これまでも数多く映画、ドラマ化された池波正太郎のベストセラー時代小説「仕掛人・藤枝梅安」シリーズを、池波正太郎生誕100年となる2023年に豊川悦司主演で映画化した2部作の第2部。
梅安が相棒の彦次郎と京に向かう道中、ある男の顔を見て彦次郎は憎しみを露にする。その男は彦次郎の妻と子を死に追いやった、彦次郎にとっては絶対に許せない仇だった。そして、上方の顔役で殺しの依頼を仲介する元締から彦次郎の仇の仕掛を依頼された梅安は、浪人の井上半十郎とすれ違う。井上と梅安もまた憎悪の鎖でつながれていた。
梅安役の豊川、彦次郎役の片岡愛之助をはじめ、菅野美穂、小野了、高畑淳子、小林薫が第1部につづき顔をそろえるほか。第2部ゲストとして椎名桔平、佐藤浩市、一ノ瀬颯が出演。監督も第1部から引き続き河毛俊作が手がけた 。
2023年製作/119分/G/日本 映画.comより転載
死の匂いが濃厚に漂う、メメント・モリ
一作目も面白かったが二作目はなおパワーアップと言いたいが、そうではなく濃厚な池波世界に酔った。
お話は一作目より整理されていてわかりやすく、一作目ほど狭い世界を描いているわけではない(原作がそうだから仕方がないかもしれないが)。
梅安と彦次郎のコンビも変わらず良いし、悪役の椎名桔平もこの人ならではの色気と冷酷非道な雰囲気が決まっていた。
梅安(豊川)の着物姿がとにかくカッコよく、身のこなしに男の色気がムンムン、いい男だね~。
佐藤浩市&一ノ瀬颯には違和感があったが、まあ良いとしよう、エンタメなんだからこれもありです。
曰く(池波)
得るものがあれば、必ず失うものがある。
悪事を働きつつ、知らず識らず善事を楽しむ、これが人間。
人間は死ぬ、という事実こそが自分を磨くための磨き砂だ。
久しぶりにおもん(菅野美穂)に会いに行く梅安、性急に体を求める。
「おもんを抱くたびに死に近づいていくようにおもうのだよ」
その言葉の意味を分かったうえで受け止めるおもん、この人とならいつ死んでも構わないと思っていることがわかる。
このシーンに胸を突かれます。
そして復讐に燃える半十郎(佐藤浩市)がおもんを問い詰める。
「梅安はそなたのことなど大切には思っていない」(という意味のことをいう)
「わかっています、私はそれでよいのです」というおもんの言葉に、多分打ちのめされた、と思う。
復讐心に揺らぎが見えた。
うーーーん、エンタメとしてとてもよく出来ているのだけれど、それにとどまらない深淵も見せてくれるのです。
改めて気が付いたのは豊川悦司の話し方がとても魅力的、そして1作目と変わらず菅野美穂の愛があまりにも美しい。
復讐に命をささげた佐藤浩市に我が身を振り返らせるほどに。
映画半ばすぎたころ、右後方から高齢者と思われる女性の話し声が、しゃべらんでほしいなとしばらく我慢していたところ、左後方からこれまた高齢と思われる男性の怒声が「電話やめろーーっ」、えーー?電話してたの、何という非常識な。
けっこう人が入っていたんです、そんな中で、年を取ると周りへの配慮がなくなるのか、もともとそういう人なのか。
観客みんな、怒鳴ってくれてありがとうと思ったのではないでしょうか。