「オールド・ボーイ」「お嬢さん」のパク・チャヌク監督が、殺人事件を追う刑事とその容疑者である被害者の妻が対峙しながらもひかれあう姿を描いたサスペンスドラマ。
男性が山頂から転落死する事件が発生。事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュンは、被害者の妻であるミステリアスな女性ソレを疑うが、彼女にはアリバイがあった。取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレもまたヘジュンに特別な感情を抱くように。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが……。
「殺人の追憶」のパク・ヘイルがヘジュン、「ラスト、コーション」のタン・ウェイがソレを演じ、「新感染半島 ファイナル・ステージ」のイ・ジョンヒョン、「コインロッカーの女」のコ・ギョンピョが共演。2022年・第75回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
2022年製作/138分/G/韓国
原題:Decision to Leave 映画.comより転載
・今年最もロマンティックな映画
・すべてのシーンが、愛の結末のための歯車
そんな言葉がフライヤーにある、そしてその通りの映画。
サスペンスというのはシチュエーションでしかない、それがとてもうまく出来ている。
のめり込むほどではなくわかり辛い仕組みで、お話を見失うこと多々、あえてそう作っている気がする。
刑事と容疑者の禁断の愛。
本作は近年めっきり少なくなったメロドラマです、今の時代メロドラマ(純愛)を成功させることはとてもむつかしいと思いますが、さすが実力ある監督の作品と思うところあります。
若干のコメディ要素も入れ、サスペンスの構成には重要なところに現代という時代のアイテムを巧みに活かしながら、第一の殺人、第二の殺人、とミステリアスな女の背景が浮かび上がってくる。
メロドラマと言えば、アラン・レネのその名も『メロ』という映画があった。
描かれているのは本物の恋愛です。
本物の恋愛とは何か、と言えば”命がけ”と”自己犠牲”、それだけの大きな障害がある、それでも止めることはできない。
普通、恋と言っているもの、それは恋ではない、なのでこういうメロドラマに人は惹かれる。
当然『メロ』の恋愛相手の女性は苦しさに耐えられず自ら命を絶つ。
本作は刑事と容疑者、まさに禁断、二人はその思いを止めることはできない、捜査が進むほどに止められない思いがつのる、でもそれを否定するしかない、切ないではありませんか。
その感情に耐えられなくなったときラストシーンへなだれ込む、そのシーンの映像が素晴らしくて、魂の叫びが映像になったよう。そこからエンドロールのメロドラマ的音楽につながるところさすが名監督、この余韻のためにこの映画を撮ったのではないかという気がしました。
『ラスト・コーション』のタン・ウェイさん、運命の女ですね、40歳くらい?、運命の女にはこのくらいの年齢が必要です。
刑事役の俳優さんは出世頭のやり手刑事部長ということですが、甘いマスクすぎるような、手がけた凶悪事件を心から切り離せず不眠症に悩むという役どころにはもう少し陰りが欲しいところです。