中国・福建省に伝わるしきたり「幽婚」。婚約中の女性が急に亡くなったとき、生前の婚約者と祝言をあげてから葬送するという。それが四国のとある山里に残されていた。ひょんなことから「幽婚」のしきたりに巻き込まれた男と周囲の人々の心情を、幻想的な映像とともに叙情的に描く。平成10年度文化庁芸術祭優秀賞受賞作品。
【ストーリー】
背中に吉祥天の刺青をもつ元ヤクザの男・岩淵孝行(役所広司)。前科をもつ彼だが、現在は更正し霊柩車運送会社に運転手として勤務している。ある日、会社に若い男が訪れ、急死した婚約者・佐和(寺島しのぶ)の亡骸を四国・高松の郊外にある彼女の郷里まで搬送するよう、孝行に依頼する。孝行は男とともに四国へ向かうことに。だが瀬戸大橋手前のSAで、男は姿を消してしまう。残された孝行は四苦八苦の末、佐和の郷里の村にたどり着く。佐和の実家にて、遺族に事の次第を伝える孝行。そこで彼は、村の長から「幽婚」のしきたりを聞くが…。 TBSチャンネルの紹介文より転載
映画の構造はサンドイッチ型と言いますか、冒頭のシーンと最後のシーンがつながっていて、その間にそうなったいきさつが語られています、本作ではそこにカタルシスがあるといいますか、描かれているのはあり得ないことですが、その心の変化はあり得ると思うから、そこにこのドラマの魅力があるのでしょう。
橋を渡ればそこは”死”の世界、本来なら彼は死者とともに黄泉の世界へ行くはずだった、そうはならなかったのは男の”死んでもいい”という心の変化と、それに応えた女の愛がそうさせたのだろう。
村は実在し、こういう風習が残っているというように描かれてはいるが、本当は橋を渡った時点で、この世ならぬ場所に足を踏み入れたということなのだと思う。
若いころ、よく、所謂金縛りというものに遭った。
金縛りとは眠りの浅いときにみる夢だと思うけれど、その夢は何故だか知らないが、この世のものではない。
この映画のように、川があり、橋が見える、橋を渡るとそこはこの世ならざる者の世界。
夢の中で目は覚めている、「渡ったらだめだ、絶対ダメ」と思っているのだけれど、あっという間にワープ、そこには人がいる、なぜか死者だとわかる、風景も死んでいる、そして猛スピードで走ってくる死者とぶつかった瞬間、自分の叫び声で目が覚める。
この映画で、それを思い出した、映画はその世界に肉付けして具体的に描いている、その描かれたことが現実とつながっているという仕組みもとても良い。
本作はブロ友さんが記事にされていたので知った。
i988年の大林宣彦監督作『異人たちとの夏』で脚色を担当されていた市川森一さんの脚本。
似たような内容であり期待していたが、期待以上の出来だと思う。
1998年のドラマ、役所広司さん42歳、若い!、寺島しのぶさんのヌードシーンは、おーーー!という存在感。
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