ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスが母国スペインで共演し、華やかな映画業界の舞台裏で繰り広げられる監督と俳優2人の三つどもえの戦いを皮肉たっぷりに描いたドラマ。
大富豪の起業家は自身のイメージアップを図るため、一流の映画監督と俳優を起用した傑作映画を制作しようと思いつく。そこで変わり者の天才監督ローラと世界的スターのフェリックス、老練な舞台俳優イバンという3人が集められ、ベストセラー小説の映画化に挑むことに。しかし奇想天外な演出論を振りかざす監督と独自の演技法を貫こうとする俳優たちは激しくぶつかり合い、リハーサルは思わぬ方向へ展開していく。
映画監督ローラをクルス、スター俳優フェリックスをバンデラス、ベテラン舞台俳優イバンを「笑う故郷」のオスカル・マルティネスが演じた。監督は「ル・コルビュジエの家」のガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン。2021年・第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。
2021年製作/114分/スペイン・アルゼンチン合作
原題:Official Competition 映画.comより転載
映画は映画だ(映画中、監督=ペネロペ・クルスの台詞)
映画についての映画です、今流行の映画愛の映画とは対極にあります。
評価は高い、観る人を選ぶ映画の最たるものという・・・・さて、面白いか面白くないかと言われると返答に困る映画なんです。
微妙な笑いだし感動があるわけではない、でも、別物の面白さはあります。
かなりシニカルな視点で映画製作というものを描いています。
本作で描かれるのはあくまでも撮影前の準備段階、監督と俳優が各シーンのリハーサルをすることが中心に据えられている、その中で映画の全貌がうかがえるようになっているし、人間関係の緊張感もわかるようになっている。
各リハーサルシーンがエゴのぶつかり合い、お互いを嫌っている世界的大スター(アントニオ・バンデラス)と実力派舞台俳優(オスカル・マルティネス)が斜め上から観ればライバル心むき出しでかわいいといいますか、そしてその二人を手玉に取る芸術家肌の天才監督(ペネロペ・クルス)が圧巻の存在感。
巨万の富を手に入れればあとは名誉が欲しい…映画製作だとか、美術館だとか、劇場とか、古今東西良くある話。
でもそんな結果の恩恵にあずかるのは一般庶民だし、動機が何であれ、それと生み出されたものの価値は関係ないといえばそうなんだな~。金がなければ何もできない、パトロンは大事にしなくっちゃみたいなところあります。
2人が受賞した数々の賞のトロフィー等を粉砕するシーンを見つめる3人、その中にオスカー像がなかったのは、この映画の監督にとって意味のない賞だったからだろうかと勘繰ってしまった。
「最高の映画とは何か。みんなが納得する基準はあるのか。たとえば嫌いな映画でもいいとおもえるのか?人は理解できるものを好み、理解できないものを嫌う。大事なことの多くは理解できないものにある」
というローラの台詞があったが、この映画の内容なら、最高の映画のために何をどこまで犠牲にしてよいのか?という芸術論にまで話が及んでしまうが、映画中映画ではない本筋のお話は明後日の方向に、予想通りの<激突>が場外乱闘エンドレスへと展開するもよう。
本作は是非映画館観賞をおすすめしたい。
この監督(二人)の美意識全開と思われるビジュアルがゴージャスで洗練されている、3人の俳優の魅力、存在感が堪能できる。
えーーー?ペネロペ・クルスが天才映画監督役?と思ったけれど、うん、素晴らしいです、エゴを抑えきれない愚かさをシニカルな視点で描いている映画だけれど、ペネロペだけは例外でエゴを芸術に昇華させている人物として描かれているような気がします、そして彼女の衣装がいやはや素晴らしいです(シャネルらしい)。
5年ぶりくらいにパンフを買った。
ビジュアルが魅力的だったからだけれど、エンドクレジットの曲名が知りたかったから。
サントラはクラシックからオリジナルまで・・・でも、パンフには音楽のことは一切書かれていなかった、残念。
序盤にサティの「グノシェンヌ1番」、終盤のクライマックスにショパンの「ノクターン2番」、そしてエンドクレジットの曲がとても有名な曲です、クレジットの作曲者名はスペルが短かった(視力が💦)、ピアノ曲で中級レベルで弾ける曲かと思いました。
パンフを買ったくらいだからかなり気に入った映画だ、もう一回観に行くかも。
追記
再鑑賞。
再鑑賞でより評価が上がった、微妙な笑いというより本当に笑ってしまった、実力派俳優の俗物ぶりがわかりやすい屈折さ加減で、そしてアントニオ・バンデラスがとても魅力的だ。
エンドクレジットの曲はショパンのプレリュード4番でした、中級レベルでは弾けません💦
私の好みでは今年度ベストの一作です。