですが、それも勢いのうちと良い方に考えてしまう。

 

 

井浦新さんが良い仕事をしています。

彼の人物造形がこの映画に深さを与えている。

朝鮮での出来事、それが彼の心をむしばんでいた。

「あなたはまた逃げるの?」という妻の言葉で踏みとどまった、ちょっとだけ人間に戻れたのかもしれない。

妻静子は田中麗奈さんが演じているが、映画から浮いているような印象で、でも観終わった時、その浮いている感じが良かったのだと思えた、福田村とは関係のないよそ者なのだから。

そして本作でも不倫でののしられる役に東出昌大さんなのだけれど、一見必要でない役にも見える、しかし計算されていると思う、彼は利根川で隔てられた村の内と外をつなげる船頭なのだ、疑心暗鬼に陥り理性を失くし暴徒化する村人から距離を置いている、彼もまた半分よそ者なのだ。

 

 

何もかもが間違いだった、絶望に打ちひしがれる村長の言葉がこの社会を如実に表している。

「我々はこの村で生きていかなければならないんだ」

(理想を持っていた村長の敗北感が悲しい)

 

 

 

 

「恐怖心と自衛の気持ちが、集団化すると恐ろしい行動を引き起こす、決して100年前の出来事ではない」

という森監督の言葉が重い。

 

他国や他人を差別する、そこに見えるのは差別する側の人格だ。

誰にでも差別心はある、私だって例外ではない、しかし醜い人格はさらけ出したくない。

違う人格も持っているのだから。